Q6 法律上の休業手当を請求できるのはどのような場合ですか。

ご利用にあたって

  • 労働問題Q&Aは個別事案について法的なアドバイスをするものではありません。
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具体的なご相談は、厚生労働省「総合労働相談コーナー」新しいウィンドウなど行政機関等の相談窓口にお尋ねください。


質問

昨年の秋に勤務先会社から採用内定を獲得し、この4月から出社する予定でしたが、会社の業績が思わしくないとのことで、自宅待機を命じられました。この待機期間中は休業手当を得られるのでしょうか。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

  1. 新しいウィンドウが開きます労働基準法26条の休業手当は、使用者に故意過失等がない経営上の障害による休業の場合でも、原因が使用者側の領域において生じたと認められる限り、支払義務が発生します。
  2. 会社側の都合による採用内定者の自宅待機については、労働契約が成立していると認められる限り、休業手当の支払を要します。

解説

<休業手当制度の趣旨>

新しいウィンドウが開きます労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき休業について、休業期間中、当該労働者に平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならないと定めています。この制度は、使用者に帰責事由のある休業における労働者の生活保障を図るために、休業手当の支払を強行法規によって使用者に義務づけたものです。ここでいう休業とは、一日の労働時間の一部についての休業や、個別的な人事措置としての休職も含まれます(昭27.8.7基収3445号)。

新しいウィンドウが開きます民法536条2項のもとでも、使用者の責に帰すべき事由により労働者の労働義務が履行不能になった場合には、使用者は労働者に原則として賃金全額を支払わなければなりませんが、新しいウィンドウが開きます民法536条2項の帰責事由が、使用者の故意・過失またはこれと同視すべき事由をいうのに対し、新しいウィンドウが開きます労基法26条の帰責事由は、より広く、使用者側に起因する経営上の障害を含むものとされています(新しいウィンドウが開きますノース・ウェスト航空事件・最二小判昭和62年7月17日)。したがって、民法上は賃金支払義務が存在しない場合でも、新しいウィンドウが開きます労基法により休業手当の支払が必要になることがあります。もちろん、使用者側に起因するとはいえない不可抗力による休業については、休業手当請求権は発生しません。地震や台風など天災による休業がその典型例です。

<経営障害とは何か>

そこで問題となるのが、使用者側に起因する経営上の障害とはいかなるものをいうかです。この点については、機械的な基準を立てることは難しく、事案の類型を示すことにならざるをえません。たとえば、質問のような採用内定者の自宅待機の事例については、行政解釈があり、採用内定がなされた段階で労働契約が成立したものと認められることが多いとの前提に立って、会社の都合による自宅待機措置がとられた場合には、休業手当を支払う必要があるとしています(昭63.3.14基発150号)。

また、親会社の経営難のため、そこから資金や資材の提供を受けて操業している下請工場が操業を停止せざるをえなくなったような場合は、下請工場の使用者の責に帰すべき事由に基づく休業であるとされています(昭23.6.11基収1998号)。事業場の設備の欠陥等に基づく休業や、行政官庁の勧告に基づく操業短縮についても同様のことが言えるでしょう。もっとも、新しいウィンドウが開きます労働安全衛生法に基づく健康診断の結果に基づいて労働者を休業させた場合は、休業手当の支払いは不要であるとされています(昭23.10.21基発1529号、昭63.3.14基発150号)。

次に、労働組合のストライキによりなすべき仕事がなくなった場合に、スト不参加者が休業手当を請求しうるかという問題に関しては、判例は、別事業場での自組合のストライキにより就労できなかったスト不参加者(いわゆる部分ストの場合です)について、原則として休業手当の支払いは不要であると判断しています(前掲・新しいウィンドウが開きますノース・ウェスト航空事件)。これに対して、一部ストによって休業を余儀なくされた、ストライキを行った組合に加入していない労働者については、学説・裁判例は休業手当を請求しうると解していますが(新しいウィンドウが開きます明星電気事件・前橋地判昭和38年11月14日)、行政解釈は消極的な立場をとっています(昭24.12.2基収3281号)。いずれにせよ、スト期間中の就労が客観的に可能であるのに使用者が労働者の就労を拒否した場合には、賃金ないし休業手当の請求権が発生します。

関係法令・資料

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第26条

民法(明治29年04月27日 法律第89号)第92条

新しいウィンドウが開きます労働安全衛生法(昭和47年06月08日 法律第57号)

昭和27年08月07日 基収3445号

「労働基準法関係解釈例規」(昭和63年03月14日 基発150号)

昭和23年06月11日 基収1998号

昭和23年10月21日 基発1529号

昭和24年12月02日 基収3281号

(名古屋大学准教授 中野 妙子)

2011年4月掲載