Q1 パートタイム労働法の概要を教えてください。

ご利用にあたって

  • 労働問題Q&Aは個別事案について法的なアドバイスをするものではありません。
  • 本文の内容は各執筆者個人の責任によるもので、機構としての見解を示すものではありません。

具体的なご相談は、厚生労働省「総合労働相談コーナー」新しいウィンドウなど行政機関等の相談窓口にお尋ねください。


質問

パートタイム労働者として5年間継続勤務しています。日本にはパートタイマーのための法律があると聞きましたが、よく内容を知りません。この法律のポイントを知りたいと思います。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

  1. 新しいウィンドウが開きます短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(いわゆる新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法)の基本的な役割は、パートタイマーの雇用管理の改善であり、労働条件を直接規律する規定を中心とはしていません。
  2. 新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法は2007年に大改正され、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者に対する差別的取扱いの禁止や、パートタイマーの通常の労働者への転換を推進するための措置に関する規定などが新たに設けられました。

解説

<パートタイム労働法の概要>

1993年に新しいウィンドウが開きます「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆるパートタイム労働法)が制定されました。それまでにも、雇入れ時の通知書などについて一定の指導はなされていたのですが、まとまった法律の形でパートタイマーを対象としたものはこれが初めてです。同法は、バブル経済崩壊後の非正規労働者の増加とともに、非正規社員の賃金・待遇が正社員に比べて低いことへの社会的関心が高まったことを背景として、2007年に大きく改正されました(施行は2008年4月)。以下では、2007年改正後の新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法の概要について説明します。

新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法は、短時間労働者の適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進などの措置等を講ずることによって、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて、短時間労働者の福祉の増進を図ることを目的にしています。同法は、厚生労働大臣の指定を受けてパートタイマーの職業生活に関する調査研究を行ったり、事業主に対してパートタイマーの雇用管理の改善に関する講習を開催したりする機関としての「短時間労働援助センター(現在は「21世紀職業財団」がこれに指定されている)」の業務や機構に関する規定(新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法25条以下)を設けるほか、パートタイマーの雇用管理の改善等に関する措置、職業能力の開発及び向上等に関する措置、同法に関わる紛争解決の援助などについて定めています。

<パートタイマーの定義>

新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法では、パートタイマー(法の用語では「短時間労働者」)を、「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者…の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」と定義しています(新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法2条)。ここでいう「通常の労働者」とは、当該業務に従事する者の中にいわゆる正規型の労働者がいる場合には、当該正規型の労働者をいい、正規型の労働者がいない場合については、当該業務に期間的に従事するフルタイムの労働者を指すとされています(新しいウィンドウが開きます平19.10.1基発1001016号)。新しいウィンドウが開きます同法は、パートタイマーの本質が「通常の従業員よりも短い時間働くこととされている者」であることを明示しています。

実はこの点は、これまで非常に困難な議論が展開されていたところでした。つまり、パートタイマーの語源が「タイム(時間)」を「パート(部分)」で働く者であるから短時間勤務の労働者を指すのであるという原則は明らかであっても、実際には、「パート」あるいは「臨時社員」等の呼称を受けながら、正規従業員と全く同じ時間就労し、場合によっては全く同じ業務についている労働者が少なくありません。このような労働者を「身分だけのパート」あるいは「疑似パート」などといいますが、別項目で述べる同一(価値)労働同一賃金(→新しいウィンドウが開きます4-Q2参照)という理念に照らして問題が大きいという指摘がなされてきました。これに対してパートタイム労働法は、パートタイマーとは文字通り短時間勤務の労働者のことであることをはっきりと規定しました。もちろん、その意味は、新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法の適用となるということであって、上記のような疑似パートがこれで消滅するというわけではありません。しかし、パートタイム労働法がパートタイマーという概念に対して一応の方向付けを与えたことは大きな意味を有するものと言えるでしょう。

<事業主が講じる措置>

新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法には、事業主に対する一定の責務がいくつか規定されています。第一に、事業主の一般的責務として、その雇用するパートタイマーについて、その就業の実態を考慮して、適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換の推進に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、パートタイマーがその有する能力を有効に発揮することができるように努めなければなりません(新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法3条1項)。

ここで重要なのは、「均衡」という概念です。次の質問の回答で述べますように、パートタイマーをめぐる法的問題の最も重要な一つが、いわゆる正規従業員との労働条件の格差なのですが、これについて、単に契約の自由であるというだけでは済まされないのではないかという疑問が高まっています。たとえば賃金などについて、正規従業員と同じ業務についているような場合には、たとえパートタイマーであっても、正規従業員と比べて極端に低い賃金しか支給されないという事態はおかしいのではないかということです。こうした疑問には確かに一理ありますが、日本の労働法規には、同一(価値)労働同一賃金の原則を明記した規定はありません。そのいわば補完となっていると思われるのが「均衡」という概念です。この規定自体は事業主に努力義務を課しているにすぎませんが、上記のような観点からよりこの概念を重視する取扱いが望まれるでしょう。

