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医療機関への医療資格者の労働者派遣について
(医療分野における規制改革に関する検討会)
はじめに
- 労働者派遣事業制度は、社会経済の変化を背景とする労働力需給の多様化に
対応するために、労働者派遣事業を労働力需給調整システムのひとつとして位
置付けるとともに、労働者派遣事業の適正な運営の確保や派遣労働者の就業条
件の整備等を図るため、制度化されたものである。
- 労働者派遣については、臨時的・一時的な労働力ニーズに迅速に対応でき、
かつ、即戦力として期待できる点がメリットとして挙げられており、また、働
く側にとっても、専門性を活かしたい、都合のよい時間、場所で働きたいなど
多様な働き方を可能にするというメリットがあるとされている。
- 労働者派遣事業制度の適用除外業務は、現在、法律で規定されている港湾運
送業務、建設業務、警備業務に、政令で規定されている医療関連業務を加え、
4業務のみとなっており、法律の附則において、いわば経過措置的に適用除外
業務とされていた物の製造の業務については、今般、労働者派遣事業制度全般
が見直される中での労働者派遣法改正により、解禁することとされた。
- 適用除外業務としての医療関連業務については、平成11年に労働者派遣事
業の適用対象業務が原則自由化された際に、それまでは特例として認められて
いた高年齢者のみを派遣労働者とする場合や育児・介護休業を取得した労働者
の業務について派遣を行う場合を含め、医療資格者の労働者派遣が原則として
適用除外とされた。その後、平成15年3月に、社会福祉施設等における医療
関連業務については解禁されたが、医療機関については、派遣先(医療機関)
が派遣労働者を特定できないこと等を考慮して、引き続き、適用除外とされて
いる。
- 当検討会においては、こうした医療機関への医療資格者の労働者派遣のあり
方について、労働者派遣事業制度の趣旨や最近の動向等を踏まえ、検討を行う
こととしたものである。
- 医療機関における医療資格者の確保の現状と労働者派遣についての検討の視点
- 医療は、患者.国民の生命・健康に直接関わるものであり、医療に関する規
制のあり方については、患者・国民の視点に立って検討することが必要である。
医療機関への医療資格者の労働者派遣の問題についても、これは、全く変わりがない。
- 医療機関における人材の確保について、患者・国民の視点に立つて考えると、
まず、専門的な知識・技能を有する医療資格者が十分に配置され、適切な医療
サービスが提供されることが、何よりも重要である。
- しかしながら、医療機関における医師等の人員充足状況等をみると、地域や
病院の規模などでばらつきがあり、必ずしも充足されていなかったり、採用方
針どおりの人員の確保ができていないという状況も見られる。
- こうした状況の中で、医療機関への医療資格者の労働者派遣を活用すること
が、医療機関の人材確保、特に、労働力需給のミスマッチの解消のための選択
肢のひとつとして適切かどうかが検討の対象となる。
- この場合、医療機関への医療資格者の労働者派遣については、医療機関が派
遣労働者を特定できないことや派遣労働者が頻繁に入れ替わることで、医療資
格者間の適切な連携に支障が生じないか、雇用関係と指揮命令関係が分離する
ことで患者に対する責任の所在が分散するおそれがないかという懸念が従来か
ら指摘されており、派遣労働者を活用した場合の医療の質や安全を確保するた
めの方策や患者に対する責任体制等について十分に検討する必要がある。
- 基本的な考え方
- 通常の労働者派遣においては、派遣先が派遣労働者を特定できない。このた
め、医療機関における医療資格者の労働者派遣については、チーム医療に支障
が生じる等の問題があると指摘されている。一方、派遣先である医療機関が派
遣労働者を事前に特定できる場合には、そうした問題は防止可能と考えられる。
- 今回の労働者派遣法の改正により、紹介予定派遣については、派遣労働者を
特定することを目的とする行為をしないように努めなければならないという規
定を適用しないこととされ、派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等が可能と
なった。従って、こうした紹介予定派遣であれば、派遣労働者を事前に特定で
きることから、医療機関に導入しても差し支えないものと考えられる。
- また、派遣労働者については、頻繁に入れ替わるとすれば、医療スタッフや
患者との間のコミュニケーションや信頼関係に支障が生じるのではないかとの
懸念が指摘されているが、紹介予定派遣の場合は、直接雇用を実現させるため
に行われるものであることから、派遣元事業主の意向だけで派遣労働者が入れ
替わることは想定されず、そのような問題は防止可能と考えられる。
