地方公務員の月例給引上げを求める方針を決定/自治労定期大会

(2016年9月2日調査・解析部)

[労使]

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、約80万7,000人)は8月25、26の両日、長崎県長崎市で定期大会を開催し、地方自治体の給与改訂に向けた「2016自治体確定闘争」などを柱とする当面の闘争方針を決定した。秋以降の確定闘争において、地方公務員にも月例給の引き上げを求めていく。

「霞が関と地方との公務員の給与格差拡大」を懸念(川本委員長)

8月8日に人事院が国家公務員の給与等に関する勧告を行った。人事院勧告は国家公務員を対象としているが、地方自治体の職員の給与にも大きな影響を与える。人事委員会が置かれている地方自治体では、人事委員会が人事院勧告を勘案した給与勧告することが通常となっている。また、地方自治体の人事委員会の勧告は、人事委員会をもたない自治体の給与改定に影響する。

あいさつした川本委員長は今年の人事院勧告に触れ、給与引き上げ原資について、「人事院勧告が、原資を基本給にあたる俸給表だけではなく、一部を地方にはない本府省業務調整手当の引き上げに配分させていることは、霞が関と地方との公務員の給与格差をさらに拡大させるものであり、問題だ」と主張。「地方公務員の給与に関しては、人事委員会の勧告はこれからであり、公民較差の状況も見定めつつということになるが、自治体における較差配分のあり方については、合意に向けた十分な話し合いが必要だ」と強調した。なお、国家公務員に対する勧告自体は、「民間春闘の結果を踏まえ、公務労働者の賃上げは当然のことだ」とし、「政府・与党に対し、労働基本権制約の代償機能たる人勧を尊重し、対応するよう連合・公務労協に結集して取り組みたい」と述べた。

今年の国家公務員に対する給与勧告は、民間給与の水準が同月分の国家公務員給与を上回っているとして、708円(0.17%)引き上げることを求めた。これにより、人事院の引き上げ勧告は3年連続となった。ただし、708円の改定原資の内訳をみると、純粋に俸給の引き上げ分となるのはそのうち448円で、206円は本府省の課長補佐、係長、係員を対象に支給されている「本府省業務調整手当」の引き上げ(係長と係員のみ)に使われ、54円が俸給等の改定に伴い手当額が増減する分である「はね返り分」に回る。一時金は前年から0.1カ月分引き上げ4.3カ月とするよう求めた。

また勧告は給与制度について、扶養親族の状況に応じて支給される扶養手当の見直しにも言及。現行では、配偶者にかかる手当として1万3,000円が支給されており、子の場合は一人につき6,500円、父母等についても一人につき6,500円が支給されている。勧告は、配偶者にかかる手当を6,500円に減額し、その代わり、子の手当を1万円に増額することを提案している。

賃金確定闘争のヤマ場は11月14日の週を基準に設定

今大会は現運動方針の中間期にあたるため、当面の闘争方針を提案し、決定した。2016自治体確定闘争の人事委員会対策では、県本部と県職単組とが連携し、人事委員会対策の取り組みを強化するとしている。対策の重点課題として、公平・公正な公民比較を行い、月例給の水準を引き上げることや、一時金についても同種・同等な公民比較を行うことを原則とし、支給月数を引き上げること、勧告にあたっては組合との交渉・協議、合意に基づき進めることなどを掲げている。

臨時・非常勤等職員の賃金・労働条件改善では、秋季・確定闘争の重点課題と位置付け、常勤職員の給与表がプラス改定される場合には少なくともその改定率に基づいた臨時・非常勤等職員の賃金の引き上げを求めるなどとしている。

2016確定闘争の具体的推進方針などは9月26日の第1回拡大闘争委員会で決定するが、対自治体賃金確定闘争のヤマ場は11月14日の週を基準として設定するとした。

現業職員や公営企業の職員に関しては、現業職員・公企職員ともにアウトソーシングや欠員不補充、事務職員への任用替えなどによって職員数の減少が目立つという。経済財政諮問会議での議論によって、歳出効率化に向けた業務改革で他団体のモデルとなるようなものを地方交付税の基準財政需要額の算定に反映する取り組みである「トップランナー方式」が導入されたことも、民間委託の推進に繋がりかねないとして自治労は警戒を強める。

現業職員や公企職員の闘争では、「現場力を活用した質の高い公共サービスの確立に必要な人員確保と賃金・労働条件の改善をめざす」として、すべての単組で評議会を結成したうえで、交渉サイクルを確立することなどを重点課題にあげた。

闘争の進め方では、10月に本部が自治体の現場力をテーマとする集会を開催。県本部すべてで闘争委員会を設置して、基本要求内容モデルに沿って交渉を行い、それに伴う労働協約の締結をめざす。

「臨時非常勤等10万人組織化」の取り組みを強化

組織拡大では、2015年9月から2019年8月まで4カ年の「第4次組織強化・拡大のための推進計画」を踏まえ、「新規採用職員組織率の全国平均70%台への回復」や、「臨時非常勤等10万人組織化」に目下、取り組んでいることを踏まえ、方針は、県本部での組織拡大行動を強化し、2017年1月には各県本部に対して「2016-2017年県本部組織拡大行動計画」中間総括の提出を求めるとしている。

「臨時非常勤等の10万人組織化」は、2016年4月~2017年12月までが取り組みの第2ステージとなる。本部は、県本部を通じて拡大促進・組織化推進単組の取り組み状況について10月に中間報告を求め、2017年1月までに県本部に組織化推進単組の再設定を求める。県本部では、計画の実践のほか、学習会や経験交流なども行うとした。

参院選一人区での野党連携を「積極的に評価すべき」(川本委員長)

さきの参議院選挙や政治情勢について、川本委員長は挨拶で、「衆参両院で『改憲勢力』が、衆参両院で憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を上回る結果となったことを受け、改悪に向けた議論が加速していくことが危惧される」と述べた。参議院選挙での一人区での野党の連携については、「一人区の勝敗は11勝21敗という結果ではあったが、民進党だけであれば、より厳しい結果に追い込まれていたことは明らかであり、積極的に評価すべき」と述べた。