労働省発表
平成12年12月15日

情報関連産業における雇用管理と技術者の労働者福祉
−中小企業労働福祉推進会議報告書について−

  中小企業労働福祉推進会議(座長:松島静雄  東京大学名誉教授  別添参照、以下「推進会議」という。)は、平成2年6月以降、随時開催し、中小企業における労働問題についてそれぞれの立場で意見交換を行ってきた。
  近年、情報関連産業(情報サービス産業)は、世界規模で生じているIT(情報技術)による産業・社会構造の変革、いわゆるIT革命の進展を背景に、雇用創出の場として大きく期待されているところであるが、平成11年3月以降、推進会議において、成長産業として能力開発、個々の労働条件等の実態、問題点等を全般的に把握し、その結果を踏まえ、こうした情報関連産業の労務管理のあり方について意見交換を行ってきた。平成12年12月6日にはこれまでの議論がとりまとめられ、その骨子は以下のとおりである。また、概要は別紙の通りである。

【報告書の骨子】
第I部  情報関連産業の雇用・労側問題に関する調査分析

  1. 情報サービス企業の経営概況
      調査対象の情報サービス企業の平均像をみると、東京都内を中心にして大都市圏内に立地し、売上高約8億円、従業数73人の中小の経営規模をもつ。技術者の平均年齢は32.0歳。

  2. 情報サービス業における技術者の労働市場の特質
      情報サービス企業は技術者単価を決定する際、コンピュータ・メーカーの「単価表」を基準とし、その相場は業界全体に波及する。
      技術者の57%が転職を経験しており、その主な理由はキャリアアップである。

  3. 情報サービス企業の経営特性と業績管理
      情報サービス企業は、学歴の高い技術者から構成され、学歴構成の規模間格差は極めて小さい。企業はプロジェクトの仕事の結果によって業績を管理・評価。

  4. 人事戦略と雇用管理の特質
      情報サービス企業は、短期的な成果を厳しく問う成果・業績主義化と、長期的な観点に立って社員を育成しようとする能力開発主義化を同時に追求。


第II部  中小企業労働福祉推進会議における議論の概要
      −情報関連産業の雇用・労働問題に関して今後構ずべき対策の方向−

      推進会議での参集者の意見交換が行われた結果、以下のような指摘をする意見が多かった。
      政府及びこの産業の労使を含めた関係者は、次のような方向で対策を総じていくべきである。


第1 職業能力開発

  情報サービス産業は転職が多く、教育訓練投資の回収が困難であるが、一方で、良質の労働力を確保するためには、教育訓練が必要。そこで次の2つの方向での施策の推進が重要。

  1. 教育訓練投資の効果分析、国際比較等の公的調査の充実と結果の普及
      情報関連産業における教育訓練投資について、政府又は政府関係機関において、調査分析・国際比較が行われ、その結果が公表され、個別の情報技術関連企業において労使が教育訓練について検討する際の目安とされることが重要。

  2. 公的職業能力開発等公的援助の拡充
      政府は企業及び技術者のニーズに対応した公的職業能力開発関係施策の充実、能力開発のための公的援助制度の充実を図るべき。その場合、能力開発を行う場所(都心など)、時間帯(夜間など)に対する工夫が必要。また、30歳台後半以降の教育訓練の在り方について、中小企業団体への助成金制度も活用しながら検討及び対策を進めることも必要。


第2 職業資格

  情報技術分野での職業資格は、技術者の処遇の客観性の確保、労働市場におけるミスマッチ解消などに有効なものとなる。技術革新の著しい分野での職業資格の在り方について、今後、研究が推進されるべき。産業横断的な職業資格と個別労働者の処遇との関係についての関係労使による合意形成のための努力も重要。


第3 賃金決定

  情報関連技術者の賃金を決定する際に、コンピュータ・メーカーの「単価表」がある場合であっても、下請重層構造の中では、末端企業の受注額が低く抑えられ、その結果賃金が低く押さえられるという指摘もあり、この問題については更に調査分析が必要。   これらの観点から、情報関連技術者の貸金決定について、労使自治の範囲内において、労使共同の調査研究、それに基づく話合いによって一定の合意形成を図ることも有効。

第4 求人・求職情報の提供の在り方

  1. 共通指標の合意形成
      上記第2で述べた職業資格の他、情報関連技術者の労働市場が機能するため「どういう分野でどのような能力を有するか」等についての共通の指標についての関係者の合意形成が望まれる。
      また、創造性が必要とされる分野については、いわゆるキャリアシートの活用を通じて技術者の能力を的確に把握することが望まれる。


  2. 求人・求職情報の提供の方法
      インターネットを通じて技術者の求人・求職情報を提供、技術者の求人・求職情報の提供量の増加というニーズに対応するため、官民の労働力需給調整機関の連携の強化を図り、経済団体、民間職業紹介事業者、民間求人情報提供事業者、公共職業安定所等が保有する求人・求職情報をインターネットを利用して一覧し、検索できるシステムを構築することも有効。


第5 就業形態に応じた環境整備

  1. 就業形態の多様性に応じた環境整備
      情報関連技術者は勤務時間、勤務場所の弾力化を望んでいるので、必要に応じ、技術者が働きやすい労働環境を形成するための国の施策を業界団体と連携して更に推進することが必要。なお、特に労働条件が厳しいと予想される小規模事業所の情報関連技術者の労働実態を明確にするため、今後この分野での調査も求められる。

  2. 労働時間・健康管理   情報関連技術者の長時間勤務に対する懸念があり、労使間でなお一層の労働時間短縮の取り組みが必要。また、精神的ストレスなどによる健康面への悪影響についての調査も重要。


第6 福利厚生等

  1. 福利厚生
      同一業種内の転職が多い情報関連産業の特色を活かし、同種の企業同士による福利厚生の協同化の積極的推進が有効。いわゆるカフェテリア方式の導入も有効。

  2. 退職金
      企業も技術者も、退職金制度の存続を望んでいる。技術者の転職が活発な情報関連産業においては、ポータビリティーのある中小企業退職金共済制度を活用することが有効。



 
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