新会長に事務局長の神津氏、新事務局長にはUAゼンセン会長の逢見氏を選出/連合定期大会

(2015年10月9日 調査・解析部)

[労使]

連合は6、7の両日、都内で第14回定期大会を開き、2016~2017年度の運動方針を決めた。役員改選では、3期6年の任期を努めた古賀伸明会長が退任し、後任に神津里季生事務局長を選出。後任の事務局長には、UAゼンセンの逢見直人会長が新たに就任した。神津新会長は会見で、「社会全体を巻き込み、一体となって運動展開していく」などと抱負を語った。

「反転攻勢に向け力合わせを」(古賀前会長)

冒頭、あいさつした古賀会長は、先月末に閉幕した通常国会の動きについて、成立した改正労働者派遣法では「派遣労働者の雇用安定や処遇改善をおざなりにしたまま、無原則な派遣労働の拡大を許す規制緩和が、多くの反対の声にもかかわらず強引に決められてしまった」と指摘したうえで、「ここで立ち止まることなく、職場における徹底した点検活動、そして粘り強い法改正に向けた運動を通じて、不安定で低処遇な派遣労働の拡大を食い止め、派遣で働く人々の処遇改善をはからなければならない」と強調した。

写真・古賀前会長挨拶

さらに、安全保障関連法についても触れ、「多くの国民が法案への疑念や疑問を払拭できず、成立をいそぐべきではないと全国各地で声を上げたにもかかわらず、与党は丁寧な合意形成を放棄し、審議が不十分なまま、数の力で強引に押し通した」などと政府の対応を批判。「連合はこれまで、労働者保護ルール改悪阻止に向けた全国縦断アピールリレー、数度にわたる集会、デモ行進、国会前の座り込み、国会包囲行動など様々な行動を展開してきた」と運動を振り返るとともに、「私たちの闘いは、労働基準法の改悪阻止をはじめとして、これからも続く。働く者・生活者との溝を深める安倍政権に対する反転攻勢に向けて、引き続き力を合わせることが重要だ」と訴えた。

既存の枠を超えた姿を見せていくことが必要

今大会で退任した古賀会長は、「連合は様々な課題に挑戦し、そのすそ野は着実に広がりつつあるが、一方で結成から四半世紀が経過してもなお、見据えなければならない課題がある」として、①連合が掲げている方針一つひとつを、職場や地域などそれぞれの組織で徹底して共有化する②「わが組織」「わが企業」「わが産業」といった既存の枠を越え、地域や国際社会に目を向けた活動を通じて、「連合」の姿をしっかりと見せていく――ことの必要性を主張した。

底上げ・底支え、格差是正が喫緊の課題

具体的な取り組みとして、超少子高齢・人口減少社会のなかで、「労働力の確保や財政、社会保障制度の安定性を確保することは待ったなしの課題。その克服には、デフレ脱却と個人所得の増加を通じた経済の好循環を定着させ、全員参加型社会の実現に向けた政策を実行していかねばならない」と述べるとともに、「私たち自身も主体的に働き方や処遇をどう見直していくかが問われている」と指摘した。

そのためには、「持続可能な社会のためにも、底上げ・底支え、格差是正が喫緊の課題だ」として、「2016春季生活闘争では(月例賃金の底上げにこだわり、賃上げを果たした過去2年の春闘に)引き続き、賃上げを求める方向で検討を深めるとともに、非正規労働者の処遇改善、企業間規模や男女間の賃金格差への取り組みもさらに推進する必要がある」と強調。地域における社会的な賃金相場の形成や最低賃金の引き上げに関しても、「2015春季生活闘争における『地域フォーラム』の取り組みを継続し、地域における理解をさらに広げていくことが重要だ」と述べた。

労働時間の縮減も急務

また、長時間労働の是正では、「命と健康を守るためにも労働時間の縮減が急務であることはもちろんだ」としたうえで、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、ライフステージに応じた働き方等にも言及。「家庭や地域での活動を含めた生活時間が保障される働き方の実現は、これからの経済の成熟化、超少子高齢・人口減少社会の克服に欠かせない条件だ」とした。

