2016年5月の図書紹介(2016年4月受け入れ図書)

1.権丈善一著『ちょっと気になる社会保障』勁草書房

(xvii+214頁,A5判)

「高齢者は手厚い社会保障に守られ、若者は搾取されている」「年金は賦課方式から積立方式への抜本的な改革が不可欠だ」――このように社会保障をめぐる世代間の不公平感は根強い。しかし、著者はこうした不毛な議論はかえって社会保障制度そのものをわからなくさせるという。社会保障のエキスパートである著者は、この制度がそもそもどんな論理で設計され、時代に合わせてどのように変化していくべきかを論じる。例えば公的年金。いま必要な改革は「防貧機能」の強化、すなわち将来の給付水準の底上げだと指摘。若い世代が将来自立した生活をまっとうできる人生を準備しておく必要があると述べる。早急にすべき改革として、マクロ経済スライドのフル適用を挙げた。

請求番号:364/cho
書誌番号:JB00106423
ISBN:9784326700899

2.藤原和博著『藤原先生、これからの働き方について教えてください。』ディスカヴァー・トゥエンティワン

(260頁,四六判)

リクルート出身の教育改革実践家である著者が自らの杉並区立和田中学校長としての経験などを振り返り、今後社会に出ていく若者に「21世紀の働き方」を提示。これからの時代のマネジメントは、管理職はもちろん、入社したての若者であっても経営者の視点で組織を見すえ、自分がなすべき働き方を考えることが重要であると主張する。そのためには自分の「ベクトル」をつくったうえで、①各自にピッタリの「正解の仕事」などない②会社から与えられた“作業”ではなく、“仕事”をする③やたらと個性にこだわりすぎない、という3つのコツを伝授。人と企業などが無限にある組み合わせのなかから、常にベクトル合わせをし続けることが21世紀の働き方だと強調する。

請求番号:366.21/fuj
書誌番号:JB00106429
ISBN:9784799318188

3.白河桃子著『「専業主夫」になりたい男たち』ポプラ社

(283頁,新書判)

いまや男性の11万人が妻の扶養に入っている。著者によれば、10年前の夫は「やむを得ず」子育て担当になっただけで「楽しそうなイメージ」はなかった。しかし、バブル崩壊やリーマン・ショックを経て、パートナーの年収が多いケースもみられ、一時的主夫ではなく、責任を持って家事や育児をする夫が増えてきた。本書は主夫の取材や主夫「妻」による座談会などを通じて、多様な実像に迫る。主夫は個人の選択ではなく、家族のサバイバル戦略として考える必要があるという。夫を専業主夫に改造するには、「夫は外で働くもの」という固定観念を捨てることが重要だとも主張。「主夫」の社会的効果の最大のものは「男女役割分担意識を乗り越えること」だと結論づける。

請求番号:367.3/sen
書誌番号:JB00106418
ISBN:9784591147771

4.中沢孝夫他著『ものづくりの反撃』筑摩書房

(254頁,新書判)

ここ30年の間、過酷なグローバル競争に直面した日本のものづくり。しかし、逆風のなかでもがき、たゆまず自己を鍛練した結果、製造の現場はいま圧倒的な強さを取り戻している。本書はそうした強味に焦点を当て、「これまで日本の製造業が日々の営みのなかで生産性をいかに上昇させたか」「どのように技術を向上させたか」「中国などとの賃金格差や円高をいかに克服したか」などについて中沢孝夫、藤本隆宏、新宅純二郎の3氏がてい談形式で語り合う。米国やドイツとの長所の違いを明らかにするとともに、日本の競争優位の本質を分析し、「インダストリー4.0」「I to T」などのドイツ型ものづくり論を批判的に検証。さらなる拡大に向けた潜在力を徹底的に考えた。

請求番号:509.21/mon
書誌番号:JB00106430
ISBN:9784480068743

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2016年2月~2016年3月の労働図書館受け入れ図書

  1. 小嶌典明著『法人職員・公務員のための労働法72話』ジアース教育新社(492頁,四六判)
  2. 大内伸哉著『労働法で人事に新風を』商事法務(321頁,四六判)
  3. 丸谷浩介著『求職者支援と社会保障』法律文化社(viii+365頁,A5判)
  4. 国際労働機関『仕事の性質の変化』一灯舎(ix+170頁,B5判)
  5. 永野仁美他編『詳説障害者雇用促進法』弘文堂(xvi+377頁,A5判)
  6. 山口覚著『集団就職とは何であったか』ミネルヴァ書房(371+20頁,A5判)
  7. 裵海善著『韓国の少子化と女性雇用』明石書店(170頁,A5判)
  8. イヴォンヌ・ツィーグラー著『キャリアウーマンたちの挑戦』志學社(220頁,A5判)
  9. 岡田康子著『自分で決める、自分で選ぶ』東峰書房(176頁,四六判)
  10. 竹内健著『10年後、生き残る理系の条件』朝日新聞出版(214頁,四六判)