労働者の理解と協力「分割手続の流れ」の図(資料5)で一番上から一番下まで矢印がついているところですが、「労働者の理解と協力」という部分について次にご説明したいと思います。
「労働者の理解と協力」は、国会の議論で修正が行われて新たに入った条文です。会社が分割するということは、労働者にとってもこれまで勤めていた会社組織が変わるということで大きな影響があります。そういう労働者からできるだけ理解を得つつ、分割を円滑に行っていただく必要があるということで、労働契約承継法の法文の中でも会社側の努力義務として、理解と協力を得るよう努めると規定したわけです。
法文上は、労働者の理解と協力を得るということで書いたわけですが、では具体的にどういう形で得るのかということにつきましては、省令で書くことになりました。それが省令である施行規則第4条になりますが、過半数を代表する労働組合があればその組合と協議を行う、そういう組合がないような場合、過半数の労働者の代表と協議を行っていただくということを基本的な姿として書いてあります。
ただ、「その他これに準ずる方法」ということで、それに必ずしも限定していません。ある程度、それと同等であると認められるような形の協議であっても差し支えないということでお願いしています。「その他これに準ずる方法」にはいろいろな制度があると思います。例えば、企業の中に労使協議会のようなものがあり、そこできちんとした協議が行われるのであれば、それでいいのではないか。名称のいかんを問わず、労使対等の立場で誠意を持って協議を行える、そういう場が確保されていることが必要だということであります。
この協議は、個々の労働者の希望をある程度聞いて配置していただくためという、先ほど申しました協議とは異なります。会社分割が行われるまでの間、労働者の不安を解消すべき事項としていろいろなことが想定されますが、その期間を通じて労使間で十分な話し合いをしていただきたいということです。総体としての労働者とのかかわりの中で、会社分割をなぜ行うのか、それによってどのように変わるのかということを含め、労働者の理解を得ていただくことを主眼としたものです。会社分割を行う背景、理由などを十分説明していただき、なぜ今、会社分割をするのかということについても労働者全体の理解を得ていただきます。
それから、それぞれの会社は泥船ではなくて、現在の経済社会の中で発展していくために必要であるということや、これは個々の労働者ともかかわるわけですが、主として従事する労働者の判断基準など、とにかく全体としての労働者との関係について、十分な話し合いをお願いしたいという趣旨であります。
この手続は、ある意味で一番早く始めて、最後までお願いしたいことです。例えば、個々の労働者との協議に先立ち、分割の背景などについて労働者総体に理解を求める。協議のやり方等についても、こういう形でやっていくということで理解を得る。会社分割の考え方が整理された段階、このタイミングにはそれぞれあるかもしれませんが、個々の労働者との接触が始まる最初の段階で始めていただきたいと思っています。
これは1回説明して終わりというのではなく、個々の労働者から意見聴取をして出てくるいろいろな問題について、ある程度フィードバックしながら、できるだけ円滑に解決できるように適宜、協議を重ねていただきたいという趣旨です。そういう努力義務が書いてありますので、労使それぞれの立場から積極的に協議していただき、会社分割が全体として円滑に行われるようにお願いしているわけです。
労働契約の承継
手続としては以上ですが、そういう形で整理され、異議申立権などがある中で、労働者がどちらに行くのかが決まっていきます。分かれていくBのほうに行く方につきましては、労働契約はそちらのほうへ移ります。その場合、労働契約の中身はどうなるかと言いますと、その契約関係は包括的に承継されるという考え方で整理されております。その契約内容である労働条件を含めまして、基本的にすべてそのまま承継されるというのが基本的な考え方であります。
その辺は13ページ(資料4)の第2−2−(4)「労働条件等に関する事項」に書いてありますが、「基本原則」にありますように、労働契約は包括的に承継されるので、その内容である労働条件も維持されるということです。この場合の労働条件につきましては、2つ目のパラグラフにありますように、労働契約や就業規則等で明記されているものは当然のことながら、いろいろな労働慣行で確立されている部分につきましても、あわせて労働契約の内容として維持されるという考え方であります。
それから、年休日数や退職金の算定等にかかわる勤続年数等も包括承継されますので、当然のことながら通算されることになります。要するに、まったく同じ中身でそのまま移るというのが基本です。ですから、会社分割のみが理由になって労働条件が変わることは、基本的にあり得ないことになっております。
