2018年2・3月の新着図書紹介

1.ライアン・エイヴェント著
『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』東洋経済新報社

(xi+345+17頁,四六判)

英誌『エコノミスト』の気鋭のジャーナリストが21世紀の働き方、政治、富の分配などについて大胆に見通した意欲作。デジタル革命による3つのトレンド――自動化、グローバル化、スキルの高い少数の労働者の生産性向上により、全世界的には本格的に労働力余剰の時代がやってくる。本書はデジタル化で人類にバラ色の明日が保証されているわけではなく、新たな問題が発生すると警鐘。デジタル化で人間の労働は二極化し、低スキルの仕事の奪い合いが激しくなる一方で、好況になっても賃金が上がりにくい社会になるとみる。著者は余剰となった労働者を救うため、改めて最低賃金の意義の見直し及びベーシックインカム(最低生活保障)の導入必要性にも言及する。

請求番号:331.81/dej
書誌番号:JB00109344
ISBN:9784492654804

2.笹山 尚人著『ブラック職場』光文社

(241頁,新書判)

2015年に大手広告代理店、電通で発生した新入社員自死事件。著者はこの事件を「第三電通事件」と命名する。すでに過去に同種の事件が2回発生しているのがその理由だ。どうしてこうした事態が繰り返されてしまうのか。本書は、日本の職場が21世紀に入って労働者をより冷遇する「ブラック職場」へと転換しているようにみえると指摘。非正規雇用の労働者が増え、労働条件の劣悪さに苦しむ事例、裁判に訴えても声が届かない例は数多い。パワハラをはじめとしたさまざまなハラスメントも横行している。これらの状況を解決するため、労働法を改めて活用するよう訴える一方、労働組合を通じて成果をあげるなどホワイトな社会の実現に向けた具体的な5つの解決策を示す。

請求番号:366.021/bur
書誌番号:JB00109572
ISBN:9784334043193

3.中村 東吾著『誰が「働き方改革」を邪魔するのか』光文社

(237頁,新書判)

本書は、今後の日本経済を担う「頑張りたくても頑張れない人」に焦点を当てる。何が頑張れない労働者を生み出す原因なのか。一つには社内の行動規範としての「社会人の一般常識」、二つ目には労働者に対する社内の罰則などの「心に潜む制動力」があると指摘。例えば、仕事は労働時間の長短で成果が決まるわけではなく、(育児や介護で)早帰りする労働者を「仕事をしない人」と決めつけるのは不合理だとする。少子高齢化が進む日本社会では、女性や高齢者、障害者、LGBT(性的少数者)、外国人労働者といったいままで「非主流」だった労働者の活用が働き方改革の本丸になるという。こうした層がいかに活躍できるかが、労働の多様化戦略の行方を左右すると主張する。

請求番号:366.021/dar
書誌番号:JB00109065
ISBN:9784334043100

4.野口 悠紀雄著『仮想通貨革命で働き方が変わる』ダイヤモンド社

(263頁,四六判)

著者は、政府の「働き方改革」に関し、労働者個人が従来のように、組織内で働くことを前提にしている点を疑問視する一方、IT(情報技術)の進展で、さまざまな形の働き方が可能になっていると指摘。なかでも組織に雇われない新しい働き方、「フリーランシング」を求める人が現れている点を重視する。インターネットの進歩などで個人が組織と対等の立場で仕事ができるようになったと強調。さらにビットコインなどの仮想通貨を利用すれば、これまでの個人事業での最大の難所だった送金、課金の問題を解決できるという。こうした変化により、フリーランサーという働き方が拡大すれば、自営業の世界に回帰するとみる。後半では働き方改革に関する持論を展開。

請求番号:366.11/kas
書誌番号:JB00109323
ISBN:9784478104057

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2017年12月~2018年1月の労働図書館受け入れ図書

  1. 隅田 貫著『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ』KADOKAWA(222頁,四六判)
  2. 石井 まこと他編『地方に生きる若者たち』旬報社(323頁,A5判)
  3. 宮本 太郎編著『転げ落ちない社会』勁草書房(xii+362頁,四六判)
  4. 鎌田 耕一著『概説労働市場法』三省堂(xi+208頁,A5判)
  5. 須藤 典明他編『労働事件事実認定重要判決50選』立花書房(17+586頁,A5判)
  6. 五十嵐 充他共著『中国労働法事件ファイル』日本法令(377頁,A5判)
  7. 川口 大司編『日本の労働市場:経済学者の視点』有斐閣(xiv+415頁,A5判)
  8. 山口 一男著『働き方の男女不平等:理論と実証分析』日本経済新聞出版社(269頁,A5判)
  9. 池田 浩編著『産業と組織の心理学』サイエンス社(ix+249頁,A5判)
  10. 旦 まゆみ著『自立へのキャリアデザイン』ナカニシヤ出版(vi+94頁,B5判)