JILPTリサーチアイ 第14回
天地開闢のとき
~職業情報を数値化する重要性と可能性~

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特任研究員 松本 真作

2016年3月17日(木曜)掲載

「職業情報を数値化」と言われても、何のことだろうかと思われる方は多いと思う。ここでは、この「何のことだろう」と思われる数値化が、個人にとっても社会としても重要な意味を持ち、強い経済、国の競争力にも関係し、様々な研究や開発の可能性もあることを述べていきたい。米国労働省はこの職業情報の数値化に、年によって変動はあるが、毎年7億円から12億円をかけており(1ドル120円で計算)、その重要性がうかがわれる。

1.職業情報と国による整備

まず、「職業情報」であるが、これは国語辞典等に意味が書かれているものではなく、キャリアガイダンス等の書籍に説明や解説はあるが、決まった定義等はない。そこで具体的な例から考えることにする。

代表的な職業情報として、米国労働省のOccupational Outlook Handbook(OOH)がある。何が「代表的な職業情報」かも議論の余地はあるが、少なくともこの分野の研究者、キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラー等は、このOOHが代表的な職業情報と言って、反論する人はいないと思う。以前、OOHは書籍であったが、現在はWebサイトにもなっている。OOHでは、約300の職業について、①何をする職業か(What ○○○○ Do、○○○○に職業名が入る)、②働く環境(Work Environment)、③なるには(How to Become a ○○○○)、④給与(Pay)、⑤職務の将来展望(Job Outlook)、⑥州別/地域別のデータ(State & Area Data)、⑦類似職業(Similar Occupations)が解説されている。⑥の「州」のデータというと、米国独特のようにも感じられるが、日本においても、どこに就業者が多い職業か、また地域、地方による給与や労働条件の差等、米国よりは小さいかもしれないが、地域や地方による違いは少なからずある。なお、日本においても、以前『職業ハンドブック』が刊行されていた。これはOOHをモデルに開発、制作されたものであり、構成はOOHと類似していた。日本の『職業ハンドブック』が日本における代表的な職業情報といえるが、現在は刊行されていないこともあり、サイトとしてすぐに見られる米国労働省のOOHを代表的な職業情報の例とした。以上から、OOHが代表的な職業情報であれば、「職業情報」とはここでの①から⑦ということができる。

なお、余談になるが、この米国労働省のOOHの発端は、第二次大戦後、復員してくる軍人にこれから良さそうな職業を紹介した小冊子であるとされる。その小冊子が2年に一度改訂される分厚い書籍Occupational Outlook Handbookとなり、現在ではインターネットでも提供されている。OOHのサイトでは今後10年間を展望し、就業者が増える職業の成長率順であったり、求人が多い順の職業であったり、また、給与が多い順の職業であったりが示されている。参考までに、現在サイトにある成長率の高い職業の1位から3位は、風力発電風車技師(Wind Turbine Technicians、2014-2024に108%増加)、作業療法助手(Occupational therapy assistants、2014-2024に43%増加)、理学療法助手・補助(Physical Therapist Assistants and Aides、2014-2024に41%増加)となっている。なお「データサイエンティスト」で注目される統計学者(Statisticians)は2014-2024に34%増加で9位である。OOHのサイトをみると膨大な情報であり、また二年に一度全面改訂されている。OOHの情報収集と分析に、米国労働省では約70名の専門職員があたっている。

米国労働省ではこのOOHとは別に、後述するO*NET(Occupational Information NetworkO*NET OnLine新しいウィンドウO*NET Resource Center新しいウィンドウ)としても職業に関する情報を収集し、分析、整理し、提供している。このO*NETの年間予算が最初に述べた7億円から12億円である。国による職業情報の収集は米国ばかりではない。フランスではROME、ドイツではBerufeNet、英国ではJob Profilesによって、国による公的な職業情報が整備され、提供されている。

