2018年1月の新着図書紹介

1.大竹 文雄著『競争社会の歩き方』中央公論新社

(vii+235頁,新書判)

政策に行動経済学の成果を活かす動きは、海外ではすでに始まっている。本書はわが国における最新の行動経済学の知見などを紹介し、「競争」をキーワードに、さまざまなトピックスを取り上げる。例えば職探しにおける競争にはメリットがあるという。激しい競争に身を置けば、自らの強みを発見できる可能性が高まるからだ。競争は勝者と敗者を生み、厳しくつらい面もあるが、競争が繰り返される結果、自分が真に活躍できる場を見つけられる確率が上昇すると主張。不得意な分野で消耗戦を続けるのは、本人にとっても社会全体にとっても不利益でしかないと述べる。また、政府による女性活躍推進から社会保障給付の問題まで競争社会を生き抜くヒントを提示している。

請求番号:331.04/kyo
書誌番号:JB00109052
ISBN:9784121024473

2.ダイアン・マルケイ著『ギグ・エコノミー』日経BP社

(278頁,四六判)

ギグ・エコノミーとは、従来の終身雇用のような働き方ではなく、インターネットなどを通じて「単発の仕事」(ギグ)を基盤とする新しい働き方。今後の労働者は定職に就こうとは考えず、約3~5年で転職を繰り返すという。収入が安定して増えるとは想定せず、仕事には柔軟性や自主性、働く目的や意義との一貫性などを重視し、これらがそろっていれば収入が減ってもかまわないと考えると強調。また、現在の労働者は「ひとりの従業員にひとつの職務」という伝統的な就業モデルに不満を抱いているとし、ギグ・エコノミー化に伴って、キャリア構築やライフプランの考え方は様変わりすると分析。「自らの成功を定義する」などギグ・エコノミーの10の成功法則を提示する。

請求番号:366/gig
書誌番号:JB00109051
ISBN:9784822255404

3.八代 尚宏著『働き方改革の経済学』日本評論社

(xvi+168頁,四六判)

アベノミクス成長戦略としての労働市場改革では、「同一労働同一賃金」による非正規と正規社員の格差改善、長時間労働の是正、高齢者や女性の就労促進を図ることが柱となっており、その方向性については評価する。ただし、少子高齢化が進み、労働力不足経済下という環境を踏まえると、政府の改革については、企業の「働き方改革」と結びつかなければ目的を充分に達成できないと主張。同一労働同一賃金改革では、非正規社員よりもむしろ正社員の働き方の見直しが基本で、多様な形態の正社員の働き方を設けることで格差を是正できると述べる。残業依存の働き方に関しては、ホワイトカラーの専門職を対象とした「高度プロフェッショナル」制度の仕組みづくりに注目。

請求番号:366.11/hat
書誌番号:JB00109075
ISBN:9784535558878

4.久谷 與四郎著
『日本の労働運動100年 温故知新――いま原点に立つ』富士社会教育センター

(246頁,四六判)

友愛会が創設された大正元年から連合が結成された平成元年までの軌跡を、戦後労働運動の現場を自らの足と目でみてきた著者が解説する。友愛会から総同盟へのれい明期では、8時間労働制に道を開いたサボタージュ闘争や日本初のメーデーの実現など戦前の民主的労働運動に言及。一時、組合数1千、組合員数40万人だったが、昭和15年の戦時体制下で壊滅する。戦後は労組再建が相次ぎ、旧総同盟幹部も動き出し、昭和21年に総同盟は再生。組合数は約1,700、組合員数は85万5千人に。しかし、その後の2.1ゼネストの失敗、総評の結成、春闘の誕生、三井三池大争議などを経て、同盟が生まれ、労働戦線は統一に向かった。対立と挫折を乗り越えて平成元年に連合が誕生。

請求番号:366.629/nih
書誌番号:JB00109505
ISBN:9784938296162

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2017年10~11月の労働図書館受け入れ図書

  1. 山本 紳也著『外国人と働いて結果を出す人の条件』幻冬舎メディアコンサルティング(204頁,新書判)
  2. 齋藤 和紀著『シンギュラリティ・ビジネス』幻冬舎(193頁,新書判)
  3. 清水 久三子『「残業だらけ職場」の劇的改善術』PHP研究所(235頁,四六判)
  4. 生産性改善会議編『時短術大全』KADOKAWA(319頁,四六判)
  5. 遠藤 源樹著『企業ができるがん治療と就労の両立支援実務ガイド』日本法令(293頁,A5判)
  6. 福島 創太著『ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?』筑摩書房(270頁,新書判)
  7. 野村 浩子著『女性に伝えたい未来が変わる働き方』KADOKAWA(327頁,四六判)
  8. 渡辺 拓也著『飯場へ:暮らしと仕事を記録する』洛北出版(505頁+図版1枚,四六判)
  9. 中嶋 聡著『うつ病休職』新潮社(191頁,新書判)
  10. 武田 尚子著『仕事の生産性が上がるトヨタの習慣』OJTソリューションズ(222頁,四六判)