人事労務管理事例
 
育児・看護休業制度 (株)さいか屋
 
1.ポイント

  • 株式会社さいか屋の育児休業制度は、女子社員の採用難対策として育児休職期間は最長2年間で、育児短縮勤務は最長で妊娠3ヶ月から小学校就学後の1年間まで取得可能である。育児短縮勤務は4タイプの短縮勤務時間帯から選択する。

  • 看護休業制度は、社長や幹部社員の看護の実体験に裏打ちされ、先行的に充実させてきた。看護休職期間は最長1年間で、看護勤務は最長で2年間まで取得可能である。看護勤務も4タイプの短縮勤務時間帯から選択する。

  • 育児休業制度、看護休業制度を支援するしくみとして、さいか屋独自の有給休暇の復活制度がある。


2.制度導入の背景

  株式会社さいか屋は、川崎市に本店を置き、東京都西部から神奈川県にかけての首都圏南部地域に4店舗を構える百貨店の老舗である。売場での販売の主力となる女性社員を主に地元の高校から募集してきたこと、通勤の便のよい比較的狭い地域に店舗展開しているため職場・所属が変わっても転居しないで済むことなどから、男性社員、女性社員とも親元から通う地元家庭の子女や結婚後も地元に自宅をもつ社員が多く定着率がきわめて高い。社員の男女構成比はほぼ半々で、平均年齢は全社で37歳、男性45歳、女性30歳である。
  高度成長期には社内結婚が盛んになり、このころから結婚後も働く女性社員が増え始めた。地元にいる親や家族の手を借りながら出産後も働きつづけたい女性社員がふえたことや、バブル初期に若年労働力の不足が顕在化し、接客・販売という労働集約型の業態である百貨店にとって、出産後も働きつづけられる環境を整えることが若年労働力を確保する必要条件となったことから、育児休業制度の必要性が認識され、育児休職や育児短縮勤務の導入につながった。
  また看護休業制度については、幹部社員が家族の末期看護をするために長期休職した実体験から経営・管理層に看護(介護)の重要さ、困難さが深く理解され、社員の看護(介護)を支援する看護休業制度の実現を後押しした。さらに社長自身が母親の看病した経験が「有給休暇の復活」制度を促進した。
  このような背景から、1991年に育児休職制度と育児短縮勤務、ならびに看護休職制度と看護勤務を導入した。


3.制度概要

  1. 育児休業制度
      さいか屋の育児休業制度には「育児休職」と「育児短縮勤務」がある(図表1)
      「育児休職」は、取得の1ヶ月前までに本人が申請することにより、(1)適用開始日現在で勤続1年以上であり、(2)休職期間満了後も引き続き勤務する意志のある社員が、(3)生後1年以内の実子または養子を育てるために休職する制度である。休職期間は原則としてその子が1歳になるまでを限度とするが、事情によっては更に1年以内の延長ができ、最長2年間の育児休職を可能としている。
      育児休職期間中は、給料は無給、賞与も無給(但し、支給対象期間中勤務した場合は支給)である。休職期間は退職金算定には通算しないが、年次有給休暇算定には通算する。また社会保険は保険料を国あるいは会社が負担して継続する。
      1991年に制度が発足して以来の利用者数は24人で、全員が女性であった(制度上は女性に限定していない)。毎年の利用者は2〜3人である。利用者の適用開始時年齢は27歳(5名)、29歳(4名)、25歳(3名)と20歳台後半が半数を占める。休職月数は9ヶ月〜12ヶ月が多く、その中で10ヶ月が最多である。産休と合わせ休職期間が1年を超えた者が3分の2を占める。出産する社員のほとんどは育児休職制度を利用している。約6割が復職し、原則として原職に復帰している。

      「育児短縮勤務」は、取得の1ヶ前までに本人が申請することにより、(1)適用開始日現在で勤続1年以上の社員であり、(2)小学校就学前の実子または養子を育てる者、あるいは妊娠3ヶ月以上である者(医師の証明書は必要)が、その子の育児のために勤務時間を短縮して勤務する制度である。育児短縮勤務を実施する期間は、その子が小学校に入学するまでを限度とする。
      育児短縮勤務の勤務時間帯には、いずれも労働時間を通常より3時間短縮して実働5時間とした4タイプ、(1)9:45〜15:30(休憩45分)、(2)11:00〜16:45(休憩45分)、(3)12:00〜17:45(休憩45分)、(4)13:40〜19:00(休憩20分)があり、このうちから1種を選択する。実働時間を守れるよう、勤務部署を売場から後方の事務部門に替える場合もある。
      育児短縮勤務の給料は、基本給を時間給に換算し実働時間分の時間給で支払う。役付手当は支給されない。賞与は支払った給料をもとに算出する。育児短縮勤務期間は退職金算定には70%通算する(通常勤務者と短縮勤務者の実働時間比がほぼ1.0:0.7であることに基づく)。年次有給休暇算定には通常勤務者の場合と同様、100%通算する。また、社会保険は通常勤務者と同じ条件で継続する。
      1991年の制度発足以来の利用者数は8人であるが、今後、育児短縮勤務は増加していくものと予想される。