このように職業情報が重視されているのは、国民一人ひとりがそれぞれに力を発揮することが、強い経済の基盤、国の競争力の源泉と考えられているためである。フォード、カーターの政権で政策ブレーンを務め、その後、米国労働長官に就いたこともある経済学者ロバート・ライシュは、「国の競争力のためには何に投資すべきか。企業に投資しても有力企業は多国籍になっており、自国の競争力強化につながらない。工場も設備も最適な拠点を求めて、国境を越えて移動してしまう。資金にも国境がない。国が競争力強化のために投資すべきは、国民の教育とスキル、そしてそれらを結びつける情報インフラである」としている(『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ―21世紀資本主義のイメージ』ダイヤモンド社1991年、労働長官ロバート・ライシュ米国議会証言1996年)。そしてこの国民の教育とスキル、情報インフラにおいて重要な役割を果たす新たな職業情報データベースとして、O*NETの開発が始まっている(『新しいDOT;21世紀への職業データベース─合衆国労働省雇用訓練局職業辞典諮問委員会(APDOT)最終報告書─』資料シリーズNo.39, 日本労働研究機構1994年)。

ライシュの発言は随分前のものに感じられるが、「マイクロファイナンス」で2006年にノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行も、注目される新たな投資「インパクトインベストメント(社会的貢献投資)」も、ポイントは人に投資し、それが社会全体にも還元される仕組みといえ、人への投資の観点は不変であり、より重要になっている。

2.職業情報の数値化とは

「職業情報」についてみてきた。次は、職業情報の「数値化」であるが、これは、職業情報を可能な限り数値で表現しようとするものである。数値化とはどのようなものか、なぜ、数値化が必要か述べていくことにする。

職業情報の数値化は目新しいものではない。米国労働省のO*NETでは、職業を様々な面から数値化し、データベースとして提供している。様々な面からの数値化であることから、簡単な数表では収まらず、MySQL、SQL Server、Oracleといったデータベースのファイルとして提供されている。最新版はExcelでも提供されるようになったが(O*NET 20.1)、Excelファイルが40近くにもなっている。これらO*NETのデータベース等ファイルは誰でも自由にダウンロードできる。

O*NETでは下の項目に関して、それぞれカテゴリを設定し、そのカテゴリ毎に小数点以下二桁まで数値化している。「知識」から「仕事の関係性」までの項目だけでも、多くのものがあるが、この項目それぞれに数十のカテゴリが用意されており、それが約1,000の職業に対してすべて付けられていることから、全体では膨大な数値データとなる。

O*NETにおけるこの数値化は、その職業の従事者からの回答の平均値と、専門のアナリストの評定を平均したものである。数値は更新されたり、追加され、さらには、項目とその中のカテゴリの見直しも継続的に行われており、データベースのファイルは毎年、最近では1年に二回、新しいものが提供されている。現時点で最新のファイルは2015年10月にリリースされたO*NET 20.1である。

もっとも米国労働省での職業の数値化はO*NETに始まるものではない。O*NET以前の情報源として、職業辞典(Dictionary of Occupational Titles : DOT)があった。電話帳のような(最近あまり見かけないが)分厚い書籍であるが、そこには数万の職業の職業名(Occupational Titles)があり、その定義、解説があった。そしてこの書籍には、米国労働省が開発し、広く使われていた職業適性検査である「一般職業適性検査(General Aptitude Test Battery : GATB)」において、各職業ではそれぞれの適性(G,V,N,Q,S,P,K,F,Mの9つの適性がある)が何点以上必要かといった数値が掲載されていた。一般職業適性検査を受ければ、その結果からその職業に適性があるかどうかわかるようになっていた。

これも余談になるが、このGATBの開発とそれぞれの適性が何点以上必要といった基準数値の作成は、米国は第二次大戦中に行っており、戦争が終ると予想される大量の復員兵を有効に産業界に再配置し、戦後経済を力強く再スタートできるよう、国家プロジェクトとして進められていたとされる。

米国労働省のO*NETデータベースを構成する項目

知識(Knowledge)、スキル(Skills)、能力(Abilities)、教育(Education)、経験(Experience)、訓練(Training)、ジョブゾーン(Job Zones、全体的な職業の難しさ、簡単な説明を受ければできるものから何年にもわたる専門的な教育訓練が必要なものまで)、職業興味(Interests)、職業価値観(Work Values)、ワークスタイル(Work Styles)、課業(Tasks)、道具と技術(Tools & Technology)、仕事での活動(Work Activities)、仕事の関係性(Work Context、他の職業の人との関係、組織の中での位置づけ、等々)