ただ、例えば500人の企業から30人を出すような会社分割をして、その規模においては福利厚生制度を維持できないなど、制度的に難しい場合も想定されます。その点につきましては、代替措置を含めて、労使間で十分話し合ってくださいということにしてあります。不可能な部分までまったく同一でなければいけないというようにはできません。制度の対象にならない場合や、あるいは第三者との関係で、同じ形で提供することが不可能な場合には、どういう形でその部分を代替していくかということにつきまして、十分話し合ってくださいということです。
それから指針には、厚生年金基金や健康保険組合、財形貯蓄などについて、それぞれ引き継ぐ際の注意事項等を書いてあります。これらはそれぞれの制度の説明でありますので、後ほどご参照いただければと思います。
(2)分割のみを理由に解雇はできないあと、指針の中で特記して書いてありますのは、14ページ(資料4)の第2−2−(4)−イ−(ロ)のところですが、会社分割を理由とする労働条件の不利益変更についてです。新しい会社、新しい契約関係だということで、使用者がそれを勝手に決められるということでは一切ありません。先ほど申しましたように、これは包括承継です。契約関係がそのまま承継され、労働条件の中身もそのまま基本的に承継されます。こちらの関係が終わり、こちらで新たな契約関係ができるという関係にはなっていないということを十分ご理解いただきたいということです。
もちろん、労働協約改定などの労使交渉を否定しているわけではありません。そういう中で労使の合意が得られた部分につきましては、それに基づいて変更があり得るということです。全体としてどういうバランスで労使間の合意が得られるかというのはそれぞれ交渉事ですけれども、例えば他の会社と合併するようなケースもありますので、それに応じた労使間の団体交渉や、それに基づく合意がある場合の契約の変更まで否定しているわけではありません。それは一般的な契約や就業規則を変更する際の法理に基づいて判断されるべき事項だということです。
私どもが強調したいのは、会社分割をしたから労働契約の中身を変えていいという論理には、一切なっていないということです。それと当然のことながら、新しくできた会社で必要な要員はこれだけだから、あなたはもう要りませんというように、分割したことを理由に解雇するといったこともできないということです。
もちろん、整理解雇の法理に基づいて、会社分割を理由としない形でいろいろな対応が行われることまでは否定しませんが、これも会社分割が理由となることは基本的にあり得ません。会社分割というのはあくまでここにある会社をどういう形で切り分けるかというシステムですから、整理解雇などがいつの時点でどのようになるかというのは、その法理に基づいて対応していただくことになります。会社分割の法制度には、そういうものが入り込む余地はないということで、指針の中で明記させていただいております。
労働協約の承継
最後に労働協約の関係で若干の規定がございますので、ご説明したいと思います。労働契約は、どちらかの会社に割り振られるかが決まっていきます。しかし、労働協約につきましては、A社とB社の両方、それぞれ分かれていく労働契約のいずれのほうの条件についても決めています。したがいまして、組合員が両方の会社に分かれた場合、どちらかに労働協約が行ってしまうというのはやはりおかしいわけです。その労働協約が射程に置いている組合員、あるいは労働条件を決めてある労働契約が移る限りにおいて、両方の会社で適用されるべきであろうと考えております。
会社分割法制では、原則としてすべての契約関係がどちらかに割り振られます。しかし、労働協約につきましては、対象となる組合員が移った限りにおいて両方で適用される、要するに同じものが両方の会社に適用される形で法律上整理されているわけです。
ただ、労働協約のいわゆる規範的ではない債務的な部分について、例えば組合事務所を貸すというのが書いてあったとして、A社とB社の両方にその労働協約が適用されるとなると、A社でもB社でも組合事務所を貸さないといけないのかということになってしまう。あるいは専従役員を2人まで認めている場合、それぞれの会社に2人ずつとなるのかという議論もありました。
この部分につきましては、労働協約がコピーされて2つになるわけですので、規範的な部分はそれで何の問題もないのですが、組合事務所を貸すとか、専従組合員を何人認めるかという債務的な部分までコピーされてしまうと、両方の会社を足し合わせた負担が倍になると解されることもあります。それはやはりおかしいので、その部分は全体の負担が元と変わらない範囲内で、どちらの会社で組合事務所を貸すかとか、専従組合員が2人の場合は1対1、あるいは2対0にするかといったことについて、会社と労働組合との間で合意を得て、その合意の範囲内で適用が決まるという法制度になっております。
