2017年7月の新着図書紹介

1.寺田 知太他著『誰が日本の労働力を支えるのか?』東洋経済新報社

(209+18頁,A5判)

本書は、労働力不足という構造的な課題を2030年の日本が乗り越えるべき最重要問題と位置づけたうえで、人工知能(AI)などのテクノロジーと外国人労働者受け入れによる課題解決の可能性を考える。まず、世界的な人材争奪戦のぼっ発で外国人労働者の呼び込みは一段と厳しくなるとみる。一方で、AIやロボットなどの新技術については劇的な進化を遂げることから、近未来シミュレーションとして、小売、物流、ヘルスケアの2030年におけるシナリオを専門家が描出する。当機構の「職業構造に関する研究」を使用して、職場では日本の労働者の49%はAIやロボットで代替可能と分析。企業には「業務のデータ化」と「人の組織構造の構築」で備えるよう警鐘を鳴らす。

請求番号:366.21/dar
書誌番号:JB00108292
ISBN:9784492762318

2.竹信 三恵子著『正社員消滅』朝日新聞出版

(237頁,新書判)

経済の変動が激しくなった現在、企業はかつてのように働き手を丸抱えで面倒を見ることができなくなっている。会社だって大変、というのは事実。しかし、著者は、だからこそ自らを守るための権利を確認し、強めるべきだと主張する。いまや、日本で働く人の4割が非正規雇用。雇用保険もない「名ばかり正社員」も現れた。人生の安定を担保する「正社員」が危ない。働き手が正社員消滅の綱引きに負けないように、①「正社員の身分を守る」という発想から抜け出す②自分の法律顧問を持つ③働き手のネットワークをつくる④ライフスタイルを点検する――などを提唱。企業や政府からの「働き方改革」に振り回されるのでなく、働き手の目線からの改革の実現を勧めている。

請求番号:366.21/sei
書誌番号:JB00108287
ISBN:9784022737106

3.常見 陽平著『なぜ、残業はなくならないのか』祥伝社

(248頁,新書判)

本書は、残業がなくならない理由について「合理性があるから」と指摘。「所定内労働時間では片づかない仕事量」「突発的な業務」「人手不足」など残業ありきで、会社だけでなく社会が設計されている点を問題視している。2015年12月に発生し、16年9月に労災認定された「電通過労自死事件」を受け、世論が長時間労働是正に向けて動いたことは間違いないと言及。そのうえで、本書の後半では、働きすぎ社会の解決のための処方せんを明示している。長時間労働是正には真の「働き方」改革が必要だとし、「1週間のうち、働く時間を決める」「1つの仕事にかける時間を決める」「時間のへそくりをつくる」など著者自身が工夫し、実せんしている残業減につながるヒントを紹介。

請求番号:366.32/naz
書誌番号:JB00108300
ISBN:9784396115005

4.二宮 誠著『「オルグ」の鬼』講談社

(215頁,文庫判)

全国各地で労働組合の組織化を手がけてきた「伝説のオルガナイザー」がその経験と手法を披れきする。ストライキ、ヤクザとの対決、社長との直談判など、組合結成に向けて闘い続けた活動の記録。その百戦錬磨の活動家は現状を「地方連合や産業別労働組合の専従役職員は、組織化にやる気は十分あるし、危機感も持っているが、実際の経験のある人がごく少数になってきている」とみる。苦しんでいる労働者の相談に何もしない労組の増加に苦言を呈する。いま本当に労組の助けが必要なのは、大手企業の下請け会社で働く人々や、非正規雇用の人々だが、正社員にとっては自分の労働条件が向上しにくくなる可能性がある。そうした状況でも一致団結するのが労組だと強調する。

請求番号:366.621/oru
書誌番号:JB00108269
ISBN:9784062817158

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2017年4月~5月の労働図書館受け入れ図書

  1. 小井土 彰宏編『移民受入の国際社会学』名古屋大学出版会(vi+369頁,A5判)
  2. 田中 拓道著『福祉政治史』勁草書房(xii+297+xxixp頁,四六判)
  3. 松本 勝明著『社会保険改革:ドイツの経験と新たな視点』旬報社(239頁,A5判)
  4. 金善洙著『労働を弁護する』耕文社(256頁,A5判)
  5. 田島 一著『巨象IBMに挑む』新日本出版社(126頁,四六判)
  6. 布引 敏雄著『大浜炭鉱労働争議の記録』解放出版社(205頁,四六判)
  7. 榑松 佐一著『外国人実習生「SNS相談室」より』風媒社(219頁,四六判)
  8. 桜井 啓太著『「自立支援」の社会保障を問う』法律文化社(vi+243頁,A5判)
  9. 犬塚 典子著『カナダの女性政策と大学』東信堂(xii+267頁,A5判)
  10. 石井 義脩著『産業保健の基礎』新日本法規出版(328頁,B5判)