定昇相当2%プラス5,600円/私鉄総連の賃上げ要求の職場討議案

(2015年12月4日 調査・解析部)

[労使]

大手私鉄やバスなど約230の労働組合が加盟する私鉄総連(藤井一也委員長、11万4,000人)は3日、都内で第1回中央委員会を開催し、16年春闘の職場討議案を提起した。月例賃金の産別統一要求案として、定昇相当分(賃金カーブ維持分)2.0%に加え生活維持分・生活回復・向上分として5,600円(2%相当)の引き上げを求める考え。職場討議を経て、2月2日の拡大中央委員会で正式決定される。

「人への投資」の重要性を主張

藤井委員長はあいさつで、私鉄大手の第2四半期の連結決算動向を見ると8社が最高益となるなど企業体力は十分であり、地方を含めて全体的には改善傾向にあるとしたうえで、賃上げについて、「14、15年と積み上げてきたものを継続させ、全力を挙げて結果につなげなければならい」と強調した。

産別統一要求の考え方としては、連合が賃上げの具体的な要求として掲げる「2%程度を基準(定期昇給相当分を含め4%程度)、中小共闘については1万500円(うち賃金カーブ相当分4,500円)以上を目安)」を踏まえ、「人への投資」の重要性を労働組合から積極的に主張するとしている。

私鉄・バス組合の統一要求では、実質生活の維持・向上と賃金水準を踏まえ、定昇相当分(賃金カーブ維持分)と、生活維持+生活回復・向上分(ベースアップ分)要求の獲得に取り組むとした。そのうえで月例賃金の要求としては、各組合員の現行基本給を1人平均で、定期昇給相当分2.0%に加え生活維持分及び生活回復・向上分(ベア分)として5,600円の引き上げを求める(昨年は2.0%プラス5,500円)。その根拠として生活維持分として過年度物価上昇分(2015年4~9月の消費者物価指数・東京都区部総合の前年同月比)を0.3%とし、生活回復・向上分は他産業との賃金格差、安全運行やサービス向上に向けた組合員のたゆまぬ努力に対する「人への投資」という観点を勘案し1.7%相当としている。

年間臨時給(一時金)については、「賃金の後払い」的な性質を持つことを踏まえ、中期賃金方針で定めた最低水準3カ月、目標水準5カ月、到達水準5カ月以上をめざす。

また、産業別最低賃金の要求を2015年の地域別最低賃金プラス10%に設定。さらに、すべての労働者の処遇改善に向け、契約社員やパートなど非正規労働者の時間給については、「60円以上」を基本に改善を求める。

定昇制度を基本とした賃金制度の確立・拡充を通年的に取り組む

秋の統一労働協約闘争の統一要求として、スト配置を背景に取り組んだ「定期昇給制度を基本とした賃金制度の確立と拡充」などについては、231組合の約半数で協議機関の設置などおおむね検討に値する回答を引き出している。16春闘方針でも「賃金実態を把握し、定昇相当分(賃金カーブ維持分)の算定、是正課題の洗い出しを行い、定昇制度を基本とした賃金制度の確立・拡充を2015秋季年末闘争に引き続き、通年的に取り組む」としている。