チーム制
ミスミのチーム制は、事業ごとにチームを編成する1事業1チーム制をとっている。チームに関連するポジションには「ユニットリーダー」、「チームリーダー」および「チームメンバー」の3つがある(図表1)。ユニットリーダーは事業全体の統括者、チームリーダーは実行組織であるチームの主管者、チームメンバーは実務担当者である。 事業と実行チームは毎年、新規に検討・構成する(図表2)。
チームを編成する手続は、まず、幹部社員が次年度の事業企画を、取締役や監査役が参加する経営戦略会議に提案し、事業のビジョン、フレームワーク等をプレゼンテーションする。複数の事業企画が類似あるいは重複した場合などは当然、提案者同士のコンペティションになる。この会議で提案が通れば、提案者自らが事業担当の「ユニットリーダー」となる。1人の役員は一般的には複数の事業のユニットリーダーになる。事業提案を行う幹部社員の役職は取締役であることが多いが、提案者を取締役等の役員に限定しているわけではない。役員でない社員の中からも、経営戦略会議への事業提案を行って承認されユニットリーダーとなった者がでている。
次いで、ユニットリーダーは承認された事業計画を社内で公表(プレゼンテーション)し、チームリーダーを公募する。これに応募するチームリーダー候補者は、公表された事業計画をもとに独自の実行計画を作成し、ユニットリーダーおよび社員の前でプレゼンテーションし、ユニットリーダーが「チームリーダー」を選出する。
最後に、選出されたチームリーダーがチームメンバーの公募にとりかかる。社員は、事業計画のプレゼンテーションおよび実行計画のプレゼンテーションの情報をもとに自分の希望によって応募する。チームリーダーが応募者の中から「チームメンバー」を選出して、チーム組織が最終的に編成される。
すべてのチームは1年限り(毎年、4月から翌年3月)である。事業が継続する場合でも年度末にはチームは解散し、新年度は新チームを編成する。事業年度ごとに公募による新チームの編成を繰り返すのは、業績評価を明確にし、また組織の固定化を避けるためである。
チームリーダー、チームメンバーの公募は応募者を社内に限定していないので、社外の人間でも応募できる。実際に社外からチームリーダーに立候補し、前年度のチームリーダーとプレゼンテーションを競い合い、結果として新たにチームリーダーとなって入社した者がいる。
なお、上記のようにチーム制の要員は社員に限定されていないが、本稿の説明では便宜的に「社員」を使用している。
現在、6人のユニットリーダーのもとに、26チームが活動している。その中には新規事業もある。
新規参入分野では3年程度で単年度黒字達成を目標としているが、実際にはもう少し、5年ほどかかることが多い。チーム制の金銭処遇は年俸制とチームの業績に応じた利益配分制がある。赤字の場合には利益配分ゼロとなるので、年度成績を挙げることが簡単ではない新規事業チームのメンバーには厳しい面がある。その分、単年度黒字を達成した場合のボーナスを定めてあり、このようなメンバーのインセンティブとなっている。それだけではなく、新事業立上げに主体的に参画できることは自己のキャリアを積むよいチャンスであるので、新規事業のチームの希望者は多い。
「企業家型人材は育てるのではなく、自ら育つものだ」と言う共通認識があり、会社から社内教育研修などは一切あてがわない(自己申告により、チームに必要な社外研修等へ参加することはある)。「自由と自己責任」を基本理念として、会社は目的意識を持った、自ら育つ気のある人に活躍する場を提供するので、それを自ら活用していくという考え方である。このため面接・筆記などの方法による一般的な新卒採用は行わず、ミスミに興味を持つ大学生には夏休みにチームに参加してもらうサマージョブ制をとっている。サマージョブでの実務体験に基づいてミスミの仕事の進め方に納得できた人を採用している。これは同時に、チームタスクに必要な人材を集めるのに社内・社外を区別しないということでもある。個人の労働市場における実力を評価し「マーケットバリュー(市場相場価値)」の概念に基づいた年俸制を適用しているため、入社希望者には即戦力を備えている中途採用者が多い。中途採用10に対し新卒採用はほぼ2、といった採用実績である。