新規採用者の組織化などを柱とする新たな組織化計画の討議案を提示/自治労の中央委員会

(2015年6月3日 調査・解析部)

[労使]

地方自治体で働く公務員などを組織する自治労(氏家常雄委員長)は5月28、29の両日、岩手県盛岡市で中央委員会を開催し、今年の人事院勧告に向けた取り組みなどを柱とする当面の闘争方針を決定するとともに、向こう4年間の新たな組織強化・拡大計画の職場討議案を確認した。討議案では、組織拡大に向け、新規採用者の組織化に力を入れるなどとしている。

給与制度の総合的見直しへの対応で、「国と同様の措置となることを阻止」

人事院勧告をめぐっては、昨年の国家公務員の給与に関する勧告で、俸給水準を平均2%引き下げたうえで、地域手当の支給率を再設定する「給与制度の総合的見直し」が盛り込まれた。国家公務員に対しては今年4月から実施されており、総務省などは地方に対して、国と同様の措置の実施を要請している。

地方への影響の状況について、自治労本部の資料から詳しくみていくと、自治労単組の3月末時点での状況は、「当局提案がない」が159単組(10%)、「2015年度中の実施を見送った」が99単組(6%)、「継続協議」が95単組(6%)、「実施で妥結」が1,170単組(73%)となっている。47都道府県のうちの42の人事委員会、22政令市等のうちの4つの委員会が、国に準じた見直しを勧告したという。なお、岩手、秋田、群馬、京都、熊本の5府県は勧告しなかった。

73%の単組が「実施で妥結」したことについて自治労は「大部分の都道府県人事委員会が勧告し、さらに総務省が通知や各種会議などにおいて『国と同様の措置』を自治体に対して強く要請したため」と説明する。ただ、俸給表の引き下げについて妥結した自治体の8割は、国と同様の措置ではなく、「引き下げ幅の圧縮や現給保障期間の延長など、国に比べて一定の緩和措置を獲得」(自治労)しているという。川本書記長は「主体的な勧告をしていこうという地方も出てきている。8割が国と同様に実施していないことは、自治労単組の結集力が強まっていることのあらわれだ」と話している。

当面の闘争方針は、「給与制度の総合的見直し」に対するこれまでの取り組みについて、「3次にわたる統一行動を設定し、たたかいを進めた。各単組は粘り強い交渉を展開し、見直しの実施見送りを含め8割以上の単組で国と同様の措置となることを阻止することができた」と総括する。

人事院・人事委員会対策、総務省対策を強化

今年の人事院・人事委員会は、勧告の基礎資料となる民間給与実態調査を5月1日~6月18日の日程で実施することになっている。自治労では、国家公務員に対して4月1日から平均2%引き下げた俸給表が適用されていることから、たとえ公務員にとってプラス勧告となったとしても、地域手当引き上げの経過措置の前倒しなど俸給表以外の面で較差解消措置がとられるおそれがあると指摘。その場合、地域手当の非支給地が約75%を占める地方では、同様の手段をとることができずに「民間との較差を解消する手段が極めて限られる」(自治労)と懸念する。

そのため、自治労では、「民間動向や物価動向を踏まえれば地方公務員の給与は当然に引き上げられるべき」とし、夏までの人事院・人事委員会対策、総務省対策を強化するとしている。当面の闘争方針によると、人事院へは6月中旬に要求を提出し、8月上旬までに3回の全国統一行動(時間外職場集会)を実施する。要求項目では、非常勤職員の給与引き上げなども盛り込む。また、公務員人件費の削減圧力が強まることを警戒しながら地方財政確保の対策を強化する構えだ。

氏家委員長は中央委員会のあいさつで、「アベノミクスという経済の好循環をつくり出していく意味では公務員給与も重要なはずだが、総合的見直しの実施はそれとは逆行している」とし、「この夏までに政府が財政健全化計画を策定するとしていることからも、本年勧告およびその取扱いに関して、強く警戒し、取り組みを進めなければならない」と強調した。

向こう4年間の組織化計画を8月の定期大会で決定

中央委員会では、過去4年間(2011年9月~2015年8月)の「第3次組織強化・拡大のための推進計画」の総括と、向こう4年間(2015年9月~2019年8月)の「第4次組織強化・拡大のための推進計画」のそれぞれの討議案を確認した。

第3次計画の実績をみると、2013年度までの新規加入の累計は157単組、7,258人。単年度平均にすると約52単組、約2,400人となり、自治労が単年度目標としていた2万人とは大きな乖離がでている。また、新規採用者の組織率をみると、全国規模での自治体における新規採用者数は回復傾向にあるにもかかわらず、2003年は76.1%だったのが、2012年時点では65.0%へとさらに低下した。

単組では、新たな組合役員の発掘さえも難しくなってきているほか、臨時・非常勤等職員の急激な増加に組織化が追いついていない状況にあるとしている。さらに、臨時・非常勤等職員、再任用・再雇用職員を含めた職場全体における組織率が自治労の調査開始以来、初めて50%を切り、「自治労にとって極めて深刻な問題が明らかになった」と危機感をあらわにしている。

こうした状況をうけて、第4次計画案は、最重点課題を①次代の担い手育成、②新規採用者の組織化、③非正規労働者の組織化――の3点に絞りこんで設定した。

「次代の担い手育成」に関する取り組みでは、本部は教育センターの機能を強化するとともに、現行の専従者用のセミナーなどの改善やメニューの豊富化を図るとしている。県本部では、すべての県本部での研修体制の確立をめざす。単組では、多くの組織で業務が委員長や書記長など一部の役員に集中している課題もあることから、入職して一定の年数がたった場合に、何らかの役割を分担してもらい、身近な課題の解決にあたるなどの経験を積ませる取り組みをめざす。

「新規採用者の組織化」では、まず、単組ごとの組織化目標を設定し、自治労としては新規採用者組織率を2019年度に70%台まで回復させることを目標とする。本部の取り組みでは、毎年、新規採用者組織化状況調査を行うほか、新規採用職員の組織化に特化した会議を設定する。組織化のマニュアルもリニューアルする。県本部では、各単組の目標値を協議・設定し、単組の実情に応じた支援を行う。単組では、新規採用者の入職日である4月1日に組合説明会が行えるよう、当局との調整をはかるとしている。また、新規採用者むけの教宣物を作成し、全新規採用者へ配布する。

「非正規労働者の組織化」では、10万人の組織化を目標に掲げ、本部は組織拡大行動委員会をより活性化するほか、毎年度、組織化状況を調査する。県本部では、県本部としての組織化計画を策定するほか、単組の非正規労働者組織化担当者との会議を定期的に行うとしている。単組でも計画を策定し、委員長、3役はこれまで以上にリーダーシップを発揮して組織化推進体制を構築するとともに、担当者を配置して取り組みを強化する。

3つの最重点課題の目標を達成するため、青年層を意識した機関誌の作成や、役員任期の複数年化、非組合員の労働条件の「ただ乗り」についての問題提起、競合組織対策の強化なども提言している。自治労では8月に開く定期大会で、「第3次組織強化・拡大のための推進計画」の総括と「第4次組織強化・拡大のための推進計画」を最終確認・決定する予定。