Q2 法律では解雇に関してどのような規制がありますか。

ご利用にあたって

  • 労働問題Q&Aは個別事案について法的なアドバイスをするものではありません。
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質問

日本は制度上、解雇がとても不自由だと言います。法律上はどのような規制があるのでしょうか。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

解雇については、まず新しいウィンドウが開きます労働契約法に一般的な解雇制限規定が設けられているほか、新しいウィンドウが開きます労働基準法に一定の労働者に対する解雇禁止規定と手続き的な規制が置かれています。また新しいウィンドウが開きます雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(雇用機会均等法)新しいウィンドウが開きます労働組合法などにも一定の規制があります。

解説

<解雇に対する法規制の概観>

解雇についての法の規制は、2003年の労基法改正で大きく変わりました。それまでは、退職一般にかかる定めや、退職証明書に記すべき解雇理由など(→新しいウィンドウが開きます3-Q1参照)を除き、解雇のみを対象とする法規制はあまり多くないだけでなく、正面から解雇の効力を一般的に規制する定めはありませんでした。しかし、2003年に、労基法の18条の2として、「解雇は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を乱用したものとして無効とする」との規定が設けられ、状況は大きく変わりました。その後、2007年の新しいウィンドウが開きます労働契約法の制定により、この規定はそのまま新しいウィンドウが開きます労働契約法の中に移されています(新しいウィンドウが開きます労契法16条。労基法18条の2は削除)。

ここでは、解雇について従来から存在する諸規定を概観し、上記の新しいウィンドウが開きます労契法16条については別項目(→3-Q3)で詳しく説明いたします。

まず労基法には、特別な状態にある労働者に対する解雇禁止規定(新しいウィンドウが開きます労基法19条)の他、新しいウィンドウが開きます同20条の解雇予告期間および解雇予告手当に関する規定がありますし、新しいウィンドウが開きます同3条の労働条件に関する均等待遇原則は解雇にも及びます。また新しいウィンドウが開きます均等法は、新しいウィンドウが開きます同6条4号において解雇の場合の男性との平等取扱を規定するとともに、新しいウィンドウが開きます同9条で女性労働者の婚姻・妊娠・出産・産前産後休業の請求等を理由とした解雇を禁止しています(→新しいウィンドウが開きます13-Q3参照)し、新しいウィンドウが開きます労組法7条1号は労働組合員であることや労働組合の正当な活動の故をもって解雇することを不当労働行為として禁じています(→新しいウィンドウが開きます9-Q3参照)。さらに新しいウィンドウが開きます労基法104条2項は、労基法違反などについて労働基準監督署等へ申告したことを理由とする解雇を禁じています。

家庭生活と職業生活との調和をはかる趣旨では、新しいウィンドウが開きます育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)10条新しいウィンドウが開きます16条新しいウィンドウが開きます16条の4などが、育児休業・介護休業・子の看護休暇等の申出または各休業・休暇等の取得を理由とする解雇を禁止していることにも注目する必要があるでしょう(→新しいウィンドウが開きます13-Q8新しいウィンドウが開きます13-Q9参照)。

<労基法による解雇規制>

これらの法規制のうち、基本法規としての新しいウィンドウが開きます労基法を見てみますと、新しいウィンドウが開きます同19条1項は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない」と定め、労働災害と出産という二つの事由について労働者を解雇から保護しています。労働者が傷害や疾病によって休業しなければならなくなる事態は、労災以外にもいくらでも想定することができますが、新しいウィンドウが開きます労基法が解雇を禁じているのは「業務上」の負傷と疾病のみです。言い換えれば、労基署において労災保険からの給付を受けることができる労働災害であると認められるような場合を意味しています。したがって、私生活上の事故や病気による休業の場合は、新しいウィンドウが開きます労基法上は解雇からの保護を受けることができません。また、業務上の負傷ないし疾病であることが明らかであっても、症状が固定した(=治癒した)と認定された場合には、それ以降は本条の解雇禁止は適用されません。一方、労災により休業していた日数がたとえ1日であっても、その後30日間は労働者は解雇から保護されます。

