成果主義の新しい展開/富士通の取り組み
新評価制度をスタート/高レベルの目標に挑戦
業務遂行のプロセス重視/BUにおけるカスタマイズも
新しい人事制度を導入し、それを組織に浸透させるためには何が必要なのか。1993年以降、成果主義に基づくさまざまな人事制度を導入し、それらを組織に息づかせるために努力を重ねてきた富士通の最近の取り組みを取材した。
富士通は2001年度から、社員のチャレンジ精神を一層支援するために、新しい評価制度をスタートさせた。
「富士通の成果主義の柱となっているのは、当社に脈々と受け継がれてきたチャレンジ精神、すなわち、全社員が一丸となって高い目標に挑戦する意識です」と、同社人事労政部の高山課長は語る。また、「そうした意識を組織に浸透させるために、93年以降に導入してきた一連の成果主義に基づく人事制度に、運用で問題が生じれば常に改良を加えてきました。今回もそうした改良の一つです」とも話す。
一方、人事勤労部企画グループの市田氏は「従来の制度では、目標管理制度の運用において、クリアしやすい目標を立てて、それを達成すれば良しとする雰囲気や、目標に掲げた業務だけにまい進する傾向が一部に見られました。もちろん、挑戦的な目標を設定したり、業務遂行におけるプロセスを重視したりする視点は盛り込まれたのですが、目標の達成を過度に意識するあまり、そのような現象が生じていました」と説明する。
同社の評価制度は、上位からSA、A、B、Cの4段階評価を実施しているが、制度導入当初は、各評価の分布が全社一律になるように調整されていた(図表1)。さらに、全員のパフォーマンスを向上させるために、「目標を達成すればA評価」となる評価基準に改定したため、目標を達成することにとらわれて、より高い目標にチャレンジする精神や、社員が相互に協力して社会業績に貢献する姿勢が希薄になるおそれが生じていた。新しい評価制度は、そうした現象が一般化する前に、対策を講じたものである。

新評価制度
新評価制度は、(1)高いレベルの目標への挑戦(2)業務遂行におけるプロセスの重視(3)ビジネスユニット(事業部に相当。以下BU)ごとのカスタマイズ――の3点を主眼に据えており、賃金制度の変更は伴わない。
第一の「高いレベルの目標への挑戦」に関しては、期初に設定する目標を、よりチャレンジングにするために、他部門や他社とベンチマークできる目標とできない目標とに分ける。ベンチマーク可能な目標に関しては、原則として達成するとSA評価となる目標を設定する。一方、ベンチマークが不可能な目標に関しては、目標設定を行う社員にとって、とにかく挑戦的な目標を立てるようにした。
第二の「業務遂行時におけるプロセスの重視」に関しては、成績評価において、目標に関する成果の高さをベースに(1)マーケットや職場に対する影響力(2)業務遂行のプロセス(3)副次的な成果――の3点を1次、2次評価、評価委員会と多段階に、期中のマーケット環境や会社の状況変化を踏まえ比較検討して評価することとした。また、社員の行動様式(部下の指導、隙間業務への対応、他部門への支援など)も勘案するとしている。
第三の「BUごとのカスタマイズ」に関しては、従来の全社一律の制度運用ではなく、BUごとに運用を柔軟に変えられる仕組みとした。例えば、各BUは独自に、成績分布の役割を目安として設定したり、重視するプロセスをBUごとに例示することができる。この取り組みのねらいは、事業部によって特性・職種が大きく異なるため、各BUにおいて最適な運用となるよう独自の運用を行うということである。

上位等級職責任担えるか/中長期的な視点で判断
さらに、社員の等級昇級(昇格)に際しては、上位等級の職責を担えるコンテンピシーを有しているかを中長期的な視点で判断するために、コンテンピシー・レビューが実施される。(図表2)。
これは、高い目標に果敢にチャレンジし、十分な成果が出なかったが、上位等級の職責を担えるコンテンピシーを有していると判断した人材に、等級昇級のチャンスを与える取り組みである。なお、富士通では、コンテンピシーを、「成果に結びつけることができる具体的に発揮される能力」と定義している。
全社員へ浸透図る
高山課長は語る。「マスコミの一部には、あたかも富士通が成果主義を取りやめたかのような記事を掲載しているものがありますが、そのようなことは決してありません。むしろ、われわれは、めざしている成果主義が全社員に浸透するように、これからも人事制度に不断の改良を加えていきます。今後の重点課題はビジネスリーダーの育成、マネージャー層のレベルアップ、および人材の更なる活性化です」。
富士通の成果主義への挑戦はこれからも続く。
6月28日(木)『日経連タイムス』
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