したがいまして、労働協約の関係では、最初の段階で、債務的な部分につきまして、両当事者の間でどのように割り振るかを決めていただく必要があります。先ほど、「分割手続の流れ」の図(資料5)の真ん中を説明しましたが、労働契約のほうだけ説明して、労働協約のほうを飛ばしておりました。2段目の左側ですが、「労働協約中の分割計画書等記載部分の労使合意」というところです。組合事務所をどちらが貸すのかなど労使間で話し合って決めていただく事項は本来、分割計画書等の中で書くべき事項にもなるわけですので、その作成までに合意するようにしていただきたいということです。
それから、労働組合におきましても、労働協約のかかわり等もありますので、どういう形で分割され、それによって組合員がどうなるかを知る必要があるだろうというわけで、労働者とともに、労働組合にも一定の事項を通知してくださいということになっております。これが「労働組合への通知」です。基本的には、法律上は労働協約を締結している労働組合に通知してくださいということで整理されているわけですが、協約がない場合におきましても通知が望ましいということで、指針の中でお願いしているところです。
(2)労使協定の効力あと、指針の19ページ(資料4)の最後、第2−5の「その他の事項」のところに細かい話が幾つか書いてあります。その(1)ですが、安全衛生法等で、事業所規模、企業規模により設置要件の異なる委員会等があります。分割された後のそれぞれの会社で見ると、その基準を満たさなくなるような場合、せっかくあるものをなくすのではなく、そういったものをできるだけ維持していただくことが望ましいということが書いてあります。(2)には、労働者派遣法との関係で派遣契約、派遣期間の制約等について一部書いてあります。こういったものにつきましては、分割前後を通算して考えるべきだということです。それから、(4)にありますように、会社分割後を含めまして、労働者の雇用の安定には努めていただきたいということです。
若干細かいことですが、17ページ(資料4)の第2−3−(3)に、労使協定等の効力について書いてあります。イの「労働組合法第17条の一般的拘束力等」はあまり例がないのですが、ロの「労働基準法上の労使協定」は、24協定や36協定でございます。これは労働基準法上の免罰措置としての協定ですので、その他の債権債務関係と同じような整理ではないということです。
これらにつきましては、労働基準法の考え方として、「事業場の同一性」があるかどうかで有効性を判断するという整理をしてあります。ですから、会社分割があったとしても、例えばAという工場自体はそのままの形で残ったり、あるいはそのまま新しい会社へ移ったりすると、そのAという事業所、あるいはそこで働く労働者は基本的に同一性を失っていない。もちろん人事ローテーションにかかわるような部分はあったとしても、基本的に同一だと認められる場合には、それまであった24協定や36協定がそのまま有効に存続するということです。
これは、会社分割に伴い事業所自体が2つに分かれた場合、こちらは大きいから残るとか、小さいからなくなるということではなく、同一性が無くなれば新たなところで過半数要件を持った方と協定を結んでいただく必要があるという考え方です。これは労働基準法の解釈ということであるわけですが、指針の中で書かせていただいております。
以上、手続の流れを見ながらご説明いたしました。指針に書いてあることはおおむねお話ししたつもりです。あと30分ほどありますが、質問があればと何なりとおっしゃってください。担当係長も来ておりますので、ある程度、細かい質問にも答えられると思います。
質 疑 応 答【質 問】 資料19ページのハ「労働組合法上の団体交渉権との関係」に、「団体交渉の申入れを拒否できない」と書いてあります。この一文の解釈についてですが、労働契約承継法があるといっても、団体交渉に対する応諾を怠ると労働組合法に抵触するおそれがある。したがって、その会社分割そのものに法律上の瑕疵が生じるおそれがあるといったような意味にとるべきかと思うんですが、いかがでしょうか。
【回 答(岡崎氏)】 会社分割の手続に瑕疵があるというよりは、労働組合法第7条の団体交渉応諾義務に反しているということです。ですから、分割無効の手続のほうで問題になるというよりは、むしろ労働組合が労働委員会に救済を申し立て、そちらのほうで団交命令が出たり、そういう形になっていくことだろうと思っています。
【質 問】 その場合、分割そのものを否定するような救済措置はされますか。
