2016年12月の図書紹介(2016年11月受け入れ図書)

1.ギンカ・トーゲル著
『女性が管理職になったら読む本』日本経済新聞出版社

(187頁,四六判)

世界トップビジネススクールの一つであるIMDで女性管理職向けに長年教べんをとっている著者が、女性のリーダー論に関する最新の研究結果をまとめたのが本書。統制的なリーダーシップをとる女性は「嫌な女」として男性だけではなく、同性からも反発される傾向にあると指摘。女性管理職を増やすことが日本政府の目標になっているが、「管理職」イコール「リーダー」ではないことに注意すべきと述べる。リーダーの役割は大別して、①進むべき方向を示す②それに向けて人を動かす――の2点だと強調する。リーダーになりたくない女性は「男性のように振る舞うべき」「自分の時間を犠牲にすべき」などと自分が男性と同様に行動する必要があると誤解していると分析。

請求番号:336.3/jos
書誌番号:JB00107128
ISBN:9784532320652

2.関島 康雄著『キャリア戦略』経団連出版

(246頁,四六判)

日立製作所で人事勤労分野や国際調達部門などを経験し、その後、独立した著者が、組織内で「自分で独立して稼げる人」を「一人親方」と定義し、プロ人材に育つ方法を説く。そのために必要な3つの力として、教育プログラムや上司などによる「育てる力」、仕事を中心とする「育てる場」、本人の内にある「育つ気持ち」を指摘。著者がとりわけ重視しているのは「育つ気持ち」だが、この力が最近衰えていると感じる人が多く、また、マネジャークラスに自信のなさが目立つという。グローバル競争の時代を迎えたいま、とくに求められているのは組織内での「自分らしさ」「専門性」「自律性」を身につけることだと解き明かし、自他ともに認める一人親方に育つ必要性を訴える。

請求番号:336.4/kya
書誌番号:JB00107243
ISBN:9784818516069

3.堀 有喜衣著『高校就職指導の社会学』勁草書房

(viii+226頁,A5判)

バブル崩壊後の1990年代半ばごろから暗転した若者の労働市場。なかでも、高校から職業への学校の選抜・配分による「日本型」の移行システムは称賛から一転して批判の対象に移り変わった。こうしたなか、本書は「学校に委ねられた職業選抜」という通説的な理解に疑義を投げかける。とくに若者の就職が不安定化した最近20年間に十分な研究が進められなかったことへの反省を踏まえ、著者も関わった全国的な調査に依拠し、先行研究の課題に挑んでいる。その狙いは「日本型」移行の強みと限界を浮き彫りにすることである。「学校経由の就職」はいまでも量的に無視できないとしつつも、非正社員から正社員への転換という「移行経路の複線化」は生じていると指摘する。

請求番号:375.25/kok
書誌番号:JB00107112
ISBN:9784326602933

4.伊原 亮司著『トヨタと日産にみる<場>に生きる力』桜井書店

(534頁,A5判)

本書は、労使関係の成り立ちの異なる自動車大手のトヨタ自動車と日産自動車を取り上げ、働き方が多様化する労働現場の実態に注目。戦後両社でも労使が激しく対立し、その後協調的な関係を築いたが、トヨタでは養成工が現場のリーダーに育っていった。一方、日産の養成学校は1988年に幕を閉じるが、短期大学を設立し、選抜教育を推進。こうした経緯を踏まえ、両社の管理制度や競争構造からみた労働者統合の相違を照らし出す。第3部では、現場に増大する非正規労働者の現状を探るため、著者自ら非正規として両社で雇われ「末端」の労務管理の実態を比較した。最後に働く場の力学を読み解き、市場と組織に左右されつつも、「場に生きる力」を再検討している。

請求番号:537.09/ban
書誌番号:JB00106892
ISBN:9784905261285

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2016年9月~10月の労働図書館受け入れ図書

  1. 俣野 成敏他著『仕事の一流、二流、三流』明日香出版社(199頁,四六判)
  2. 荻阪 哲雄著『社員参謀!』日本経済新聞出版社(298頁,四六判)
  3. 石塚 由紀夫著『資生堂インパクト』日本経済新聞出版社(253頁,四六判)
  4. 岸見 一郎著『アドラーに学ぶよく生きるために働くということ』KKベストセラーズ(231頁,新書判)
  5. 中村 和雄著『「ニッポン」の働き方を考える』かもがわ出版(95頁,A5判)
  6. 伍賀 一道他編著『劣化する雇用』旬報社(252頁,四六判)
  7. 三井 正信『フランス労働契約理論の研究』成文堂(ix+261頁,A5判)
  8. 中山 実他編著『職業人教育と教育工学』ミネルヴァ書房(iv+226頁,A5判)
  9. 三好 信浩著『日本の産業教育』名古屋大学出版会(ix+373+11頁,A5判)
  10. 柴田 悠著『子育て支援が日本を救う』勁草書房(x+261+13頁,A5判)