人事労務管理事例
 
社内カンパニー制度 (株)博報堂
 
1.ポイント

  •   株式会社博報堂は1998年12月に社内カンパニー制度を導入し、広告カンパニー(4)、メディアカンパニー(1)、事業カンパニー(1)の計6つの社内カンパニーを設立した。さらに、1999年6月にはインタラクティブカンパニー(1)を設立した。

  •   同社では、1つの部門が競争関係にある複数の得意先を同時に担当しないよう、担当部門ごとに得意先を分担する対応を行ってきた。社内カンパニーはこのような業態にあった制度と言える。


2.制度導入の背景

  株式会社博報堂は従来から「パートナー主義」を掲げ、得意先企業のマーケティングからマメージメントまでの幅広い課題に対応できる総合広告会社として、業務領域・サービス領域の拡大を図ってきた。近年、社会のグローバル化・デジタル化に伴って得意先企業のニーズもより複雑化し、今まで以上に迅速かつ高度な対応が求められるようになった。このような環境変化の中で、パートナー主義をさらに進化拡大し、質の高いサービスをスピーディに提供していくためには、組織体制においてもこれまで以上に戦略性・独立性を高めることが必要と判断した。
  そこで、経営資源の戦略的配分を推し進めること、迅速な意思決定による得意先への対応のスピードアップを図ること、を目指して社内カンパニー制を導入することとした。導入に当たっては社内カンパニーへの大幅な権限委譲を行い、それぞれの社内カンパニーが担当する事業・商品領域について各カンパニーが独自の戦略的対応を展開できるしくみとした。


3.制度概要

博報堂の社内カンパニーは現在、4種7カンパニーから構成されている(図表1)

  1. 広告カンパニー
      第一広告カンパニーから第四広告カンパニーまでの4つの広告カンパニーがある。各広告カンパニーには、得意先との対応窓口である「営業局」、得意先のマーケティングおよびマネージメント領域の問題発見から課題解決に至るまでの戦略を統合的に立案・遂行する機能を担う「MD局」(マーケットデザイン局)、およびカンパニー全般の戦略立案・推進と管理機能をもつ「計画管理室」がある。営業局はそれぞれ4局ないし5局あるが、それ以外はカンパニーに1局・室ずつである。各広告カンパニーは担当する得意先が異なるものの、部門構成は類似しており、機能もほぼ同じである。得意先の担当分けにより、各広告カンパニーは自分の得意先とのパートナー主義に基づいた独自のサービスを実現することができる。

  2. メディアカンパニー
      メディアカンパニーは博報堂のマスメディア対応窓口を一本化したもので、同社の人材・ノウハウを集中させることによって、マスメディアからの仕入力およびメディアプラニング力の強化を図り、さらに衛星・インターネットに代表されるデジタル技術に基づくメディアの多様化・多チャンネル化等、メディア環境変化への対応力の向上を目指す。メディアカンパニーにはカンパニー全般の戦略立案・推進と管理機能をもつ「メディア計画管理室」のほかに、担当媒体別に「新聞局」「雑誌局」「テレビ局」「ラジオ局」「マルチチャンネル局」といった局を設けている。さらに効果的なメディアプラニング力ならびにメディア関係の企画力の強化を推進する「メディアマーケティング局」や電子送稿、取引EDIなど、デジタル化によるメディアビジネス環境変化への業務対応を推進する「デジタルデザイン室」が設置されている。

  3. 事業カンパニー
      事業カンパニーはスポーツ、文化イベント、コンベンション、スペースデザイン、地域開発などの事業領域についての人材・ノウハウを一本化したもので、それぞれの事業領域の仕入・開発・販売機能の強化を図る。「計画管理室」のほかに、事業の種類別に「コンベンション・文化事業局」「スペースデザイン事業局」「スポーツ事業局」の3局を設けている。

  4. インタラクティブカンパニー
      インタラクティブカンパニーは博報堂内のインタラクティブ面の課題対応機能を集約したもので、新しいインタラクティブビジネスに対応する。インタラクティブカンパニーは「インタラクティブ局」1局だけの構成である。

  広告カンパニーとその他の社内カンパニーでは役割が異なっている(図表2)
  第一から第四の広告カンパニーはそれぞれの得意先を個別に担当するのに対し、メディアカンパニー、事業カンパニー、インタラクティブカンパニーはそれぞれの業務領域を一括して担当する。従って、得意先からの依頼に基づいて、各広告カンパニーとメディアカンパニー、事業カンパニーあるいはインタラクティブカンパニーとは相互に依頼・協力関係を持つのに対し、広告カンパニー同士は得意先とのパートナー主義を深めるほど競争的な関係に立つこととなる。
  社内カンパニー制度の最大の特長はデシジョンの迅速化に代表されるフットワークのよさである。各社内カンパニーはそれぞれ1、2フロアを占め、打合せ・会議等はまとまったカンパニー区域内で行うことができる。カンパニー長を初め社内カンパニーの役職者はそれぞれのカンパニー区画内に在席する。ほぼ全ての業務判断は社内カンパニー内部で決裁できるしくみとしたので、あたかも独立の会社のように業務処理が完結する。これにより単に効率性向上にとどまらず、今後、それぞれが得意先との間でパートナー主義を徹底し、得意先固有のニーズにきめ細かく対応できるようになる。
  社内カンパニー制の導入にあたっては、カンパニー長に現場業務のほぼ全ての事項について決裁する権限を委譲した。社員の業績評価や賞与配分額についてもカンパニー長の決裁権限を大幅に拡大した。会計制度面では社内コストは直接費(人件費等)間接費(本部経費等)をそれぞれの社内カンパニーに割り振ることとし、組織ごとの成果を利益で把握できるようにしている。


4.制度導入の過程

  広告代理業は得意先のマーケティングに関わる重要事項を知り得る可能性の高い業態であるため、同一業種の複数の得意先はそれぞれ異なった部門が担当する慣行がある。博報堂では、1960年代ころから40年来、AE制(アカウントエグゼクティブ制)と言う名称で、社内を3、4ブロックに分けてそれぞれが固有の得意先を担当し、ブロック相互に業績を競い合う業務形態が採られて来た。
  得意先とのパートナー主義をさらに進化拡大し、質の高いサービスをスピーディーに提供して行くため、1998年12月から社内カンパニー制度を導入し、4つの広告カンパニーと、メディアカンパニー、事業カンパニーを新設した。1999年6月にはインタラクティブカンパニーを設立した。
  このほか、社内カンパニーの名称は付していないが、EBU(エンタテインメント・ビジネス・ユニット)、MDU(マーケット・デザイン・ユニット)はそれぞれ社内カンパニーに類似した独立的な業務運営を実施している。博報堂では取引先対応部門全体に渡って「自立的・自律的な」業務形態が採用されている。


5.課題

  広告代理業の業態は社内カンパニー制の考え方に適した面があるので、社内的にもむしろ進んで受け入れられた。現在、導入後1年経ったところであり、今後、社内カンパニー制度の運用の一層の積極化を進めていく。


6.今後の展開

  社内カンパニー制度の根底の考え方はすでに社内に浸透しているので、運用の一層の積極化はさほど問題なく進行すると思われる。今後は、社内カンパニー制度がより戦略的な役割を果たせるような機能を強化する方向での検討を進めていく。


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