【回 答(岡崎氏)】 これは労働委員会がどう判断するかという話で、私どもとしてコメントしにくい面もあります。ただ、商法上の手続までひっくり返すような判断までするかどうか。これは相当な救済が必要だと見られる場合に限られるのではないかという気がいたします。けれども、私どもとしましては、そういうことを考えずに、誠実な団交をしていただきたいと思っております。
【質 問】 労働協約の継承についてちょっとお伺いしますが、さきほど規範的な部分は継承されると言われました。資料を見ますと、はっきりとは書いていないのですが、今回の分割法は転籍が原則であると伺っております。ある労働協約が継承されたとして、そこには出向にかかわる協約しかなかったとします。組合はそれを盾に転籍を拒否できるんでしょうか。
それと、分割計画書の株主総会への提示、議案としての提示が必要であるということですが、それは定時である必要はないのでしょうか。臨時でもよろしいのでしょうか。【回 答(長谷川一也・厚生労働省労政担当参事官室法規第3係長)】 まず、第2点目でございますが、株主総会は定時である必要性はありません。臨時であっても一向に問題ありません。
第1点目でございますが、これはそもそも労働協約の中に、転籍にかかわる規定が何もない、出向の話しか規定されていない、そういう仮定の話ですか。【質 問】 それが実在するかは別としてですね。
【回 答(長谷川氏)】 いずれにせよ、分割計画書等の記載に基づく労働契約の承継は、法律である労働契約承継法だけでなく、会社分割制度の規定に従って、その法律の定めによって労働契約を動かすことでございます。労働協約の定めがあるからといって、それを盾にとって転籍を拒否するということには直ちにはならないのではないかと思っております。
ただ、組合員が設立会社等と言われる新しい会社のほうに動くときには、まさに労働条件を構成するおおもととして労働協約も同時に動いてしまうわけです。そのあたりを考えれば、協約自体の見直しというのをやったほうが望ましいと、これは間違いなく言えると思います。【質 問】 気がついたら、そういう動きもあるかもしれません。しかし、気がつかなくて、いま仮定した協約がそのまま継承されたとしたら、転籍はそのまま何の問題もなく、抵触もなくできるということですか。
【回 答(岡崎氏)】 会社分割制度というのは、もちろん新しい会社のほうへ移るという意味では転籍というふうに評価されるのかもしれません。ただそれは、1つあるものを2つに分ける。個別の承継ではなくて、包括承継という形で整理する。そういう法律的な制度をつくって、一定の異議申立権等を認める中で整理したシステムであります。一般的に転籍の規定がないからといって、このシステムが否定されるということはおそらくないんじゃないかなと思います。
【質 問】 異議申立ての部分で、承継されていくBという会社で主として従事している労働者が、おおもとの会社に残りたいというような形での異議申立てというのは、先ほどのご説明では受け入れられないような、そんなご説明だったかと思うんですけれども、その点についてのお考えを。
【回 答(岡崎氏)】 その場合、移っていくほうに主として従事している方には、異議申立権がないわけです。従として従事しているのに移れと言われた方には異議申立権がありますので、異議申立てをすると元のA社のほうへ残ります。自分の仕事とともに移れ、あるいは自分の仕事とともに残れと言われた方に異議申立権はありません。主として従事していないほうに行けと言われた方について、異議申立権があります。残るほうもそうですし、行くほうもそうです。要するに、主として従事していた仕事と切り離されたかどうかで、異議申立権が有ったり無かったりするという整理になってます。
【質 問】 おっしゃることは理解できるんですが、仕事という切り口ではなくて、雇用契約をA社と継続しておきたいというような個人の意思は、この法律の中では認められないということですね。
【回 答(長谷川氏)】 まず、理論的な話からいけば、要は仕事、業務とのつながりをまず第一義で考えよう。それが会社分割制度を前提とした労働契約の承継、その特例をどうするかと考えたときの労働契約承継法のコンセプトでした。労働条件等々も含んで、労働者にとってはその仕事とのつながりを維持することが、まず守られるべきであろう。そういう考え方に立って、労働契約承継法を作って参りました。
ですので、仕事とのつながりは維持されます。賃金や労働時間を含めた労働条件についても維持されます。でも、「私はこの会社にいたい」という方につきましては、個別に拒否をするとか、そういう形の異議申立権はこの労働契約承継法に設けていないところです。これが理論的な話です。
