2016年7月の図書紹介(2016年6月受け入れ図書)

1.梶浦 昭友編著『生産性向上の理論と実践』中央経済社

(ii+VII+224頁,A5判)

最近閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、人口減少下における供給制約を克服するためには「生産性革命を実現する規制・制度改革」が必要だと説く。このように生産性の向上が注目を集めるなか、本書では、第Ⅰ部で生産性向上の基本的な考え方に触れ、生産性に関する理論や歴史的視点からの研究を紹介。例えば、個別企業における生産性の測定は容易ではないし、利益を上げることと付加価値を上げることは同意ではない。このように「生産性」は用語として多用されるものの、あいまいな点も多く、「古くて新しい課題」であると指摘する。第Ⅱ部では個別企業における生産性向上への実際の取り組み例を提示する一方、労働組合による関与にも焦点を当てている。

請求番号:336.2/sei
書誌番号:JB00106543
ISBN:9784502184710

2.一守 靖著『日本的雇用慣行は変化しているのか』慶應義塾大学出版会

(xi+217頁,A5判)

終身雇用や年功賃金などの「日本的雇用慣行」は戦後の日本経済を牽引する成長の柱として機能してきた。しかし、平成に入って以降の長引く不況や少子高齢化など従来の制度を支えてきた前提が崩れたのを受け、転換を迫られている。本書は、こうした変化に直面している日本の雇用慣行の実態と今後を見通すため、企業の人的資源管理を担当する「人事部」に着目、最近の機能の変化などを分析。人事権の人事部集中を特徴とする日本的雇用慣行は、企業環境の変化に対して調整される周辺の人的資源、管理諸制度の変更に応じてゆるやかに反応するものの、人事部とラインの「管轄争い」の関係に変化が生じていないことから、日本的雇用慣行も変化していないと結論づける。

請求番号:336.4/nih
書誌番号:JB00106547
ISBN:9784766423211

3.川崎 二郎他著『政治主導で挑む労働の構造改革』日経BP社

(263頁,A5判)

自由民主党の労働政策ブレーンが呼びかけて「多様な働き方を支援する勉強会」を発足、議論の成果を本書にまとめた。労働問題は長年の雇用慣行や諸制度が絡み合い、大きな構造問題になっていると強調。こうした状況を変えるには、政治の力で突破していく必要があると主張する。日本が解決すべき課題として、少子高齢化に伴う労働力の減少、長時間労働、女性労働者の活躍の遅れ、若者の活躍などを列挙。これは日本型雇用慣行がもたらす諸問題で、メンバーシップ型雇用を本質とするため、①ワーク・ライフ・バランスの実現②非正規労働者の格差③中高年労働者の処遇――などの問題が生じやすい。内部労働市場の抜本的な改革と同時に外部労働市場の整備が必要だと提唱。

請求番号:366.021/sei
書誌番号:JB00106557
ISBN:9784822239824

4.田中 俊之著『男が働かない、いいじゃないか!』講談社

(188頁,新書判)

最近、男性の「生きづらさ」に注目が集まっている。本書は、「男性学」の視点から、男性が働くことの意味を見つめ直すのが狙いだ。男性学とは、男性が男性であるからこそ抱えてしまう悩みや葛藤に着目した学問。日本では、働き過ぎや自殺、結婚難などが男性の抱える典型的な問題だと指摘する。女性学の影響を受け、1980年代後半から議論が始まったという。社会に目を向ければ、男性は学校を卒業したら定年退職までフルタイムで働くべきだというルールが存在する。結婚すればさらに一家の大黒柱としての期待が上乗せされる。こうした無意味なこだわりや思い込みが男性の生き方を不自由なものにしていると強調し、主に男性と仕事の関係について多面的に論拠を提示。

請求番号:367.5/oto
書誌番号:JB00106530
ISBN:9784062729307

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2016年4月~2016年5月の労働図書館受け入れ図書

  1. 阿部正浩編著『少子化は止められるか?』有斐閣(174頁,A5判)
  2. 片桐正俊他編著『格差対応財政の新展開』中央大学出版部(xv+401頁,A5判)
  3. 沈潔他編著『ポスト改革期の中国社会保障はどうなるのか』ミネルヴァ書房(329頁,A5判)
  4. 吉原健二他著『日本公的年金制度史』中央法規出版(759頁,A5判)
  5. 今野晴貴著『君たちはどう働くか』皓星社(175頁,四六判)
  6. 細谷実編著『仕事と就活の教養講座』白澤社(253頁,四六判)
  7. 野川忍他編『企業変動における労働法の課題』有斐閣(331頁,A5判)
  8. 小畑史子他著『労働法』有斐閣(262頁,A5判)
  9. 55プラスライフデザイン室著『55歳からの生き方を見つける!』KADOKAWA(255頁,四六判)
  10. 澤宮優著『イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑』原書房(260+8頁,A5判)