臨時・非常勤職員の新しい任用制度をにらみ組織化に注力/自治労中央委員会

2018年1月31日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、約79万人)は1月29、30の両日、都内で中央委員会を開催し、「2018自治労春闘方針」を決定した。方針は、重点課題の筆頭に非正規労働者の組織化と処遇改善を掲げた。改正地方公務員法が2020年(平成32年)4月に施行され、一般職非常勤職員の新しい任用制度がスタートすることをにらみ、賃金水準の底上げに併せて、法施行前から臨時・非常勤等職員の組織化に注力する。

年度後半の賃金確定闘争に向けた春闘期の行動を重視

地方自治体の職員の賃金改定は、人事院勧告を踏まえた都道府県等に置かれている人事委員会の勧告などをもとに年度後半期に決定される。しかし、自治労では春闘を「1年の賃金・労働条件闘争のスタート」と位置づけており、単組は自治労春闘方針に基づき春闘期に要求書を当局側に提出する。実際には、春闘時期に交渉が決着しないことが多く、人事院勧告や各団体の人事委員会勧告の内容が明らかになった秋以降、賃金確定闘争で再び要求提出を行い、最終的な回答引き出しに向けて当局側との交渉を追い込む。ただ、方針は2017年の闘争結果について、要求提出や交渉などの取り組みも含めて「極めて低調な結果」に終わったと総括している。

一般経過報告における確定闘争報告(1月11日現在)によると、2017確定闘争で要求書を提出した単組割合は72.8%で、前年の81.9%を下回った。また、労使交渉実施の割合(46.6%)も、合意(妥結)に至った割合(21.2%)も昨年を下回った。単組からは「12月までに賃金確定闘争を終えており、改めて2月に要求書を提出しても賃金・労働条件の改善効果がすぐには出にくい」「春闘期に特化した課題が見出しにくい」などの声も聞かれ、また昨年は、確定闘争時期に衆議院選挙が実施されたなどの外部要因もあった。

しかし方針は、「どのような課題があっても、要求-交渉開始後に直ちに解決できるものでなく、交渉の積み重ねが不可欠」と強調。闘争のヤマ場や集中交渉ゾーンを成果の「刈り取り」時期とすれば「タネまき」(要求)がされていることが前提だと強調して、「『すべての課題解決のスタートは、春闘から』と改めて春闘の位置づけを明確にし、多くの組合員参加の下で、単組における課題の洗い出しと把握、要求設定と労使交渉・協議を進める」と、改めて春闘期の取り組みの重要性を訴えた。

非正規労働者10万人の組織化目標に沿ってすべての県本部・単組に取り組みを求める

方針は、2018春闘における重点課題として、① 非正規労働者の処遇改善と組織化 ② 賃金・労働条件の改善と職場からの働き方改革 ③ 質の高い公共サービスと社会的公正労働の実現――の3点を掲げた。筆頭に掲げた非正規労働者については、改正地方公務員法の施行(2020年4月1日)により、「会計年度任用職員」制度が創設されることをにらみ、臨時・非常勤等職員の組織化を全単組で行うとしている。

地方公務員の臨時・非常勤等職員については、現状では「特別職非常勤職員(22万人)」、「一般職臨時的任用職員」(26万人)、「一般職非常勤職員」(17万人)の3つの制度区分があるが、専門性の高い調査職などが採用されるべき「特別職非常勤職員」に事務員が採用されるなど本来の制度趣旨に沿わない任用が行われたり、補助的な業務を担う「一般職非常勤職員」の制度が明確に定められていないために、同職員の任用が進まないなどの課題があった。そのため、法改正により、特別職と臨時的任用職員の範囲について、本来の趣旨に厳格化する一方、一般職としての「会計年度任用職員」を新たにつくることにした。

「会計年度任用職員」の任用や勤務労働条件については、関係する職員団体や労働組合との協議を経て、来年の2月(~3月)議会で成立・決定することが見込まれており、方針は、「協議・交渉の時間を考えると、施行日までに時間の余裕はなく、処遇改善とともに組織化の取り組みも加速させる必要がある」と記述。春闘時期における臨時・非常勤等職員を対象にした学習会や意見交換会、アンケートの実施などを各単組に求めている。

自治労では、非正規労働者を10万人組織化する目標を掲げているが(2019年8月まで)、各単組の計画組織化数を合算しても現段階では10万人に届かないことから、「全単組の取り組みとすることが重要であり、さらなる運動の拡大と強化が必要」として、すべての県本部・単組に対して組織拡大の目標設定と具体的な行動を求めている。

年齢ポイントを踏まえて賃金の到達目標を設定、長時間労働・不払い残業の職場点検も

賃金・労働条件の改善については、全単組で賃金実態の点検を徹底し、具体的な到達目標を設定して改善に取り組む。なお、要求基準は連合の方針を踏まえるとし、すべての単組が到達すべきポイント賃金(30歳、35歳と40歳の個別ポイント)を本部が提示している。

働き方改革に向けた取り組みに関しては、長時間労働・不払い残業の是正に向け、春闘期に職場実態を点検・調査し、36協定や確認書等を点検、不払い残業の調査も行うとしている。人員確保闘争としては、「2020年施行の地公法改正を好機と捉え、改めて臨時・非常勤等職員の配置状況・業務内容を点検し、正規職員が行うべき業務についている職員の正規化に取り組む」として、地公法改正の機会を活用することで必要な要員数を訴えていく構えだ。

2017賃金確定闘争などの経過報告に関する討議では、全単組で年内決着を達成している大分県本部が「要求・交渉組合が前年よりも減少したのは大きな問題だ」と発言し、「その対策として昨年と同じようなことを記述するのではなく、3カ年計画などで立て直すべきだ」などと要望した。春闘方針や当面の闘争方針に関する討議では、県本部の一部から「会計年度任用職員」を含む臨時・非常勤職員の処遇確保・改善のための地方財源の確保を求める声が本部に対して寄せられた(山梨県本部、徳島県本部など)。

国・地方選挙では立憲民主、民進党への支援・協力を基軸に

春闘方針と併せて確認した当面の方針では、当面の国・地方での選挙への対応を明記した。当面の方針は、「自治労として新たにまとめられた立憲民主党の綱領および基本政策を検証したところ、自治労の政策および運動方針とおおむね一致すると評価できる。さらに、今日的政治情勢を踏まえ、当面の国・地方での選挙への対応については、立憲民主党、民進党への支援・協力を基軸に、希望の党については、自治労の政策を理解する候補について支援する。また、社会民主党も支援する」としている。