技術革新への対応についても触れ、「情報通信技術の発展は日進月歩だが、その一方で技術革新が雇用の劣化をもたらすのではないかとの懸念もある」と指摘。「大切なのは、いかに人間らしい働き方を実現し、日本が誇る『働くことを心に込める』特性を活かし続けていくか。そのために、マクロの分配のあり方を含め、労働側として積極的な意見提起を行っていくことが重要だ」と述べた。

労働者保護ルールの改悪には徹底して対峙

一方、政治情勢は、「政権交代以降、一旦はなりを潜めたかにみえた新自由主義的な政策思想が、再び頭をもたげつつある。特に警戒すべきは成長戦略の名のもとに、さらなる雇用の劣化をもたらす政策に固執する考え方だ」と警鐘を鳴らしたうえで、「『働くことを軸とする安心社会』にそぐわない労働者保護ルールの改悪には徹底して対峙していかねばならない」と強調するとともに、「いまこそ、働く者や生活者の声に向き合う政治が必要。そのためにも、政権交代可能なもう一つの政治勢力が結集し、『一強多弱』からの転換をはからなければならない」とし、比例区に傘下の産別から12人の組織内候補を擁立する来夏の参議院選挙での必勝を呼びかけた。なお、18歳選挙権についても、「導入が迫っており、若者の政治への参画に向けた労働組合としての関わり方も重要な課題だ」と付言した。

この2年で30万人超を組織化

一般活動報告では、組織拡大実績が報告された。前回大会以降の2年間(2013年10月~2015年9月まで)の組織拡大の最終実績は、497組合30万6,518人(うちパート等16万2,937人)で、目標とした数字に対する到達率は42.6%。組織拡大数は、直近の3期6年の組織拡大実績値で最も大きかった前期実績値(23万7,113人)を超える数字。この結果、組織人員は682万4,454人となり、680万人を超えた。

連合は組織化で2020年に「1,000万連合」を実現する方針を掲げており、連合本部と産別、地方連合会が連携する「三位一体」の取り組みを行っているほか、①組織化専任チームの新設(2年間で165案件に着手し、35組合5万8,677人の新規組織化を図る)②連合中央ユニオンの結成(今年3月結成後、7分会を結成)③連合加盟労働組合リストの設置(今年8月末現在、1万1,212組合が登録され、アクセス数は5万件に達している)④オルガナイザーやアドバイザーの研修会の実施――などに取り組んできた。

こうした拡大実績について連合は、「構成組織・地方連合会の最大限の努力の結果」と評価しながらも、「全体として拡大目標数に届かなかった現実を受け止め、なお一層の努力が必要だ」とした。

今後に向けては、「労働組合をつくり育てることのできる人材の育成、配置が急務」とするとともに、「新たな加盟形態の可能性等にも着手し、産業構造や就労形態等の変化に対応した組織化戦略を進めていく」構え。あわせて「相対的に厳しい労働条件下にある非正規労働者や中小企業労働者等に対し、労働組合への関心を高め、組織化を通じた労働条件改善を図っていく」考えも示している。

大衆運動を発展させていくことが連合の役割

大会で決定した「2016~2017年度運動方針」は、「働く者が大同団結できる社会正義の旗を掲げ、大衆運動を発展させていくことこそが、わが国唯一のナショナルセンターである連合の役割」と明記。「全ての働く者の声を代表するものとして、その役割・責任に対する自覚を高めつつ、力量発揮に努めていく」としている。

活動内容の前段で、組合若手リーダーへのアンケート調査と、連合に対する認知度や労働組合のイメージを調べた世論調査の結果を取り上げた。前者では、連合が取り組んでいる日常の活動が単組・職場に十分に伝わっていないことが判明。後者では、連合について「活動内容まで知っている」人が20歳代ではわずか7%に過ぎず、労働組合に対するイメージも20歳代の28%が「どのような活動をしているのかわかりづらい」、16%が「身近に感じられない」と回答するなど、若年層を中心に活動や認知度が十分に理解されていない現状が浮き彫りになっている。

こうした実情を踏まえ、方針は具体論に向けた問題意識として、①〝自分たちの〟労働組合として職場や地域で「振り向けばそこにある身近な存在」になろう ②ともに悩み、ともに議論し、ともに行動する姿で信頼の輪を ③一人ひとりの力をつなぎ、集団のパワーとして高めていく――ことを示している。