ただ、そういう話は現実問題として起こり得ると思います。そこを解決する手法として、国会における修正という形で設けられたものではありますが、商法の規定に基づく労働者個人との協議があります。労働者個人の意思・希望を会社側が十分に聴取し、労働者側の意向をできる限り踏まえた形で分割計画書等というプランを作っていく必要がある。そういう手続が1つ設けられました。
これはあくまでも会社分割によって承継させよう、移そうと考えている営業に何らかの形で従事している労働者に限った手続ですが、その会社が雇用している全労働者に対しましても、労働契約承継法第7条に「労働者の理解と協力」というのがございます。事実上は労働組合等との協議ですが、この中で労働者ないしは労働組合の意向を会社が十分にくんでいただく。その会社の考え方を労働組合や労働者に提示し、双方で意見交換を十分に行って溝を無くしていくことが、結果として円滑な会社分割につながっていきます。
使用者にとって、分割がうまくいくということは幸せなことです。労働者や労働組合にとっても自分の意向に従った形で会社分割が進展するということは、労働者保護に資することになります。まさに労働契約承継法が目指した趣旨にかなうわけです。ですから現実の話として、協議の中で労働者ないしは労働組合の意向を使用者側は十分に配慮していただきたい。そういう機会がせっかくあるわけでございますので、その機会を活用して、労働者や労働組合の意向に配慮していただきたいと考えております。【質 問】 この制度が定着したとき、転籍という言葉がやはり使われるんでしょうか。概念が違うとすると、従来の転籍とはちょっと違って、例えば「承継転籍」だとか「分割転籍」だとか別の概念を実際に使うようになるかということについて、お答えいただけますか。
【回 答(岡崎氏)】 言葉としてどう使われるかは、それがこなれていくかどうかということだと思います。A社からB社に移ることを転籍と言うとして、法律的にはこちらも新しいB社となりますから、転籍と言えば転籍かもしれません。しかし、会社分割法は1つのものを2つに分けるという発想ですから、どちらへ行ったとしても「分割に伴う移籍」と言っていいのかもしれません。
ただ、分割法の特別の規定である労働契約承継法の規定では、一定の場合だけ異議申立権を認め、それ以外の場合にそれはないという整理しています。そこは一般の転籍の法理を気にするのではなく、労働契約承継法の異議申立権がどういうときにあるかということで判断していただきます。ですから、これを転籍と呼んだとしても、一般の転籍にかかわる同意権や異議申立権とはまったく法律的に違うものだと理解していただくしかないと思います。【質 問】 積極的に転籍と呼ぶと、やや混乱するんじゃないかなと。
【回 答(岡崎氏)】 それはそうかもしれませんね。そこはただ、皆さん方がこれをどう呼ぶかということだろうと思いますが、法律的には違う法理になっていると思います。
【質 問】 今回の法律では、包括的に労働者の権利義務が承継されていくということですが、問題は承継された内容の有効期限と言いますか、会社側と組合との話の中で、それはいつまで保証されるものなのか。あるいは、新設分割を考えていて、組合がどうなるかわからないという場合、新しい会社で組合はできるのか。分かれたとき、包括的に承継される権利義務の有効というものを会社は何らかの形で保証しなきゃならないのか。あるいは期限について、何か具体的な指針は出ているのかどうか確認したいんですけれども。
【回 答(岡崎氏)】 分割に伴い契約関係が移行する段階で包括承継に、それは契約の中身である労働条件を含めて代わるということですが、これをいつまでそのままにしなきゃいけないとか、そういうことについての指針その他はありません。むしろ会社の業績その他で上がる場合もあれば、下がる場合もあると思います。そこは一般の労使交渉、あるいは就業規則の変更と同じ形でご議論いただきます。したがいまして、新しい会社で労働組合ができれば、この労働組合との交渉の中で新たな労働協約を結んでいく。もちろん、その中で上がる部分と下がる部分があり、会社の業績などいろいろな関係の中で、普通と同じように交渉していただくことだろうと思います。
【質 問】 当然、ある一定の時期に分割されることになるわけですが、作業上のことから、間接部門、管理部門といったところの転籍時期をずらすということは、この法律では問題があるのでしょうか。
【回 答(岡崎氏)】 どちらに帰属するかという意味では、会社が2つに分かれた時点で帰属が決まるわけです。おっしゃっているのは、帰属はこちらだけれども、数カ月間は新しいほうの、例えば人事システムなどの面倒を見るので少しそちらにいてくれということでしょうか。でしたら、むしろその期間、在籍出向をやっているということになるような気がいたします。
【質 問】 例えば勤続年数を検証する時、転籍管理など特定部門は作業面から考えて半年後に(転籍を)行うということを最初から明示しておいて、その間については他のものの転籍時期と一体にするという考え方は可能ですか。やはり同一時期にして出向するとか、業務請負のような形にするのでしょうか。