3.実際の就業者から大規模な情報収集が可能に

では、この職業毎の数値情報をどのように整備すれば良いのであろうか。以前、職業情報は職務分析の専門家(Job Analyst)が事業所を訪問し、仕事の現場を観察したり、関係者にインタビューしたりし、情報収集してきた。この方法はThe Revised Handbook for Analyzing Jobs(U.S. Department of Labor, 1991)に詳細に解説されている。しかしこの方法は非常に人手とコストがかかる。職務分析の専門家を養成し、その専門家が全米の事業所を回り、情報を収集してきたが、あまりにも経費がかかり、時間的にも何年もかかる。時間がかかるということは情報収集を一巡するうちに、状況が変わり、最初の方で収集した情報はすでに古いものになっているということも起きかねない。このことから、かつて全米5箇所にあった職務分析センターは閉鎖され、O*NETの情報収集で述べたように、調査票を事業所で配布しそれを集計したり、専門家が評定しそれを集計するものとなっている。これによって、経費の圧縮と期間の短縮がはかられている。

情報収集の方法として、日本において注目されるのがWebモニターによる方法である。当機構においても、それぞれ実際の職業の就業者数万名から情報を収集し、以下のような報告書を出している。

日本においては、数百万のWebモニターを有する調査会社が複数あり、それらのモニターから、細かく職業を特定し(厚生労働省編職業分類の職業細分類レベル)、それぞれ例えば120名という形で情報収集ができる。600近い職業に対して、それぞれまとまった数、情報収集することはこれまではできなかったが、これが可能となっている。しかも数万名の情報収集が数週間でできるようになっている。

国勢調査も今回からネットでも回答できるようになり、インターネットでの回答は36.9%であったとされる(総務省報道、平成27年9月25日)。実は筆者もネットから回答したが、あっけないほど簡単であった。日本では数百万人という膨大なネットモニターが存在し、安定したネット環境が広く行き渡り、また、国民のコンピュータリテラシー、インターネットリテラシーも高く、これらの条件が揃って始めて、Webでの職業情報の収集が行えるといえる。効率的に情報収集できれば、米国でも行われそうであるが、行われていない。米国では現在も事業所において調査票を配布し、従業員から回答を集めそれを職業毎に集計する、また、専門家が評定しそれを集計する方法をとっている。ネット環境の問題なのか、リテラシーの問題なのか、また、調査票の配布、回収、また専門家の評定という形で始めてしまい、そのデータとの接続の問題なのか、不思議な感じもあるが、膨大な予算と評定を行える専門家が多数いることで実現できているともいえる。

以前は不可能であった実際の就業者からの情報収集が、今日、できるようになり、また、数万人の情報を数週間で収集することができる。その上、ネットでの回答であることから、紙の調査票ではできなかった様々な工夫も可能となる。ここで見てきた職業情報の収集においても、数百の職業から自分の職業を特定する必要があるが、五十音順の検索、職業分類からの検索、フリーワードでの検索等ができることによって、自分の職業を適切に選ぶことができる。IT社会の進展によって生まれたビッグデータを解析するデータサイエンスが話題となるが、職業情報に関しても、情報収集に革命的な進展があったといえる。ネットでの情報収集は職業のなりすましを懸念する方もいるかもしれない。しかし、これまで行ってきた情報収集から、これは少ないと考えている。システムによって回答行動は様々なチェックが可能である。あまりに回答時間が短い、あまりに多くが「どちらともいえない」等に偏っている、回答を論理的にチェックすることによってまじめな回答ではないことがわかる、等々、工夫が可能である。そしてこのようなチェックによって、毎年、何割かはモニターの入替えも行われている。調査において回答の品質は最大の関心事でもあり、調査会社はそれぞれに様々な対策をとっている。このようなことで、適切な回答が集まっていると考えられる。

