2016年11月の図書紹介(2016年10月受け入れ図書)

1.小平 龍四郎著
『企業の真価を問う グローバル・コーポレートガバナンス』日本経済新聞出版社

(212頁,四六判)

かつて日本では、メーンバンクや労働組合が企業行動に影響を与えた。財閥や系列という結束のなかで企業は互いに支え合い、監視し合っていた。しかし、バブル崩壊を受け、メーンバンクの地位は衰退し、産業構造の変化とともに労働組合の地位も低下。その後の「統治」の空白を埋めたのは外国人投資家で、やがて国内機関投資家、個人投資家などいまではだれもが潜在的な株主となっている。日本経済新聞社に入社以来、証券市場を取材してきた著者が、内外の豊富な事例を俯瞰しつつ、企業統治の新たな胎動を論説。現在のガバナンス改革は当局主導ではなく、市場型だと訴える。市場の声に耳を傾けグッドガバナンスを構築した企業だけが競争に勝ち残ることができるという。

請求番号:335.4/kig
書誌番号:JB00106956
ISBN:9784532320881

2.山極 清子著『女性活躍の推進』経団連出版

(205頁,四六判)

日本で女性管理職登用を阻害する主な要因は、M字型就労と表裏一体の男性の長期雇用を前提とした日本的雇用慣行にあると断言。この慣行がもたらす恒常的な長時間労働と固定的性別役割分担の常態化により、女性だけが仕事と家事・育児の二重負担を抱えることになるとする。日本的雇用慣行からの脱却に向け、欧米先進諸国がジェンダー・ダイバーシティ・マネジメントを導入し、女性の管理職・役員登用によって経済発展の潜在力を顕在化させたことを指摘。そのうえで、社員として長く関わった資生堂での女性の管理職登用に向けたプロセス・イノベーションを詳細に紹介する。ジェンダー平等とダイバーシティ、ワーク・ライフ・バランスの統合・推進の重要性を強調。

請求番号:336.4/jos
書誌番号:JB00106926
ISBN:9784818516045

3.おおた としまさ著『ルポ 父親たちの葛藤』PHP研究所

(234頁,新書判)

なぜ男性の「家庭進出」がうまく進まないのか。著者はイクメンブームの盛り上げ方に短絡的な部分があったと問いかける。そのうえで、仕事と家庭の板ばさみになっている男性の現状を数多くのデータとともに分析。悩んでいる男性の生の声に耳を傾ける一方、妻たちと会社側の本音も聞き出している。これらを踏まえ、最終章では男性たちが板ばさみの状況をうまく切り抜け、結果として少しずつ社会を変えていくためのヒントを提唱。具体的には、①仕事にかける時間やエネルギーを一時的に育児にシフトする②夫婦間の負担はあえて不平等にする③家族時間は量より質を重視する――などの8つの心得を紹介。いま必要なのは「頑張る」よりも「手放す」勇気だと主張する。

請求番号:367.3/rup
書誌番号:JB00106971
ISBN:9784569830681

4.イアン・ゲートリー著『通勤の社会史』太田出版

(350頁,四六判)

鉄道輸送の拡大で遠隔地の自宅から職場へ通う史上初の通勤が始まったのが19世紀。以来、住居や仕事場を選択できる自由をもたらした通勤は革新的な行為であり、都市と郊外を発展させ、人々の生活様式を一変させた。しかし、通勤が憧れの対象だった当時と比べて、現在では心身ともにストレスのもとと言われている。果たしてそれは真実なのか。さらに「今後、通勤はなくなるのか」「理想的な通勤システムとはどのようなものか」などを本書は探る。鉄道、車、オートバイ、自転車などあらゆる通勤の歴史と発展、現在の諸問題、将来の通勤形態も考察。「通勤大国」とされる日本の現状をはじめ、世界各国の通勤事情もカバーし、毎日5億人が通勤する理由を解明。

請求番号:681.8/tuk
書誌番号:JB00106889
ISBN:9784778315108

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2016年8月~2016年9月の労働図書館受け入れ図書

  1. 井上 智洋著『人工知能と経済の未来』文藝春秋(249頁,新書判)
  2. 神田 昌典他著『未来から選ばれる働き方』PHP研究所(228頁,新書判)
  3. 杉村 昌昭他著『既成概念をぶち壊せ!』晃洋書房(ix+207頁,四六判)
  4. 朝元 照雄他編著『台湾の企業と企業家』九州大学出版会(xi+239頁,A5判)
  5. 黄完晟著『東アジアにおける中小企業のグローバル展開』九州大学出版会(iii+264頁,A5判)
  6. 井手 英策著『18歳からの格差論』東洋経済新報社(112頁,A5判)
  7. 増田 明利著『ホープレス労働』労働開発研究会(322頁,四六判)
  8. 山本寛編著『働く人のキャリアの停滞』創成社(xii+258頁,A5判)
  9. 伍賀 偕子著『女・オルグ記』ドメス出版(155頁,四六判)
  10. 奥井 禮喜著『帝国ホテルに働くということ』ミネルヴァ書房(xv+276+iv+4頁,A5判)