中闘組合の賃金水準改善は1,000円で昨年実績を500円下回る/電機連合の回答状況

2017年3月17日 調査部

[労使]

統一闘争を展開する電機連合(野中孝泰委員長、約61万人)の中闘組合(大手メーカー組合)の賃上げ交渉は16日、開発・設計職基幹労働者(30歳相当)の個別ポイントの賃金水準を1,000円引き上げることで決着した。春闘の交渉期間中に電機連合本部と大手メーカー4社の労務担当役員が、賃上げを含む人事労務上の課題について協議する産別労使交渉では、長時間労働の是正に向けて労使で協力していくことをうたった共同宣言を取り交わした。

電機連合の中闘組合を構成するパナソニックグループ労連や日立製作所労組などの11労組は、13日に開いた中闘委員会で、回答額が1,000円を下回った場合には、闘争行動(無期限の時間外・休日出勤拒否)を決行することを決め、15日の統一回答日に臨んだ。最終的に、歯止め基準の1,000円ですべての組合がクリアし、決着した。1,000円の賃金改善額は、昨年の実績を500円下回る。なお、今回の統一闘争では、東芝労組とシャープ労組が離脱している。

一時金は、11組合のうち、日立、三菱電機、富士電機、沖電気工業、明電舎、パイオニアの6組合が交渉方式で回答を引き出した。それ以外の組合は業績連動算定方式となっている。

交渉組合の回答結果をみると、日立は5.71カ月(要求5.9カ月)、三菱電機が5.83カ月(同6.14カ月)、富士電機が5.35カ月(同5.5カ月)、沖電気工業が4.2カ月(同5.0カ月)、明電舎4.7カ月(同5.3カ月)パイオニア4.1カ月(同4.5カ月)となっている。日立と富士電機、パイオニアが昨年実績を上回った。

産業別最低賃金(18歳見合い)では、現行の協定額を1,000円引き上げて16万1,000円とすることで各労使が合意した。

中闘組合はこのほか、有期契約労働者の無期転換に向けて労使で協議していくことなどを確認。富士通労組などは、勤務間インターバル規制の導入に向けて協議していくことで合意した。

長時間労働の是正に向けた「電機産業労使共同宣言」を確認

3月11日に持たれた、電機連合本部と、日立、三菱電機、富士通、NECの4社の労務担当役員による産別労使交渉では、「長時間労働の是正をはじめとする働き方改革に向けた電機産業労使共同宣言」をまとめた。電機連合加盟の各社では、総実労働時間の縮減に向けた取り組みが効果的に進んでいない状況もあり、共同宣言は「電機産業で働くすべての労働者が安全で健康に働くことができ、働きがいをもって能力を最大限発揮できる環境を整備することが、労働の質と生産性の向上につながり、産業の持続的な発展のためにも必要な取組みである」と強調。「電機産業労使は、これらの認識を共有し、長時間労働の是正をはじめとする働き方改革の実現のために相互に協力し、多様な人材の活躍や生産性向上の実現に向けて最大限の努力を行い、今後もより一層の取り組みを推進していく」としている。

15日、金属労協本部で行われた会見で、野中委員長は、「統一闘争による固い結束のもと、各社減収減益基調のもとでの厳しい交渉だったが、1,000円の賃金改善を獲得できた」と振り返り、共同宣言については、「とりまとめることができたことの意義は大きい」と評価した。