2017年8月の新着図書紹介

1.中島 厚志著『大過剰』日本経済新聞出版社

(243頁,四六判)

著者は「現在、世界的にヒト・モノ・カネ・エネルギーに、あまりに大きな供給力が生じている」と強調する。ヒトの需給では、いまやどの主要先進国でも、移民流入の可能性を勘案すれば、改善困難な絶対的労働力不足が長期に続くとは考えにくいという。日本の場合、新卒採用にこだわる企業の考え方によって、労働市場がうまく機能せず、せっかくの有為な人材が活用されず飽和している、とする。その一方で、そう遠くない将来に人工知能(AI)やITによるヒトの労働の代替が加速度的に進むとの見方もあると指摘。AI時代にはスキルがさらに要求されるため、付加価値のある人材育成が急務だと主張する。そうすれば、日本に逆転のチャンスが生まれるとの考えを明示。

請求番号:333.6/dai
書誌番号:JB00108514
ISBN:9784532357245

2.浜屋 祐子他著『育児は仕事の役に立つ』光文社

(237頁,新書判)

企業経験のある女性が大学院で行った共同研究の成果。育児経験と「ワーク」が対局にあるのではないとの前提に立ち、今後、日本では一段と共働きが増えていくと予測。その際、目指すべきは、共働き家庭でいかに育児を分担するかだとし、従来の女性一人だけで育児を抱え込む「ワンオペ育児」ではなく、夫婦や祖父母、親戚、保育園などがチームとして育児を担う「チーム育児」の重要性を主張。チーム育児をしていくと、職場でのリーダーシップ能力や業務能力を高める効果が見られ、管理職を敬遠する人でもマネジメントそのものに魅力を感じるようになると分析する。人を動かすこと、体制づくりを行うことを通じて、マネジメントの本質を理解することができると説く。

請求番号:336.3/iku
書誌番号:JB00108503
ISBN:9784334039776

3.エドワード・P・ラジアー他著
『人事と組織の経済学 実践編』日本経済新聞出版社

(xx+553頁,A5判)

本書は、採用から退職に至る企業の人事制度が、置かれた環境の変化や目指すべき方向性によってどう変わるかを示す「人事経済学」のバイブル。従来の経済学のように個々人の金銭的合理性だけを取り上げるのではなく、心理学や社会学の研究成果なども取り入れ、プライドやモチベーションの持続可能性、考え方の違い、チームワークや情報の共有の必要性なども組み込んだ合理性を論じる。人事に関する諸問題を経済理論とケーススタディーをとり混ぜて解説しつつ、合理的な手法を示唆する。日本企業については、正社員だけに保証された雇用の安定は、生産性向上や経済成長をもたらさないため、ダイナミックで適応性と革新性が高い組織を設計する必要があると提唱する。

請求番号:336.4/jin
書誌番号:JB00108510
ISBN:9784532134709

4.原 論著『労基署は見ている。』日本経済新聞出版社

(217頁,新書判)

「電通過労自死事件」を受け、労働基準監督署がクローズアップされ、「かとく」のガサ入れが話題になった。本書は、19年間の国家公務員人生の大半を労働Gメンとも言われる労働基準監督官として過ごした著者が、監督署がどんな組織であるのか、自分の経験に基づいて解説するほか、「監督官は予告なく企業を訪問する」「監督官はすべての案件を原則一人で処理する」「ブラック企業は常にマークされている」ことなどを事例とともに明示する。同時に情報収集・調査をどのように実施するのか、また、労災事故の現場の実情、企業による姑息な労災隠しの実態について生々しいやり取りを紹介。労働Gメンについてここまで赤裸々に書かれた本はかつてないのではないだろうか。

請求番号:366.1/rok
書誌番号:JB00108264
ISBN:97845322633155

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2017年5月~6月の労働図書館受け入れ図書

  1. 野崎 堅三著『日雇い臨時工員から非正規社員になった男の奮闘記』青山ライフ出版(169頁,A5判)
  2. 赤川 学著『これが答えだ!少子化問題』筑摩書房(196頁,新書判)
  3. 中原 淳著『人材開発研究大全』東京大学出版会(xxxi+870頁,A5判)
  4. 池上 彰著『世界から格差がなくならない本当の理由』SBクリエイティブ(211頁,新書判)
  5. 小畑 史子著『よくわかる労働法 第3版』ミネルヴァ書房(vi+210頁,B5判)
  6. 山本 勲著『労働経済学で考える人工知能と雇用』三菱経済研究所(ii+74頁,A5判)
  7. 朝日 雅也他編『障害者雇用における合理的配慮』中央経済社(5+iv+199頁,A5判)
  8. 松村 直樹他共著『新キャリア開発支援論』学事出版(125頁,A5判)
  9. 佐藤 文昭著『日本の電機産業失敗の教訓』朝日新聞出版(255頁,四六判)
  10. 牧 久著『昭和解体:国鉄分割・民営化30年目の真実』講談社(517頁,A5判)