職業情報の数値化のための情報収集に関して述べてきたが、項目を変えれば、職業の現場の状況や変化を捉えることもできる。労働政策研究報告書No.176『職務構造に関する研究Ⅱ―5万人の就業者Web職業動向調査より、現状、変化、能力、生活のデータ分析―』(2015年)はこのような新たな挑戦の意味合いもある。職業の現場の状況や変化を数万人規模で数週間で収集でき、政策判断の参考にもなると考えている。報告書に記載しているが、丁度、アベノミクスが始まった頃であり、経済活動の活発化によって仕事が忙しくなり、僅かではあるが賃金が上昇し始めた現象を捉えている。

4.職業情報の数値化の重要性

1)個人の特性とそれを生かす職業:国としての労働力の最適配置

職業情報の数値化は見てきたように、米国では膨大な予算をかけ行っているが、筆者としても長年の懸案であった。というのは、今から30年以上前、研究所における最初の仕事は職業適性検査の開発であった。職業適性検査は当時としてもすでに多くのものがあり、検査自体の開発はそれほど難しい仕事ではなかった。色々な新たな概念を取り入れたり、当時、普及し始めたパーソナルコンピュータ版を作成するなど、様々なことができた。ところがそこで問題となるのが、職業との照合に用いる基準となるデータをどうするかであった。方法としては協力企業を募り、そこで検査を実施し、企業側の評価とともに職業毎に集計すればよいのであるが、それが実際には不可能に近い。特に企業側の評価が人事情報であり得られない。第二次大戦中、米国は国を挙げてのプロジェクトとしてこれを進めたように、それほど大規模な事業といえる。この大規模な情報収集ができない。また、出来たとしても数百の職業があることから、職業を漏れなく、事業所からのデータで集めることは非常に困難であった。また何年もかかることも予想された。何年もかかれば、集め終わるころにはすでに古い基準となってしまう。そのため、当時は、米国労働省が作成した基準等を参考に、検査結果と職業の照合をしていた。これが既に述べたように、今日では、数百の職業にそれぞれ何名という目標を設定し、全体では数万の数になるが、数週間で情報収集できることになった。

適性検査の結果と職業との照合というと、小さな話のように感じられるかもしれない。しかしながら、適性検査は個人の特性であり、個人の特性を生かすことができる職業をデータに基き、客観的に示すということになる。今日、少子高齢化の中、人口減少社会で経済活動を拡大していくためには、各人が持てる力を十二分に発揮し、社会として生産性を高める必要がある。このためには個人の特性とそれを生かせる職業の客観的なデータが必要となる。国として、労働力を最適配置するための基礎となるデータといえる。見てきたように、米国では職業の数値化のために、また、その数値を更新するために、膨大な予算をかけている。それはこの数値化が国の経済にとっても非常に重要であると認識しているためである。個人の特性が生かせる意味では、個人にとっても重要である。自分の特性を職業で生かし、伸び伸びと力を発揮できることは、良い収入、安定した雇用に関係するとともに、働き甲斐ややりがいにもつながる。

2)職業と職業の距離:職種転換において重要な情報

職業を数値化できるということは、職業を多次元の空間の中で布置できることを意味している。多次元といってもイメージが沸かないであろうから、イメージできる3次元、例えば、能力、興味、働き方の3次元を考えると、それぞれの職業がこの3次元の中で配置できることになる。そして、職業をそれぞれ布置できるということは、職業と職業の距離を計算できることになり、どの職業とどの職業が近く、どの職業とどの職業が遠いかをデータに基き、見られることになる。

今日、個人の職業人生が30年、40年と長くなる一方、経済、社会の変化は早くなっており、会社を変わるだけではなく、仕事の内容、すなわち職業も変わることも多くなっている。そうした時、職業と職業の関係が数値により示されていれば、能力の面で近い職業はこれこれ、今の能力を生かせる職業はこれこれとわかることになる。多次元のデータがあることから、能力が生かせ、興味にも合い、働き方も近い職業はこれこれ、近い順に並べるとこのような職業リストという具合に示せることにもなる。このような具体的な計算例を労働政策研究報告書No.146『職務構造に関する研究―職業の数値解析と職業移動からの検討―』に示している。