さらに新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法では、パートタイマーの雇用管理の改善等のために事業主が講じるべき個別の措置として、a.労働条件に関する文書の交付(新しいウィンドウが開きます同6条)、b.就業規則のパート関連規定の作成・変更の場合のパートタイマーの過半数を代表する者からの意見聴取(新しいウィンドウが開きます同7条)、c.通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止(新しいウィンドウが開きます同8条)、d.通常の労働者との均衡を考慮した賃金の決定(新しいウィンドウが開きます同9条)、e.通常の労働者との均衡を考慮した教育訓練の実施(新しいウィンドウが開きます同10条)、f.福利厚生施設の利用についての配慮(新しいウィンドウが開きます同11条)、g.通常の労働者への転換を推進するための措置(新しいウィンドウが開きます同12条)、h.待遇の決定に当たって考慮した事項の説明(新しいウィンドウが開きます同13条)などを定めています。厚生労働大臣は、これらの措置の有効な実施を図るために、同14条に基づき「新しいウィンドウが開きます事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針」(平成19年厚労省告示326号。以下「指針」)を定めています。

以上のうち、a.労働条件に関する文書の交付については、2007年改正前のパートタイム労働法でも、新しいウィンドウが開きます労働基準法の労働条件明示義務(新しいウィンドウが開きます労基法15条)に加えて一定の労働条件について文書を交付すべきことを努力義務としていました。2007年改正により、文書交付義務が一定事項について強行的な義務となり、使用者は、労基法が定める事項に加えて、昇給、退職手当および賞与の有無を明示しなければならなくなりました(新しいウィンドウが開きますパートタイム法6条1項新しいウィンドウが開きます同施行規則2条1項)。明示の方法は、文書の交付によるほか、労働者が希望した場合にはファクシミリや電子メールによることも可能です。また、事業主は、これらの義務的な事項以外の労働条件についても、文書の交付等により明示するよう努めなければなりません(新しいウィンドウが開きます同法6条2項)。

c.通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止については、次の3つの要件を充たしたパートタイマーが対象となります。すなわち、(1)業務の内容および当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって、(2)当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結している者のうち、(3)当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容および配置が当該通常の労働者の職務の内容および配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれる者が、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」とされます。このようなパートタイマーについては、事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、パートタイマーであることを理由として差別的取扱いをしてはなりません(新しいウィンドウが開きますパートタイム法8条1項)。(2)にいう「期間の定めのない労働契約」には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含みます(新しいウィンドウが開きます同条2項)。そして、この規定に違反する差別的取扱いは、法律行為(解雇、配転など)は無効となり、事実行為については不法行為責任に基づく損害賠償責任が生じると解されています。

通常の労働者と同視すべきとはいえない短時間労働者については、c.の差別禁止規定は及びませんが、d.ないしf.に挙げたように、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生の利用について通常の労働者との均衡に考慮する努力義務が事業主に課せられています。

そして、新しいウィンドウが開きます2007年改正後のパートタイム法は、g.通常の労働者への転換を推進するための措置についても、事業主にこれを実施することを義務付けました。事業主は、その雇用するパートタイマーについて、(1)通常の労働者の募集を行う場合に、事業所での掲示などによって、その者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の募集に係る事項を、当該事業所において雇用するパートタイマーに周知すること、(2)通常の労働者の配置を新たに行う場合に、当該配置の希望を申し出る機会を当該配置に係る事業所で雇用するパートタイマーに与えること、(3)一定の資格を有するパートタイマーを対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けることその他の、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずることの、いずれかの措置を取らなければなりません。ただし、いずれの措置を取るにしても、短時間労働者に対して通常の労働者への転換の機会を提供することが義務付けられているのであって、短時間労働者を優先的に採用したりする義務はありません。

関係法令・資料

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成05年06月18日 法律第76号)第1条 2条 3条 6条 7条 8条 9条 10条 11条 12条 13条 14条 25条

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則(平成05年11月19日 労働省令第34号)第2条

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号 )第15条

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について(平成19年10月01日,基発第1001016号,雇児発第1001002号,職発第1001002号,能発第1001001号)

事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針(平成19年10月01日 厚生労働省告示第326号)

(名古屋大学准教授 中野 妙子)

2011年4月掲載