Q1 退職に関する規程について法律上の制約はありますか。

ご利用にあたって

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質問

社内の就業規則を整備することになりましたが、退職規程を改定するにあたって、法律上いくつかの制約があると聞きました。その内容について教えてください。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

  1. 退職規程は、就業規則の重要な一部として、新しいウィンドウが開きます労働基準法においては必要記載事項の一つとされています。
  2. 労基法においては、解雇の場合をはじめとしていくつかの退職規程に関する規定がありますので注意が必要です。

解説

退職については、その条件や手続きなど、重要な要素がからみますので、新しいウィンドウが開きます労働基準法などにおいていくつかの制約が置かれていますが、最も肝要なのは退職規程の整備であろうと思われます。新しいウィンドウが開きます労基法の定めを見てみましょう。

まず大前提として、就業規則の作成業務がある事業所では退職に関しては必ず就業規則に規程を置かなければなりません。新しいウィンドウが開きます労基法89条1項には、就業規則に記載すべき事項が11項目にわたって列挙されておりますが、これらのうち新しいウィンドウが開きます同89条3号には、「退職に関する事項」が掲げられています。新しいウィンドウが開きます同89条に掲げられている就業規則の記載事項は、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、当該制度が存する場合には記載しなければならない「相対的必要記載事項」に区別されていますが、退職に関する事項は必ず規程を設ける必要のある「絶対的必要記載事項」に該当します(→5-Q1参照)。多くの企業では、退職についての別建ての規程を設けていますが、仮に新しいウィンドウが開きます労基法89条に該当する事業所において退職規程を持っておらず、あるいは持っていても労働基準監督署に届け出ていないとすれば、違法といわざるを得ません。

通常「退職」という場合には、期間雇用による労働者の期間満了を理由とする退職や、任意退職(いわゆる「辞職」など)を意味し、解雇や定年を含まないことが多いのですが、ここでいう退職は、定年や解雇も含めて、労働者がその身分を失うすべての場合に関する事項をいうと解されています。したがって、解雇の理由や手続きなどについても、できるだけ詳細に規程を整備しておく必要があると言えます。

さらに退職については、新しいウィンドウが開きます労基法15条による規制があります。すなわち新しいウィンドウが開きます同15条では、労働契約締結の際の使用者の義務の一つとして労働条件の明示が記載されておりますが、その明示事項に退職及び退職金に関する事項が挙げられています。しかも、退職に関する事項については書面をもって明示しなければならないこととされています(新しいウィンドウが開きます労働基準法施行規則5条)。この労働契約締結の際に交付すべき労働条件を記載した書面を「労働条件通知書」といいますが、これについてはすでに一般労働者用、短時間労働者用、派遣労働者用などと区分されたモデル様式が厚生労働省によって示されています。このうち最もスタンダードな一般労働者用を参考にして退職に関して書面により明示すべき事項を見てみますと、まず定年制の有無(ある場合には定年年齢も記載)、つぎに継続雇用制度の有無、自己都合退職の手続き、さらに解雇の事由及び手続きがあります。記載要領では、「退職の事由及び手続き、解雇の事由等を具体的に記載すること。この場合、明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合においては、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足りるものであること」とされています。

退職に関し、規定上留意しなければならない新しいウィンドウが開きます労基法の定めとしては、さらに新しいウィンドウが開きます同22条を挙げることができます。新しいウィンドウが開きます同22条1項は、労働者が退職する場合に「使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求」した場合には、速やかに当該証明書を交付しなければならないと定めています。この証明書(退職証明書)は、新しいウィンドウが開きます労基法上使用者に義務付けられているものですから、雇用保険の離職票の交付をもって代えるということは許されません。もちろん、逆にこの証明書を離職票として使用することもできません。本条の定めについては、1998年改正により、括弧内の部分が追加されています。つまり、解雇の場合には、退職の理由として「解雇」と記すだけでは足りず、その解雇の理由も記載しなければなりません。これについて行政通達は、「解雇の理由については、具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならない」(新しいウィンドウが開きます平11・1・29基発45号)としています。

また、労働者が、解雇予告がされた日から退職の日までの間に当該解雇の理由について証明書を請求した場合は、使用者は遅滞なくこれを交付しなければなりません(解雇理由証明書、新しいウィンドウが開きます労基法22条2項)。解雇理由証明書は、2003年の労基法改正によって解雇に関する一般的な規制が労基法に設けられた(→3-Q2参照)ことを受けて、恣意的な解雇を防止するとともに、労働者が解雇について争う場合の便宜を図るために導入された制度です。上述した退職時の証明書が退職後においてしか請求できないのに対し、解雇理由証明書は解雇の予告期間中に請求できる点が異なります。

これらの証明書には、労働者の請求しない事項を記入することはできませんので(新しいウィンドウが開きます労基法22条3項)、解雇された労働者が解雇の事実だけについて証明書を要求した場合には、使用者は、解雇の理由を記載することはできません。さらに使用者は、予め第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、または証明書に秘密の記号を記入してはなりません(新しいウィンドウが開きます同22条4項)ので、注意することが必要です。退職証明書および解雇理由証明書については、行政通達によってモデル様式が定められています(平11.2.19基発81号別添6、新しいウィンドウが開きます平15.10.22基発1022001号)。

労基法上、退職についてチェックすべきもう一つの規定は、新しいウィンドウが開きます同23条です。これは、退職の場合の後始末に関する規制であり、使用者は、労働者が退職してから7日以内に賃金を支払い、かつ積立金、保証金、貯蓄金その他労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。

退職は、特に一定の勤続を積み重ねてきた従業員にとっては、重要な人生の転機を意味します。したがってトラブルも起こりがちなので、企業としても慎重な対応が必要であり、そのための前提として、法に照らし合わせながら退職に関する規程を整備しておくことが肝要であると思われます。

関係法令・資料

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第15条 22条 23条 89条

労働基準法施行規則(昭和22年08月30日 厚生省令第23号)第5条

労働条件通知書様式一般労働者用(常用・有期雇用型)(厚生労働省Webサイト)

労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成11年01月29日 基発45号)

平成11年02月19日 基発81号 別添6

労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成15年10月22日 基発1022001号)

(名古屋大学准教授 中野 妙子)

2011年4月掲載