職業を多次元で数値化でき、職業と職業の関係が分かることは、経済、社会の変化に応じて、労働力を再配置しようとする際、非常に有効なデータとなる。転職する個人にとっても、能力や興味に合った職業に転職できることは望ましいことである。経済、社会の変化に応じて、的確な労働移動のために必要であり、個人の幸福のためにも必要である。このために米国は膨大な予算をかけている。

5.様々な研究や開発の可能性

職業情報の数値化は様々な研究に発展できる。Carl B. FreyMichael A. Osborneの「雇用の未来」(THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?, 2013)のショッキングな内容が話題となり[注1]、様々な経済誌で取り上げられた。これは、近い将来、かなりの労働が機械、ロボット、人工知能によって代替されるというものであった。この論文の計算はO*NETの数値に基いている。職業の数値化された特性から、その職業の機械、ロボット、人工知能に代替できる可能性を計算したものである。野村総合研究所もOsborne氏との共同研究で、日本における代替可能性の高い職業を計算しているが[注2]、ここで使われたのは、当機構が収集し、公表している職業を多面的に数値化したデータである[注3]。池永氏の論文「労働市場の二極化─ITの導入と業務内容の変化について」(2009)では[注4]、当機構が収集しキャリアマトリックスとして公表していた、スキルの数値情報が計算の過程で利用されている。拙稿「サービス業に求められる能力、適性、意識、行動─5万人の就業者Web職業動向調査のデータ分析より」(2016)においても[注5]、データを再集計し、能力面でサービス業に何が求められるか分析している。

このように職業情報の数値化は様々な研究に展開できる。これまで職業情報はその職業の内容といった解説、すなわち文章であったために、数量的な研究はできなかったが、職業を多面的に数値化することによって、その数値を再集計、再分析する様々な研究が可能になっている。FreyOsborneの研究、野村総研の研究は数値化した職業の特性から、今後の機械化、ロボット化、IT化を予測しているが、これ以外にも、賃金水準の決定要因、雇用の安定要因、職業に対する満足度の決定要因、職業と生活の関係、等々、色々な研究が可能である。職業の数値化は職業に関する研究に新たな基盤を提供するものといえ、この基盤情報があることによって、関連分野における研究が天地開闢のときを迎えている。

職業の数値化は様々な開発の可能性もある。個人がどのような特性であれば、それはどの職業で生かせるかがわかる客観的な数値であることから、スキル、知識、経験、興味、価値観等、個人の側を測定するツールを作れば、その個人がどの職業に向いているか、数値に基き客観的に示せることになる。前に書いたように、適性検査等個人の特性を測定するものの開発は難しくないが、その結果と職業を結びつけるデータが以前は存在せず、それが大きな障碍であった。これが職業を数値化したデータによって除かれることになる。実際、米国労働省では職業の数値基準を活用するものとして、能力、興味、価値観等を測定するツールを開発している(O*NET Career Exploration Tools)。労働省以外でも、これまで、米国労働省が公表している数値基準に独自に収集したデータを加え、コンピュータによる適職診断、適職探索等の支援システムが開発されてきた(ACTのDISCOVER、ETSのSUGI Plus、他)。O*NETの情報を活用し、米国労働省は人事労務管理のためのツールも提供している(Toolkit for Business)。職業情報の数値化は爆発的な開発の可能性も秘めているといえる。

以上、ここでは、職業情報の数値化の持つ重要性と可能性を述べてきた。ここでもみてきたように重要な意義があり、研究の新たな地平を拓き、次々と鮮烈な開発が行われる可能性もある。そして、この職業情報の数値化のためのデータはネットを使うことによって、効率的に、少ない予算で、しかも短時間で収集可能となっている。職業情報の収集に限られたことではない。従来の紙の調査票では収集できなかった情報が収集できるようになり、さらに、Webサイトでの様々な工夫によって、これまでできなかったような情報収集が可能になっている。