Q3 賞与や一時金は、どのような要件をみたせば請求できますか。

ご利用にあたって

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質問

私の勤務先には、特に賞与の支払を定めた規定はありませんが、10年ほど前に私が入社する以前から、毎年2回、年により変動はあるものの、夏は月給の2カ月分ほど、冬は月給の3カ月分ほどの支払いを受けてきました。社長は、今年の冬は業績が悪いので賞与は払えないかもしれないと言っているのですが、賞与とはいかなる場合に請求できるのでしょうか。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

賞与は、法律上当然に使用者が支払義務を負うものではありませんが、就業規則などにより支給基準が定められている場合や、確立した労使慣行により、これと同様の合意が成立していると認められる場合には、使用者は、労働契約上、賞与を支払う義務を負います。

解説

<賞与・一時金の発生要件>

わが国では、通常の賃金に加えて、夏季賞与や冬季賞与として一時金を支払う企業が多くみられます。また、年間の賃金額における賞与の占める割合が比較的高い点にも特色があります。それゆえ、使用者が賞与の支払義務を負うかどうか、いいかえれば、労働者が賞与の請求権をもつかどうかは重要な問題になります。

もっとも、賞与の支払いは、民間部門に関する限り、直接法令等により義務づけられているわけではありません。パートタイマーなどの非正規従業員の場合は、賞与が支払われないことも少なくないと思われます。そこで、労働者が賞与の支払請求権をもつには、労働契約上の根拠が必要になります。また、賞与が支払われる場合でも、それが単なる恩恵的な給付にすぎず、使用者の裁量により随時適当な額が支払われているような場合には、労働者は、法律上の請求権として賞与の支払いを求めることはできないと思われます。以上からすれば、労働契約において賞与が支払われる旨とその支給基準が定められている場合に、労働者は賞与の支払請求権をもつといえます。

次の問題は、いかなるものが労働契約上の根拠と言いうるかですが、労働協約に以上のような賞与の支払いの根拠規定がある場合には、新しいウィンドウが開きます労働組合法16条によりそれが労働契約を規律することになります。また、就業規則(賃金規則などの名称のことも多いと思われます)上の規定も、それが合理的なものである限り労働契約の内容となりますので(新しいウィンドウが開きます労働契約法7条)、やはり賞与請求権の根拠規定となりえます。

<慣行に基づく賞与請求の可否>

質問の事例では、そうした労働協約や就業規則の定めはないようですので、以上の他に労働契約上の根拠があると言いうるかが問題となります。もっとも、この点については、すでに10年以上にわたり、年2回の賞与が支給されるという取り扱いが繰り返されてきたとのことですし、その額についても、一応の基準はあるとみてよさそうです。そうすると、本件においては、特段の事情がない限り、賞与の支払いについては、すでに労働関係上の慣行、すなわち労使慣行が成立しているといってよいように思われます。

そこで問題は、こうした労使慣行がいかなる意味をもつかですが、一定の取り扱いが長期にわたり反復して行われ、しかもそれが当事者に規範として承認されるに至った場合には、黙示の合意が成立したものとして、あるいは新しいウィンドウが開きます民法92条の事実たる慣習として、労働契約の内容となります。このようにいえる場合には、就業規則などの規定において賞与の支払義務が定められていなくとも、労働者は賞与の支払請求権をもつといえるでしょう。

関係法令・資料

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第11条

労働組合法(昭和24年06月01日 法律第174号)第16条

労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第7条

民法(明治29年04月27日 法律第89号)第92条

(名古屋大学准教授 中野 妙子)

2011年4月掲載