- また、派遣労働者が医療事故に関わった場合は、ケースによっては、派遣元
事業主が関係者に加わることがあり得る。患者に対する医療機関等の損害賠償
責任等は、個々のケースに応じて判断されるが、この場合も、一般の労働者の
場合との基本的な差異はないと考えられ、責任の所在が分散されないように医
療機関は適切に対応する必要がある。
- なお、紹介予定派遣については、現行制度でも、直接雇用に結びついている
例が相当程度あるが、今回の労働者派遣法改正で、派遣就業開始前の面接、履
歴書の送付等を可能とすること等により、更に直接雇用を実現させる制度とし
て円滑に機能することが期待されている。
- これに対して、医療機関における医療資格者の労働者派遣の解禁については、
このような紹介予定派遣に限定するのではなく、臨時的・一時的な労働力需給
のニーズに幅広く適切に対応できるよう、例えば、学会による認定を受けた専
門医や専門団体の研修を修了した者等については通常の労働者派遣も可能とし
てはどうかとの意見があった。
- その他留意すべき点
- 労働者派遣事業制度においては、派遣元事業主は教育訓練の機会の確保等に、
また、派遣先も必要に応じ教育訓練に係る便宜を図るよう、それぞれ努めなけ
ればならないこととされている。特に、医療は生命・健康に関わるものである
ことから、医療機関への医療資格者の労働者派遣に際しては、派遣元事業主は、
医療資格者である派遣労働者の資質の確保・向上を図ることが重要であり、ま
た、派遣先である医療機関も、教育訓練の実施に積極的に協力することが望ま
しい。更に、医療資格者の資質の確保・向上は、派遣労働者についてのみ求め
られるものではなく、直接雇用される常用雇用職員・パートタイマー・臨時職
員等の医療資格者全体について適切に進められるべきものである。
- 労働者派遣については、派遣労働者による常用労働者の代替や、派遣労働者
の処遇についての懸念も指摘されているところであり、医療機関における医療
資格者の労働者派遣の導入に際しても、労働者派遣法による派遣期間の制限を
超えた労働者派遣の受入れの禁止や、労働・社会保険への加入や適切な休暇の
取得などをはじめとした派遣労働者の保護について適切な対応がなされるべき
である。
- 派遣元事業主は、派遣元責任者を選任するとともに、派遣先との派遣契約に
おいて、苦情処理担当者、処理方法、派遣先との連携のための体制等を定める
こととされている。医療資格者の派遣を行う派遣元事業主は、医療の質の確保
という観点も踏まえ、医療分野における派遣労働者からの相談・苦情に適切に
対応できるよう、例えば専門的なスタッフを配置するなどの体制を作るととも
に、派遣先である医療機関は、そのような体制をとっている派遣元事業主を選
ぶことが望ましい。
- 派遣先は、同一の業務について、いわゆる「26業務」を除き、1年を超え
る期間継続して労働者派遣を受け入れることはできないとされている。(今回
の法改正で、最長で3年まで延長)。この「同一の業務」については、派遣先
における組織の最小単位において行われる業務とされているところであるが、
医療機関における診療科ごとの業務実態や看護職員の勤務形態等を踏まえて、
医療機関における「同一の業務」の判断が混乱しないよう、必要に応じ、適切
な判断の具体例を示すこと等が求められる。
- 医療に関する患者等の苦情や相談に対応し、医療安全対策を推進するため、
国、地方公共団体及び医療関係者においては、「医療安全支援センター」、医
療機関や医師会における患者相談窓口等の設置や活用を図っているところであ
る。医療機関への医療資格者の労働者派遣の導入に当たっても、患者からの苦
情や相談に対応するため、これらの患者相談窓口等の設置を進めるとともに、
積極的活用を図ることが適当である。
- また、労働者派遣事業は、個人、株式会社や公益法人等をはじめとする法人
が広く行うことが可能であるので、医師や看護師等の専門的な団体が、既に取
り組んでいる職業紹介事業のように、そのノウハウを活用して労働者派遣事業
を行うなど、前向きに取り組むことが期待される。
おわりに
- 医療機関への医療資格者の労働者派遣については、紹介予定派遣の場合には
解禁しても差し支えないが、医療の質や安全の確保、患者に対する責任体制、
派遣労働者の保護をはじめとする本報告書で述べた懸念に対する対応につき、
厚生労働行政における関係部局等が十分連携しつつ、その検証を行い、必要に
応じ、適宜、見直しを行うことが適当である。
- 当検討会は、本報告書の趣旨を踏まえ、関係行政機関、医療関係者、派遣元
事業主等の関係者が連携して対応し、医療機関への医療資格者の労働者派遣の
導入が、患者のための医療サービスの向上に寄与することを強く期待する。
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