Q3 労働者が就業規則の変更に合意している場合には、それにより労働条件は変更するのでしょうか。

ご利用にあたって

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質問

会社は就業規則を変更しようとしていますが、この変更には合理性があるようには思えません。ただ、労働者の一部と使用者はこの就業規則の変更について合意に達しています。この場合、就業規則の変更に合意した労働者については、就業規則の変更により労働条件は変更されることになるのでしょうか。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

  1. 会社は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできません。
  2. 労働者が、就業規則の変更に合意した場合には、当該労働者は、当該就業規則の変更によって労働者の不利益に労働契約の内容が変更される場合であっても、それに拘束されることになります。

解説

新しいウィンドウが開きます労働契約法8条は、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と定めています。すなわち、労働者と使用者が労働条件の変更に合意している場合には、その合意自体を根拠として、その労働条件変更に両当事者は拘束されることになります。したがって、両当事者が労働条件の変更に合意している場合には、変更の合理性が認められることは必要ではありません。すなわち、労働者と使用者が労働条件の変更に合意している場合には、その変更が合理的なものでないと評価されうる場合であっても、両当事者は当該変更に拘束されることになります。

以上のことを定めた新しいウィンドウが開きます労働契約法8条は、労働条件の変更に際しては合意によるという原則を一般的に宣明したものです。就業規則を変更することによって労働条件を変更することについての同意については、新しいウィンドウが開きます労働契約法9条においてより具体的に定められています。

新しいウィンドウが開きます労働契約法9条は、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と規定しています。新しいウィンドウが開きます秋北バス事件最高裁判決(最大判昭和43・12・25 民集22巻13号3459頁)においては、「新たな就業規則の作成又は変更によつて、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則として許されない」と述べられていますが、新しいウィンドウが開きます労働契約法9条は、以上のような最高裁判例で踏襲されてきたルールを明文で確認した規定であるといえます。

そしてこの新しいウィンドウが開きます労働契約法9条を反対解釈すると、使用者は、労働者との間で合意に達すれば、就業規則を変更して、労働者の不利益に労働条件を変更することが可能であるとの帰結が導かれます。この場合、労働者の不利益に労働条件を変更することが可能になる根拠は、使用者と労働者との間の合意に求められますので、就業規則の変更が合理的であるかどうかは、ここでは問題となりません。ただし、合理的であるとは評価されないような就業規則の変更について労働者の合意があったか否かについては慎重に判断する必要があることはいうまでもありません。

関係法令・資料

労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第8条9条

※解説中の「秋北バス事件」は裁判所ウェブサイトの裁判例情報へのリンクです。

(明治大学法学部准教授 小西 康之)

2010年11月掲載