Q5 就業規則の定める基準が、個別労働契約の定める基準や労働協約の定める基準と異なる場合、どの基準により労働者の労働条件は規律されることになるのでしょうか。

ご利用にあたって

  • 労働問題Q&Aは個別事案について法的なアドバイスをするものではありません。
  • 本文の内容は各執筆者個人の責任によるもので、機構としての見解を示すものではありません。

具体的なご相談は、厚生労働省「総合労働相談コーナー」新しいウィンドウなど行政機関等の相談窓口にお尋ねください。


質問

就業規則では会社は賞与を支払う義務が定められていますが、先日私は、会社との間で個別に、会社は賞与を支払わない旨合意しました。また、就業規則における賞与の支給基準は労働協約における賞与の支給基準と異なっています。いったい私は賞与を支給されるのでしょうか。支給されるならばどの基準によって支給されるのでしょうか。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

  1. 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とされます。この場合において、無効となった部分は、就業規則の定める基準によることとなります。
  2. 就業規則は、法令や当該事業場において適用される労働協約に反してはなりません。

解説

就業規則と労働契約との関係については、新しいウィンドウが開きます労働基準法9条及び新しいウィンドウが開きます労働契約法12条が定めています。

新しいウィンドウが開きます労働契約法12条によると、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり(この効力を「強行的効力」といいます)、無効となった部分については、就業規則の定める基準により規律されることになります(この効力を「直律的効力」といいます)。したがって、たとえば就業規則で賞与の支払義務を定めている場合には、賞与を支払わないことについて会社と従業員との間で個別に合意がなされたとしても、この合意は無効となります。このように、新しいウィンドウが開きます労働契約法12条は、就業規則の定める労働条件に最低基準としての効力を与えたものとして理解することができます(最低基準効)。新しいウィンドウが開きます労働契約法12条新しいウィンドウが開きますは最低基準効について定めるにとどまりますので、就業規則より有利な労働条件が個別に合意された場合には、当該個別合意が有効であることになります。

就業規則と労働協約との関係については、新しいウィンドウが開きます労働基準法92条は、就業規則は、法令または当該事業場について適用される労働協約に反してはならず、行政官庁は、法令や労働協約に抵触する就業規則の変更命令を発することできる旨を定めています。すなわち、使用者が一方的に作成する就業規則に対して、使用者と労働組合との合意である労働協約が優越することになります。新しいウィンドウが開きます労働基準法92条は、「労働協約に反してはならない」と定めていますが、この意味は、労働協約がそれ自体において就業規則により有利な定めが置かれることを許容していると評価できる場合を除き、就業規則の規定は、労働協約の規定よりも有利でも不利でもあってはならない趣旨であると考えられています。この点は、労働協約にいわゆる「有利原則」が認められるか否かという問題と関係しています。

また、就業規則が法令や労働協約に反する場合、「当該法令や労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については」、就業規則の労働契約を規律する効力(新しいウィンドウが開きます労働契約法7条)、就業規則が合理的に変更される場合に労働契約を規律する効力(新しいウィンドウが開きます労働契約法10条)、そして、就業規則の最低基準効(新しいウィンドウが開きます労働契約法12条)という、就業規則の効力は及ばないこととなります(新しいウィンドウが開きます労働契約法13条)。すなわち、労働協約に抵触する就業規則は、協約が適用される労働者との関係では無効となりますが、協約が適用されない労働者には、その就業規則は適用されることになります。

関係法令・資料

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第92条93条

労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第7条10条12条13条

(明治大学法学部准教授 小西 康之)

2010年11月掲載