『働くことを軸とする安心社会』の実現に向けて積極的に発信し行動する

今後2年間の運動の基軸は、「組織基盤の強化に引き続き取り組むとともに、新たな運動の芽を伸ばしながら、『働くことを軸とする安心社会』の実現に向け、連合の考え方を積極的に発信し行動する」としている。

具体的には、集団的労使関係の拡大や2014、2015春季生活闘争の流れをより強く波及力の高いものにすることなどにより、すべての働く者の底上げ・底支え、格差是正の実現に取り組む。

また、ワーク・ライフ・バランス社会に向けた長時間労働の是正や男女平等参画社会の実現、国際労働運動との連携によるグローバルルールの構築などを目指す。

さらに、連合・労働者福祉協会・労働金庫・全労済の4団体による支え合い・助け合いの運動を推進することなどを通じて、市場万能・短期利益最優先の風潮を変える。

このほか、運動の強化に向けて、SNSやWebを活用することなどで情報発信力を強化したり、政策立案能力・政策実現力を高めることなども盛り込んでいる。

2016春季生活闘争は過去2年の流れの継続を求める意見が

運動方針の討議では、8組織から発言があった。2016春季生活闘争の方針の検討については、JAMが「中小企業労働者の賃金データの活用を進め、これを底上げ・底支えに活用すべきだ。2016春季生活闘争においても(2014、2015春季生活闘争からの)継続した要求とし、しっかり結果を出していくことが求められる」などと発言。JR総連も「2016春季生活闘争は、2014、2015春季生活闘争で戦い抜いた闘争方針と賃金要求の基本的な考え方をベースにした闘いの構築をお願いしたい」などと要望した。

一方、非正規労働者に関しては、UAゼンセンが、「700万人弱のうち、パートタイムの組合員が100万人近くになろうとしている。この人たちに具体的にどのようなことができるのかの視点に立って運動を強化して欲しい」との意見を述べたほか、ヘルスケア労協からは、「(介護職場は)そもそも非正規で働く人が多く、処遇改善を勝ち取ったとしても離職する者が後を絶たない。抜本的な改善・底上げとして介護報酬のプラス改定が必要だ」として、政策制度要求の実現を求める声が上がった。

新役員体制を確認

役員の改選を行った。会長はじめ、すべての役職において、立候補者数が選挙管理委員会が公示した定数どおりだったため、挙手により新役員体制を一括して採決し、確認した。主な役職の新役員の顔ぶれは以下のようになった。

写真・新役員

▽会長=神津里季生(基幹労連)(新任)▽会長代行=川本淳(自治労)(新任)▽副会長=島田尚信(UAゼンセン)(新任)、相原康伸(自動車総連)(留任)、有野正治(電機連合)(留任)、宮本礼一(JAM)(新任)、工藤智司(基幹労連)(留任)、加藤良輔(日教組)(留任)、小俣利通(JP労組)(留任)、野田三七生(情報労連)(留任)、岸本薫(電力総連)(留任)、永芳栄始(JEC連合)(留任)、難波淳介(運輸労連)(新任)、松谷和重(フード連合)(留任)、芳野友子(JAM)(新任)▽事務局長=逢見直人(UAゼンセン)(新任)▽副事務局長=南部美智代(自治労)(留任)、新谷信幸(電機連合)(新任)、山本和代(日教組)(新任)、安永貴夫(情報労連)(留任)、木村裕士(電力総連)(留任)。

選出後に挨拶した神津氏は、「来る2年間は一筋縄ではいかないことを覚悟している」とし、「すべての働くものの政策実現、真っ当な政治を自分たちの手に取り戻すことに向けて、着実に、そして力一杯、運動を前に進めていくことを誓う」などと抱負を述べた。

取り組みをしっかりアピールしていく/神津新会長

大会後に行われた会見で神津新会長は、今後の連合としての取り組みについて、「2年間、事務局長をやってきた。いい取り組みはしているのだが、それが世の中には伝わっていない。一般組合員もメディアを通して連合を見る面もあるので、しっかりアピールしていきたい」とし、現政権にどう対峙するかについては「社会全体を巻き込み、一体となって運動展開していくことが重要だ」などと述べた。