  2. 看護休業制度
      さいか屋の看護休業制度には「看護休職」と「看護勤務」がある(図表2)
      「看護休職」は、取得の2週間前までに本人が申請することにより(育児休業の場合より短時間で申請受理手続きを行う)、(1)適用開始日現在勤続1年以上で、(2)休職期間満了後も引き続き勤務する意志のある社員が、(3)2親等以内の親族を長期間看護(介護)するため休職する制度である。「親族」が社員と同居しているか否かあるいは社員の被扶養者であるか否かにといったことは休暇取得の条件にしていない。「2親等以内」であるから、看護を受ける者は、社員の配偶者か、社員または配偶者の親・子・祖父母・兄弟姉妹あるいは孫の範囲である。休職期間は原則として連続した3ヶ月以内を限度とするが、事情により更に9ヶ月以内の延長ができ、最長1年間の看護休職が可能である。
      看護休職期間中の賃金、勤務期間算定は育児休職と同じである(給料・賞与は無給。休職期間は退職金算定には通算しないが、年次有給休暇算定には通算する)。また社会保険は個人負担分を会社が立て替えて継続し、その社員が復職後1年以上勤務すれば会社立替分の返済は免除される。
      1991年の制度発足以来、利用者数は2人である。

      「看護勤務」は、取得の2週間前までに本人が申請することにより、(1)適用開始日現在勤続1年以上の社員が、(2)2親等以内の親族を長期間看護するため勤務時間を短縮して勤務する制度である。看護勤務を実施する期間は原則として本人の申し出た1年以内の期間を限度とするが、事情により更に1年以内の延長ができ、最長で2年間の看護勤務が可能である。
      看護勤務の勤務時間帯には、育児短縮勤務の場合と同じ4タイプがあり、このうちから1種を選択する。賃金、勤務期間算定の方式も育児短縮勤務と同じである。給料は基本給を時間給換算し、実働時間分の時間給で支払う。役付手当は支給されない。賞与は支払った給料をもとに算出する。短縮勤務期間は退職金算定には70%算入し,年次有給休暇算定には通常勤務者の場合と同様、100%算入する。
      また社会保険は通常勤務者と同じ条件で継続する。
      1991年の制度発足以来、未だ利用実績はない。

  3. 有給休暇の復活利用
      「有給休暇の復活」はさいか屋独自の制度である(図表3)
      これは、(1)勤続5年以上の社員が、(2)自分の病気やけがの療養、または2親等以内の親族を介護するため、(3)すでに請求権を失った年次有給休暇(直近2年間分)の残余日数から療養または介護に必要な日数を復活し、改めて有給休暇として付与する制度である。
      試算によれば、勤続6年の者で、復活分と合わせて最大80日の休暇が得られ、これに定休(月8日)を合わせれば、約3ヶ月の連続した休暇をとることができる計算になる。
      百貨店業界では有給休暇の計画的取得が難しいため、これに変わる手段として考えられた。実際にも、病気の長期療養の際に利用することが多い。


4.制度導入の過程

  1991年に育児休業制度と看護休業制度を導入し、その後1997年介護休業法の制定に伴い、看護休職制度を見なおした。(有給休暇の復活制度はこれより以前1998年から導入している。)


5.課題

  近年の厳しい経営環境の中では、育児休職、看護休職の代替要員を補充する余裕がないこと。


6.今後の展開

  さいか屋には、高度経済成長期の女性社員の採用難に対処するため、1978年以来実施してきた「再雇用制度」もあり、現在約50人を登録しているが、繁忙期のスポット的な雇用はあるものの、現下の経営環境では採用を抑制せざるを得ず継続雇用には至っていない。再雇用制度を活性化するとともに、休職者の代替要員を補充するなど、育児休業、看護(介護)休業制度を更に利用し安い環境を築いていくことが求められる。


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