「歴史的接戦を制した与党左派連合が引き続き政権維持の見通し/ドイツ」
9月22日、ドイツ連邦議会(下院)選挙が行われ、即日開票の結果、歴史的接戦の末、シュレーダー現首相の率いる与党の社会民主党(SPD)と緑の党による与党連合が過半数をわずかに上回る306議席を確保した。最大野党である保守系のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)はSPDと肩を並べる接戦を演じたが、連立相手の自由民主党(FDP)の伸び悩みにより政権奪回は果たせなかった。この結果、与党左派連合が引き続き政権を担当する見通しである。
前週のスウェーデンの総選挙に続き左派勢力が勝利を収めたことにより、欧州で続いた保守派勢力への回帰現象が一段落したことを鮮明に印象付ける結果ともなった。
<それぞれの連合内第2党の明暗が結果を左右>
9月22日に実施されたドイツ連邦議会選挙は、即日開票当初、与野党伯仲の一進一退を繰り返し、趨勢の判明は23日未明にずれ込むという歴史的大接戦となった。最終的には、与党連合、野党連合のそれぞれ第
1党である社会民主党(SPD)とキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)共に38.5%の得票率で並ぶという大接戦であったが、それぞれの陣営の第2党である緑の党と自由民主党(FDP)の明暗が最終結果に反映する形となった。
緑の党は国民的人気のあるフィッシャー外相を選挙戦の前面に押し出し、過去最高の8.6%を獲得し、第3党に踊り出たのに対して、FDPは、メレマン副党首の反ユダヤ主義的な言動が響いて伸び悩んだ。この結果、与党左派連合(SPD、緑の党)は過半数を
4議席上回る306議席を獲得した一方、CDU/CSUは中道野党のFDPと連立を組んでも(FDPは選挙戦において選挙後の連立相手を明らかにせず自前の首相候補を擁立して選挙戦を戦っていた)295議席にしか達しない。当初、それぞれの陣営の大及び中政党の
2党だけで過半数を制しきれない場合には、SPDとCDU/CSUの二大政党の大連立の可能性もあると取り沙汰されていたが、与党左派連合がかろうじて過半数を制したことから,引き続き政権を担当する可能性が極めて高くなった。緑の党フィッシャー外相も、23日未明シュレーダー首相と短い会談を行い、連立政権の継続を表明している。
前週のスウェーデンの総選挙に続き左派勢力が勝利を収めたことにより、欧州で続いた保守派勢力への回帰現象が一段落したことを鮮明に印象付ける結果ともなった。
なお、旧東ドイツの支配政党であった社会主義統一党の流れを継ぐ民主社会党(PDS)は、同等の看板的存在であったギジ前党首の議員特権濫用が発覚したことで求心力を失い、得票率、議席を大幅に減らし、
2議席に留まった。これにより、同党は下院進出に必要な「5%条項」を満たさなかったことにより、獲得した2議席は確保できるものの、無所属扱いとなり、議員立法件や発議権が制限されることとなる。
中央選挙管理委員会の暫定公式結果(23日未明発表)によれば、主要各政党の獲得議席数及び最終得票率等は以下のとおりである。
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社会民主党(SPD) |
251議席 |
(38.5%) |
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キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU) |
248議席 |
(38.5%)
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| 緑の党 |
55議席 |
( 8.6%) |
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自由民主党(FDP) |
47議席 |
( 7.4%) |
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民主社会党(PDS) |
2議席 |
(
4.0%) |
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| 最終確定議席数 |
603議席 |
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(超過議席(注)を含むため基本定数の598を5議席超過している) |
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| 投票率 |
79.1%(前回を3.1ポイント下回る) |
<雇用対策では失敗するも洪水対策で挽回>
最大与党のSPDとシュレーダー首相は、4年前に政権に就いた際に「任期中に失業者を350万人以下に減らす」との公約を掲げたが、総選挙直近の調査では400万人を超える失業者を抱え、公約達成には程遠い状態であった。この鬼門たる雇用失業対策の切り札として期待したのが、ハルツ委員会による「
3年間で失業者を200万人に半減」するための対策パッケージであったが、その内容については評価する向きもあるものの、到底失業者を半減できる内容のものではないとの強い批判を浴びることとなった
。
このように雇用対策を中心に失点を重ね、支持率低迷を救ったのが、8月の中南部ドイツの洪水であった。すぐに現地視察に赴き、急遽緊急対策を発表するなど危機管理に強い指導者とのイメージの植付けに成功した。また、米国のイラク攻撃の可能性を巡る問題においては、
8月時点でドイツ国防軍の参加を全面的に否定し、米国と一線を画する姿勢を明確に打ち出したことなども功を奏して、一時期低迷していた支持率を回復し、総選挙直前には、SPDの支持率はCDU/CSUに追いつき、また追い抜いたとする世論調査結果が報じられるまでになっていた。
一方のCDU/CSUは、首相候補としてシュトイバー・バイエルン州首相(CSU)を擁立し、政権奪回に努めたが、減税プランや財政運営の点で明確かつ信頼度のあるビジョンを出すことが出来ず、また、テレビ討論でもシュレーダー首相の巧みな弁舌を際立たせてしまうなど、イメージ戦略でも大きく遅れをとったことが響き、一時期は確実視されていた政権奪回に失敗した。
<今後の課題は経済・雇用対策、財政問題、及び米国との関係修復> SPDと緑の党の2党の連立内閣が発足する可能性が極めて高いが、その場合、議席を増やした緑の党が閣僚ポストを現在の3人から4人へと増員するよう求める公算が高い。現時点では、緑の党のフィッシャー外相、トリッティン環境相、SPDのアイヒェル蔵相、シリー内相などの主要閣僚は留任するとの見通しが強い。
新政権が2党連立となった場合、僅差の過半数を維持しているに過ぎないため、厳しい国会運営を強いられる。その新政権が直面している課題には、弱含みの経済に対する景気対策や雇用対策はもちろんのこと、EMUの財政規律条項にも抵触しかねない財政運営や健康保険の赤字問題、さらには、イラク問題で悪化した米国との関係修復などがある。特に、選挙前と手のひらを返したように早期に米国との関係修復に向かった場合、国民の支持を一気に失う可能性もあり、慎重な舵取りが要求される。到底実行可能とは思えない3年以内の失業者半減の公約も含め、新政権は厳しい十字架を背負っての船出となる。
(注)
ドイツ下院の選挙制度は、299の小選挙区と州ごとの16の比例代表区を組み合わせた併用制(基本定数は598)とな
っている。有権者は2票投票する2票制であり、1票は小選挙区候補者へ投じられ、299の小選挙区で当選者が決定
される。もう1票は全国レベルで政党に投じられるが、この投票による各党の得票率に基づき、比例配分の原則(ドント
式ではなくヘア・ニーマイヤー方式を採用)により下院の全議席数(小選挙区分も含む)に対して各党の議席配分数が
各州ごとに決定される。各党は、その数から小選挙区当選者を引いた数を比例代表議席として獲得することとなる
が、各党の獲得総議席数は州ごとに決定されるので、場合によっては当該州における小選挙区での当選者数が当該
州での獲得議席数を上回る事態が生ずることとなる。その場合には、超過分は「超過議席」として認められることとな
るので、その分基本定数を上回る議席が認められる。このため、今回のように得票率が同率の政党でも配分議席が
異なるというケースが生ずることとなる。
(参考)Financial
Times、FBCドイツ経済ニュース、時事通信等
(林雅彦・JETROパリセンター/JIL欧州事務所長)
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