賃上げ要求額の平均は9,324円(3.58%)/UAゼンセンの要求集約状況

2018年3月9日 調査部

[労使]

UAゼンセン(松浦昭彦会長、約169万人)は8日、本部で記者会見を開き、2018賃金闘争の5日時点での要求集約状況を公表した。正社員組合員の賃上げ要求額(賃金体系維持分を含む)の単純平均は9,324円(3.58%)で、パートタイム組合員は制度昇給とベア分を合わせて、時給で37.9円(3.97%)となっている。2年連続でパートタイム組合員の要求率が正社員組合員を上回った。

規模別では300人未満の引き上げ要求率が300人以上の率を上回る

賃金闘争に参加する1,873組合のうち、5日正午現在で、正社員組合員については大手を中心に546組合(組合員約約43万人)、パートタイム組合員については196組合(約54万人)、契約社員については101組合(約3万人)が要求書を提出した。

正社員組合員の要求状況をみると、要求額を確認できる組合(544組合)の賃金体系維持分とベアなどを合計した総合引き上げ額の単純平均は9,324円で、率にすると3.58%となっている。規模別の引き上げ要求率は、300人以上が3.27%、300人未満が3.88%で、300人未満の率が全体計の率および300人以上の率を上回っている。比較可能な525組合で前年と比べると、全体計では総合引き上げ額で176円(0.05%)、300人以上は193円(0.07%)、300人未満は159円(0.02%)それぞれ上回っている。

賃金体系維持分が明確な組合について、ベアなどの賃金引き上げ分の要求額をみると、単純平均で全体計(203組合)が4,267円(1.54%)、300人以上(136組合)が4,265円(1.49円)、300人未満(67組合)が4,270円(1.64%)となっており、300人未満が額、率ともに最も高い数字となっている。

短時間組合員の引き上げ要求額・率とも前年を上回る

短時間組合員(パートタイム組合員)の要求状況は、制度昇給とベアなどを合わせた総合引き上げ額(時給)の単純平均が37.9円(3.97%)。比較可能な185組合で前年と比べると、単純平均で額は2.3円、率は0.15%、前年を上回った。加重平均(組合員一人当たりの平均)で正社員組合員とパートタイム組合員の賃上げ要求率を比べると、正社員は3.27%、パートタイム組合員が3.83%とパートタイム組合員の方が高い率となっており、パートタイム組合員が正社員組合員を上回るのはこれで2年連続。また、加重平均でのパートタイム組合員の引き上げ要求率は、UIゼンセン同盟時代を含めても過去最高だという。

一方、契約社員組合員の総合引き上げ額の単純平均は7,460円(3.58%)で、前年と比較できる90組合の単純平均でみると前年を427円(0.16%)上回った。

その他の労働条件改善項目では、正社員の初任給改定を211組合が要求。平均要求額は高卒が16万7,971円(4,572円増)、大卒が20万3,963円(4,917円増)となっている。

労働時間の改善では、151組合の要求内容を集約した。68組合がインターバル規制の導入を盛り込んでおり、77組合で年次有給休暇の取得促進を盛り込んでいる。

定年制度改定では、製造産業部門は部門要求として取り組んでおり、同部門以外の126組合の要求を集約した。うち106組合が65歳定年制度を要求。なお、製造産業部門では化繊、綿紡の労組が一斉に65歳への定年延長を申し入れている。

均等均衡処遇の取り組みでは、パートタイマー・契約社員の通勤手当の改善を要求している組合が9、時間給社員・契約社員への家族手当の支給を要求している組合が2、慶弔休暇(特別休暇)の正社員との均等付与、新設、有給休暇化などを求めている組合が21あるという。

今年の闘争方針で初めて取り組む治療と職業生活の両立支援制度の整備・充実では、有給休暇の適用拡大などを13組合が要求し、同じく今回初めて盛り込んだ健康経営に関する取り組みでは9組合が要求した。

要求水準が昨年を上回った背景に「人手不足」

会見で木暮弘書記長は、要求基準が昨年と同様のなか、今年の要求水準が昨年を上回る状況となっていることについて「人手不足が要因の1つ」と説明。「人手不足は一過性の問題ではないので、(賃上げなど)経営側もきちんとした対応をする必要がある」などと話した。

なお、UAゼンセンでは、大手組合を中心とする回答のヤマ場を3月14日に設定しているが、流通部門のライフ労働組合が本部から最初の妥結承認を受けた。賃金引き上げ分で7,044円(2.42%)、体系維持分を含めた総合引き上げ額で1万1,231円(3.86%)を要求し、満額回答を受けた。同労組はまた、高卒初任給(1万円引き上げの18万5,000円を要求)、大卒初任給(1万2,000円引き上げの22万5,000円を要求)、18歳最低賃金(1万円引き上げの18万円を要求)についても要求満額を獲得した。