日本労働研究機構
 
労政審分科会/解雇ルールを法制化へ 有期雇用、裁量制の見直しも

 厚生労働省は3日、労働政策審議会労働条件分科会(分科会長=西村健一郎・京都大学教授)に「解雇ルール」の法制化などを盛り込んだ「今後の労働条件に係る制度の在り方について(報告案)」を提示、労働基準法改正の中身を初めて明らかにした。不当な解雇は無効と労基法に明記することや、解雇無効の場合の金銭解決の請求を認めること、有期雇用の契約期間の上限延長、企画業務型裁量労働制の手続きの簡素化などが主な内容だ。同分科会では年内に報告をまとめ、改正案は次期通常国会に提出される見込みだ。

法改正の中身明らかに

 報告案では「使用者が正当な理由がなく行った解雇は、その権利の濫用として、無効とする」ことを労基法で規定する方針を固めた。

 「客観的に合理的な理由や社会通念上相当な理由があるもの以外は無効」とする1975年の日本食塩製造事件の最高裁判決に沿った形だ。ただし正当な理由の中身については明示せず、現行どおり個々の裁判所の判断にゆだねる。

 今回の案では、「整理解雇の4要件」の法制化については、最高裁判例ではないため、触れていない。

 また、解雇無効の場合、原職復帰だけでなく、労使双方の申し出による金銭解決も可能とする規定を労基法に盛り込む案も提示した。長期化しがちな解雇事件で、人間関係が壊れ、職場に戻れないケースに対応するためだ。

 これにより、裁判所は、解雇無効の場合、労使双方の申立てに基づき、雇用関係を継続しがたい自由があるなどの一定の要件のもとで、労働契約を終了させ、労働者に一定の額の金銭の支払いを、使用者に命じることができる。「雇用関係を継続しがたい事由」を条文に明記して、整理解雇などで、金銭を支払うだけでは解雇できないよう歯止めをかける形だ。

 「一定の金銭の額」について報告案では、「労働者の勤続年数その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額」とするなど、同分科会で今後検討する予定だ。そのため、施行時期はずれ込む見込みだ。

 その他、現行の退職時証明に加え、解雇を予告された労働者は解雇を予告された日から退職の日までの間に、使用者に対して解雇の理由を記載した文書の交付を請求できる規定も労基法に設ける。退職時証明は、退職した後に使用者に解雇理由などを請求できる内容。改正されれば、雇用関係が続いている、解雇の予告の日から請求ができる。

 労働契約内容の明確化では、就業規則の絶対的必要記載事項である「退職に関する事項」について、「解雇の事由」が含まれることも盛り込んだ。労働契約の締結時の書面の交付により明 示すべき労働条件でも、「退職に関する事項」のなかに「解雇の事由」が含まれることも明らかにする。

 有期労働契約の期間の上限については、現行の原則1年以内を3年に延長し、公認会計士や医師など高度な知識、技術を持つ専門職や満60歳以上の高齢者に対する特例措置についても、現行3年以内を5年に引き 上げることを求めた。

 また、締結、更新・雇止めに関する基準を定めること(大臣告示)ができるよう根拠規定を労基法上に設けることも盛り込む。一定期間(1年)以上解雇された有期契約労働者を契約更新しない場合は、30日前に予告する ことなどを定める予定だ。

 企画業務型裁量労働制の導入、運用での手続きについても簡略化する。企画業務型の裁量労働制を導入する場合には労使委員会の決議が必要だが、その要件に煩雑さが指摘されていた。

 具体的な改正は、(1)労使委員会が決議を行うための委員の合意を、現行の全員合意から、委員の5分の4以上の合意に緩和(2)労働組合などから指名された労働者代表委員が改めて労働者の過半数の信任投票を得なければならない 要件の廃止(3)労使委員会の設置について労働基準監督署への届け出要件の廃止(4)健康・福祉確保措置の実施状況の労働基準監督署への報告を簡素化(5)労使委員会の決議の有効期間にかかわる暫定措置(有効期間の限度1年)の廃止――の5つ。

 また、導入の対象事業場については、現行の本社や地方ブロック支社など、「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」に限定する要件を廃止する。対象業務に対する見直しは今回盛り込んでいない。

 専門業務型裁量労働制についても、企画業務型と同様に、健康・福祉確保措置や苦情処理措置の導入を盛り込む。厚労省の調査で、専門業務型の裁量労働をしている労働者に、健康上の不安を感じている人が多いためだ。報告案では、裁量労働制で、働きすぎで健康が損なわれないよう、産業医などの助言・指導を受けさせることも必要とした。

 なお、同分科会で懸案の1つだった、裁量性の高いホワイトカラーでの労働時間規制の適用除外については、米国のホワイトカラー・イグゼンプションなどについて実態調査した上で今後検討するとしている。

 厚労省では、改正案を次期通常国会に提出する予定で、2003年度中の施行を予定している。しかし、解雇の金銭解決は、「一定の金銭の額」の定め方について検討を要すため、2004年度中の施行にずれ込む見込みだ。

12月9日(月)『週刊労働ニュース』

 
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