Q1.労働時間についての法規制はどうなっていますか。

※労働問題Q&Aは個別事案について法的なアドバイスをするものではありません。
具体的なご相談は、厚生労働省「総合労働相談コーナー」新しいウィンドウなど行政機関等の相談窓口にお尋ねください。

質問

このたび勤務先で人事部に配属され、各部署の労働時間管理のありかたを考え直すプロジェクトに携わることになりました。そこで、労働時間についての法規制の概略をまず頭に入れておきたいのですが、この点についての内容はどのようなものでしょうか。

回答

ポイント

  1. 労働時間の法規制は、現在では1日8時間、1週40時間が原則的な上限となっていますが、弾力的な労働時間制度も増えつつあります。
  2. 労働基準法上の労働時間の規制は実労働時間によるのが原則で、使用者は通常労働時間を把握する義務を負います。

解説

<労働時間規制の経緯>

長時間の労働は健康に悪影響を及ぼしますので、労働時間の上限規制は、各国において、当初から労働法の規制の中心的な対象となってきました。その後、労働時間の長さや休憩時間に加え、休日、時間外労働に対する割増賃金、有給休暇など、規制の内容も多様化してきましたが、現代においては、労働時間の短縮は、労働者のゆとりの実現やワークシェアリングによる雇用の創出という新たな役割を果たすことも期待されています。その一方で、労働時間の短縮や経済のサービス化が進むにつれて、労働時間規制の弾力化も進行しています。

わが国では、1947年に労働基準法が制定された際に、1日8時間、週48時間が最長労働時間とされましたが、その後労働時間の短縮が大きな課題となり、1987年の労基法改正により、週の労働時間は最長40時間となりました(1日8時間の上限は変わっていません)。この週40時間制は、段階的に実施され、1997年4月1日からは完全に実施されています。同時に、1987年改正は、変形労働時間制の拡充やフレックスタイム制の容認、および裁量労働のみなし制の新設など、労働時間規制の弾力化を打ち出しました。1998年の労基法改正により企画業務型裁量労働制が新設されるなど、こうした傾向はその後も続いています。

<規制の概要>

さて、1週・1日の労働時間規制に関しては、労基法32条により、使用者は、労働者に、休憩時間を除いて、1週40時間を超えて労働させてはならず(同条1項)、かつ、1日8時間を超えて労働させてはならない(同条2項)とされています。これに違反して労働者に労働させた使用者には、刑事罰による制裁がありますし(同119条)、労働者とこうした規制に違反する合意をした場合でも、その合意は無効となり、無効となった部分は上記の基準のとおりに修正されます(同13条)。労基法33条36条などにより、一定の要件のもとに時間外労働をさせることはできますが、その場合でも、使用者は割増賃金を支払わなければなりません(同37条)。

以上に対して、同40条に基づく恒常的特例として、10人未満の商業やサービス業等では、現在週44時間制がとられています。また、農業・畜産業・水産業の労働者、管理監督者および機密事務取扱者、ならびに監視断続労働に従事する労働者(行政官庁の許可が必要です)については、労働時間に関する規制は適用が除外されます(同41条。ただし、休暇・休業や深夜割増賃金の規制は適用されます)。なお、管理監督者に当たるかどうかは、肩書きの名称ではなく、労働条件の決定その他労務管理に関して経営者と一体的立場にある者といえるか否かを、実態に即して判断することとされています(昭63.3.14基発150号、日本マクドナルド事件・東京地判平成20年1月28日)。

労働時間が40時間を超えたかどうかを判断する単位となる1週間は、就業規則等に定めがあればそれにより、そうした定めがなければ、日曜日から土曜日までの暦週をいいます(昭63.1.1基発1号(1.法定労働時間 (2).一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間))。同じく、8時間を超えたかどうかを判断する単位となる1日とは、原則として午前0時から午後12時までの暦日をいいますが、午後12時前に始まった勤務が翌日に及んだ場合の労働時間は、翌日が休日でないかぎり、前日の勤務と一体のものとして判断されます。

このような労基法上の労働時間の規制は、原則として、現実に働いた時間としての実労働時間により行われます(いわゆる裁量労働や事業場外労働の場合にはみなし労働時間による処理が認められる場合がありますが、これらについてはそれぞれの項目を参照して下さい)。使用者としては、賃金や割増賃金の支払の必要上、各労働者の労働時間を把握する必要がありますし、労基法上も、賃金台帳に各人の労働時間を記載しなければなりません(労働基準法施行規則54条1項5号)。

関係法令・資料

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第13条 32条 33条 36条 37条 40条 41条

労働基準法施行規則(昭和22年08月30日 厚生省令第23号) 第54条

「労働基準法関係解釈例規」(昭和63年03月14日 基発150号)

改正労働基準法の施行について(昭和63年01月01日 基発第1号,婦発第1号) 1.法定労働時間 (2).一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間

(名古屋大学准教授 中野 妙子)

2011年3月掲載