出産にともなう女性の保護としての解雇禁止規定については、たとえば産前休暇を取得せずに就労している女性にも解雇禁止が適用されるかについては、産前休業が当該女性からの請求を前提としていることや、本条違反にも罰則が課されることなどから考えて、否定的に考えざるを得ません。ただし、実質的に使用者が産前休業の取得をさせないような取扱いをしている場合は、その間の解雇は禁止されると解するべきでしょう。

本条の解雇禁止については、いくつかの例外が認められています(新しいウィンドウが開きます労基法19条1項但書)。一つは、業務上の負傷または疾病の場合の休業について、新しいウィンドウが開きます労基法81条に規定する打切補償を支払った場合です。療養中の労働者が療養開始後3年を経過しても負傷または疾病が治癒しない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を支払うことによって、その後の労基法上の災害補償義務を免れるというのが新しいウィンドウが開きます同81条の規定ですが、これを解雇禁止規定の適用除外事由としても認めたものです。労災保険制度との関係では、労働者が、療養開始後3年を経過した日において新しいウィンドウが開きます労災保険法12条の8第3項に基づく傷病補償年金を受けている場合、またはその日以後において同年金を受けることとなった場合は、3年を経過した日または同年金を受けることとなった日において打切補償が支払われたものとみなされ(新しいウィンドウが開きます労災保険法19条)、やはり解雇からの保護が及ばなくなります。

さらに、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合にも、例外的に解雇が許されます。ここでいう「天災事変その他やむを得ない事由」とは、事業所が火災で消失してしまったとか、大地震によって倒壊してしまったというような場合を指し、税金の滞納処分を受けて事業廃止に至った場合や、事業主のミスで資金繰りがつかなくなり操業ができなくなったというような場合は含まれないとされています(昭63.3.14基発150号)。事由の該当性は、労働基準監督署において認定を受けなければなりません。

次に、新しいウィンドウが開きます労基法20条は、解雇の手続きに類する規定です。これによれば使用者は、労働者を解雇しようとする場合には少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。ただし、新しいウィンドウが開きます同条1項は「30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」としており(これを解雇予告手当といいます)、さらに新しいウィンドウが開きます同条2項は「前項の予告の日数は1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる」とありますので、30日間という日数を、平均賃金の日額分と雇用の継続分とに1日単位で区分することができます。

また、新しいウィンドウが開きます20条にも例外が認められており、天災事変などの場合と、「労働者の責に帰すべき事由」を理由とする解雇については、労働基準監督署の認定を受ければ解雇予告期間を設けたり予告手当を支払ったりする必要はありません(新しいウィンドウが開きます同条1項但書)。問題となりうるのは、「労働者の責に帰すべき事由」ですが、これは労働契約の履行に関わって、解雇予告制度により労働者を保護するに値しないほどの重大なまたは悪質な義務違反ないし背信行為が労働者に存する場合であるとされます。具体的には、犯罪に該当する行為を行ったとか、2週間以上も無断欠勤したとか、会社の信用や名誉を著しく失墜させるような行為を社外で繰り返したというような場合が挙げられるでしょう(昭23.11.11基発1637号)。なお、これは労働基準監督署において認定されるものですから、社内の懲戒解雇事由に該当すれば常に本条にいう「労働者の責に帰すべき事由」にも該当するというわけではありません。

これらの規定は、いずれもいくつかの限定された局面において使用者の解雇権を制約する規定なのですが、上述したように、2003年に至って、それまで最高裁の判例として確立していた解雇権濫用法理が、法律の条文として採用されました。この条文の意義については、少なくとも現在では、個別の解雇規制と一般的な解雇規制との両方が日本の法制度に導入されているということはきちんと認識する必要があるでしょう。

関係法令・資料

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第3条 19条 20条 81条 104条

労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第16条

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(雇用機会均等法)(昭和47年07月01日 法律第113号)第6条 9条

労働組合法(昭和24年06月01日 法律第174号)第7条

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)(平成03年05月15日 法律第76号)

労働者災害補償保険法(昭和22年04月07日 法律第50号)第12条の8 19条

「労働基準法関係解釈例規」(昭和63年03月14日 基発150号)

昭和23年11月11日 基発1637号

(名古屋大学准教授 中野 妙子)

2011年4月掲載