Q6 契約社員について法律上留意すべきことは何ですか。

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質問

近年、契約社員という就労形態が普及しているようです。しかし法律にはどこを読んでも契約社員という概念は出てこないように思います。契約社員というのは法的にはどのように考えられていて、どのような法的な規制を受けるのでしょうか。

回答

ポイント

  1. 確かに契約社員というのは法律上の概念ではありません。また、少なくとも民間の事業所で雇用されて賃金を受給している人はすべて使用者と契約関係で結ばれているので、ことさらに「契約社員」という用語を使うと誤解や混乱を招く恐れがあります。
  2. 契約社員は法律上の概念ではないので、法による特別な規制はありません。ただ、期間雇用の比率が高いとか、業務に専門性や限定性が高いといった就労形態の特徴ごとに個別に留意すべきことはあります。

解説

<契約社員の概要>

契約社員は、専門的な業務につき、期間と業務内容を特定して雇用される労働者に対する一般的な呼称ですが、法律には契約社員という概念はどこにもありません。したがって契約社員に対する法的な留意事項というのも厳密な意味ではないのですが、しかし調査などによりますと、契約社員と呼称される労働者には一定の共通した特徴があるようです。その共通の特徴に即した処遇上の留意は必要でしょう。

契約社員の数は年々急増しており、2010年の総務省「労働力調査」では約330万人が契約社員・嘱託社員として働いています。この内容について、東京都産業労働局が平成19年に実施した「契約社員に関する実態調査」によりますと、30人以上の常用労働者を雇用する事業所においては平均して全従業者の約1割が契約社員です。業種別では、卸売・小売業、金融・保険業、製造業の順で、契約社員が従業者数に占める割合が高くなっていますが、契約社員を導入する事業所の割合で見ますと、4割強の事業所が契約社員を導入しているサービス業が最も高くなっています。また、契約社員の業務としては、販売業務が4割強を占めて最も多く、次いで専門的・技術的業務、事務的業務が多くなっています。契約社員を導入した理由としては、「専門的・技術的な業務に対応するため」とするものが過半数を占め、次いで「正社員としての適性をみるため」が約3割、「人件費節減のため」が2割強を占めています。契約には期間を定めるというのが5割を超え、契約期間は1年が約7割を占めて最も多くなっています。人事管理については、契約社員独自の就業規則を作成・適用している事業所が4割強、賃金は正社員に比べて低い事業所が過半数を占め、賞与の支給を実施している事業所が過半数となっており、8割以上の事業所が契約社員について退職金制度を設けていません(契約社員の平均年収は、全業種・全業務内容平均で379万円)。過半数の事業所が契約社員から正社員への転換制度を設けており、実際にほぼ半数の事業所が転換の実績を有しています。一方、過去3年間に契約社員の雇止めを行った事業所は2割強で、雇止めの理由としては「労働者の能力不足」や「労働者の勤務態度不良」が多くなっています。社会保険の加入は8割以上の事業所で実施しており、これについては年々状況が改善されているようです。契約社員の属性としては、約6割が女性であり、年齢で見ると20代から40代の者が多くを占めています。

<契約社員に関わる労働法規制>

以上のような調査結果から、法的に留意すべき点もほぼ想定されるように思います。つまり、契約社員の多くが業務内容を限定され、かつ期間を定めて雇用されるとするならば、そのような労働者については、まずは期間雇用の場合の雇止めの法理(新しいウィンドウが開きます本節のQ9参照)が適用されることが多いでしょうし、また、業務の内容が契約で限定されている場合には、それを正規従業員に対する配置替えと同じ方法で変更させることはできません。契約で限定されたものは契約によって変更するのが原則だからです。

また、2003年の新しいウィンドウが開きます労働基準法改正により、期間雇用の場合の最長期間が原則3年とされていること、高度の専門的知識・技術・経験を有する労働者と 60歳以上の労働者については5年とされていることにも留意が必要でしょう(新しいウィンドウが開きます労基法14条新しいウィンドウが開きます本節のQ8参照)。雇用期間の下限については法律上の規制はありませんが、2007年制定の新しいウィンドウが開きます労働契約法17条2項により、使用者は、労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定めることにより、有期労働契約を反復更新することのないように配慮することが求められています。

しかし他方で、契約社員は正規従業員とは異なり企業への帰属性の高さを特徴としていませんので、一般的には長期雇用を前提とした処遇を保障することはできないでしょう。したがって、たとえば解雇についても、かなり手厚く保護されている正規従業員の場合とは異なる法的な対応がなされることとなります。具体的には、新しいウィンドウが開きます労働契約法16条の解雇制限規定の適用が、期間の定めなく雇用されている正規従業員の場合に比べて若干緩やかになる可能性は否定できません。他方で、新しいウィンドウが開きます民法628条により、期間途中の解雇は「やむを得ない」と認められるような特殊な事情がない限り許されません。この規定は、新しいウィンドウが開きます労契法17条1項によって、使用者側による解雇について強行規定となっています。使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ契約期間が満了するまでは労働者を解雇することができず、また、やむを得ない事由があることを主張立証しなければなりません。

正規従業員との処遇上の格差については、パートタイマーの項で説明したような同一(価値)労働同一賃金原則の適用(新しいウィンドウが開きます本節のQ2参照)といった点はいざしらず、誰が見てもバランスを欠くような極端な冷遇でなければ、通常は合理的とみなされるように思います。ただ、逆にいえば、以上のような点を除けば、契約社員だからという理由で使用者が責任を免れたり、不当な取扱いをしてよいということはありません。たとえば、新しいウィンドウが開きます労基法新しいウィンドウが開きます均等法上の規定は労働時間や日数が通常の従業員に比べて一定以上短い場合のわずかな特別規定を除いて全面的に適用されますし、社会保険や労働保険についても同様です。

要するに、契約社員という一般的な雇用形態があるのではなく、その労働条件の特性に応じて法的な対応を考えて行かなければならないということになります。

関係法令・資料

契約社員に関する実態調査」(東京都産業労働局 平成19年度中小企業等労働条件実態調査)

労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第16条 17条

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号 )第14条

民法(明治29年04月27日 法律第89号)第628条

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法) 新しいウィンドウが開きます(昭和47年07月01日 法律第113号)

(名古屋大学准教授 中野 妙子)

2011年4月掲載