【回 答(岡崎氏)】 そこは幾つか整理の仕方があると思います。時期をずらして転籍するとすれば、それは普通の転籍の法理でやるしかないと思います。分割の法理というのは、その会社が分割され、全体の債権債務関係が整理される時期における法理ですから、その法理を適用したいのであれば、そこを整理した上で在籍出向するとか、業務請負をするということになるでしょう。時期をずらしてということであれば、その間において、一旦は分割の法理で整理され、あとは転籍の法理でいけるかいけないかという整理をするしかないと思います。
退職金を払うのか、あるいは払わないで通算するかということは、もう分割の法理ではなくて、転籍の際に退職金を引き継いでもいいわけですし、両者間の話し合いと、それを受けた中で労働者が同意するかどうかという話になると思います。【質 問】 労働者への通知について伺いたいのですが、パートや短期間と言いますか1年契約などで、まさに分割日前、あるいはその直後ぐらいに雇用契約が終わる予定の人たちに対しても通知すべきかどうか、そのあたりの基本的な考え方を教えていただきたいのですが。
【回 答(長谷川氏)】 労働契約承継法の適用対象となる労働者が通知の対象でもあります。これは主として従事する、従として従事する労働者でもあるのですが、分割会社、つまり分割をするもとになる会社に雇用されている労働者です。ですから、労働契約承継法の適用対象となる労働者には、ご質問にありました期間雇用やパート、いわゆる契約社員なども含まれるわけです。パートだから通知しなくていいとか、労働契約承継法の対象にならないというわけではございません。
その上で問題になるのは、分割計画書等を作ったときは実際に雇用されていますが、分割の日より前にその雇用期間が終わってしまい、再雇用の予定はもうないという方達です。この方達につきましては、仮に通知をして「あなたは分割後、どちらの会社に行くことになりますよ」と言ったところで、その前提となる契約は分割の日に無くなってしまっているわけです。このため、このような方につきましては通知をする意味はないと考えております。再雇用の予定がもう無いということが明確になっている場合には通知は必要ないということです。
逆に、分割の日の時点ではまだ契約が残っている方につきましては、その分割の日の時点でどちらに所属するのかということを、つまり会社に雇用確保していただかないと困りますので、どちらかに行くのかを決めていただかなければなりません。となりますと、こういう方には通知をする必要が出てきます。
あと、契約自体は分割の日より前に切れるけれども、再雇用の予定が分かっているような場合は、やはり通知していただいたほうがよろしいだろうと思います。【質 問】 いわゆる内定者で、まだ入社していない者に対しては、どう考えればよろしいでしょうか。
【回 答(長谷川氏)】 これは指針でも触れていますが、会社との間で労働契約を締結したと言える内定者ないしは採用予定者は、承継される営業に就かせる予定が明確になっている方につきまして、通知をしていただきたいと思っております。指針では、採用内定者だから一律にどうこうしようという規定になっておりません。採用内定者でも労働契約を締結していると言える者について、通知義務が生じてくると考えております。
【質 問】 労働組合と従前、転籍にかかわる一般的な労働協約が締結されていたとしても、それは会社分割、労働契約承継の法理とは直接関係がないから、この労働契約承継に関しては、原則、適用にならないという理解でよろしいですか。つまり、労働契約承継に関するというような文言を付した労働協約を結んでいないと、従来の転籍協定は適用にならないと理解してよろしいでしょうか。
【回 答(岡崎氏)】 協約の中身、書き方にもよるかもしれませんが、新しい会社分割という制度は、いわゆる転籍の法理ではなく、会社分割に伴っていろいろな異議申立権その他がついているシステムです。労働協約がそこまで含めて制限しているというのであれば、それは労使間の取り決めですから、それに応じてということになると思います。そういうものを想定していない段階でつくった協約であるとすると、あとは協約の解釈ですから、一般論で言うのもなかなか難しいと思います。ただ、こういう場合には、もとの法理が違っていますので、そういったことを前提に置いて、最後は労使間でそこまで射程に置いているか置いていないかで判断していただくしかないと思います。私どもが言えるのは、会社分割制度はいわゆる転籍の法理とは違うシステムであり、違う法理を新たにつくっておりますので、そういうことを前提に労働協約の内容を判断していただくしかないだろうということです。