総額単純平均で正社員8,052円、パート等24.2円を獲得/UAゼンセン2015賃金闘争

(2015年3月20日 調査・解析部)

[労使]

UAゼンセンの2015賃金闘争は、19日10時時点までに、正社員組合員については78組合、短時間組合員については31組合が妥結した。その総額単純平均の集計をみると、正社員では8,052円(2.79%)を獲得。対前年同組合比では+1,024円(+0.33%)となっている。ベア等の賃上げ分(体系維持分と区分できる48組合の平均)は2,682円(0.91%)。パートタイマー等短時間組合員については、時間給の引上げで24.2円(2.55%)を獲得。対前年同組合比で+5.7円(+0.56%)となっている。

一人平均賃上げで1万円超えの回答相次ぐ

UAゼンセンは、スーパーマーケット・百貨店などの小売・流通業界や、繊維や医薬品などの製造業、外食産業など幅広い業種をカバーする、わが国最大の産別組織(逢見直人会長、約147万人)。2015賃金闘争は、平均賃金の引上げ要求基準を「賃金体系(カーブ)維持分に加え、3%を基準に少なくとも2%以上」に設定。ミニマム水準に届かない場合は、賃金体系維持分も含めて10,500円を基準に据え、1850組合が臨んでいる(※1)。

妥結承認第1号となったのは、ファミリーレストラン最大手の「すかいらーく労組」。3月4日に、一人平均賃上げで10,500円(3.52%)を獲得した。

これに続き、外食産業では早期決着の高額妥結が相次いだ。長崎ちゃんぽん等のレストラン等で知られる「リンガーハットグループ労組」は17日、一人平均賃上げ10,026円(3.33%)で妥結。また、「餃子の王将ユニオン」も18日、昨年に続く1万円以上となる同10,500円(4.92%)を獲得した。

会社側の公表によると、10,500円の内訳は、定期昇給6,200円+ベア4,300円。賃上げ判断に至った理由について、同社は「来期以降の当社を取り巻く環境は、食材価格の高騰や日常食に対する消費者の節約志向が継続し、厳しい経営環境が続くものと思われるが、今後の事業展開のための優秀な人材の確保と社員の生活水準の向上、及びモチベーションアップが経営理念に掲げる『顧客満足の創造』にもつながると考え、UAゼンセン餃子の王将ユニオンからの要求に満額回答した」(※2)などと説明している。

また、18日は「元気寿司労組」も、一人平均賃上げ10,436円(4.16%)で妥結した。

カルビーグループ労組が14,801円(5.14%)を獲得

外食産業にとどまらず、18日までに妥結したところでは1万円超えが目立つ。各種スポーツ用品等を製造・販売する「アシックス労組」は、一人平均賃上げ11,903円(3.22%)で妥結(12日)。また、家具等を企画・販売する「ニトリ労組」も、ベア5,042円+手当改定180円+賃金体系維持原資4,963円の一人平均賃上げで1万185円(3.16%)を獲得した(16日)。

菓子・食品を製造・販売する「カルビーグループ労組」は、賃金引上げ分(ベア)6,000円(2.08%)+賃金体系維持原資8,801円(3.06%)の一人平均で14,801円(5.14%)にのぼる賃上げに漕ぎ着けた(16日)。UAゼンセンが18日までに公表した中闘速報によると、一人平均の賃上げ額は同労組がもっとも高い水準となっている。

また、ケミカル・繊維、住宅・建材、エレクトロニクス、ヘルスケアなど幅広い事業を手掛ける「旭化成グループ労組連合会」も、賃金引上げ分3,540円(1.05%)+賃金体系維持原資6,599円(1.96%)の一人平均賃上げで10,139円(3.01%)を妥結した(18日)。

外食関連は3%台、スーパーマーケット関連では2%台後半に妥結集まる

UAゼンセンは、多様な産業を網羅的に組織しているため、「流通部門」「製造産業部門」「総合サービス部門」の3部門に分けて運営している。19日10時時点の妥結集計結果によると、正社員組合員の単純平均で、流通部門の賃上げ額・率は7,147円(2.58%)、製造産業部門は8,582円(2.73%)、総合サービス部門は9,007円(3.19%)となっている。

具体的にみると、流通部門では、首都圏最大の食品スーパーマーケットチェーンである「マルエツ労組」が、賃金引上げ分3,844円(1.3%)(ベア3,500円+手当改定344円)+賃金体系維持原資4,247円(1.43%)の一人平均賃上げで8,091円(2.73%)を獲得。また、1都2府5県に約240店舗を展開する「ライフ労組」は、賃金引上げ分(ベア)2,046円(0.74%)+賃金体系維持原資4,257円(1.53%)で、一人平均賃上げ6,303円(2.27%)で妥結した。1都3県にわたるスーパーマーケットチェーンの「いなげや労組」は、賃金引上げ分4,010円(1.28%)(ベア3,946円+手当改定64円)+賃金体系維持原資3,537円(1.13%)で、一人平均賃上げは7,547(2.41%)となっている。

滋賀を中心とした総合スーパー等の「平和堂労連 平和堂労組」は、一人平均賃上げで8,000円(2.75%)。中国・九州地方に展開する「全イズミ労組」も、同7,188円(2.95%)で妥結している。また、福島県を中心に宮城県、山形県、 栃木県、茨城県に広く店舗展開する「セブン&アイ労連 ヨークベニマル労組」は、賃金引上げ分3,297円(1.14%)(ベア2,397円+手当改定900円)+賃金体系維持原資3,429円(1.18%)の一人平均賃上げで6,726円(2.31%)を獲得した。

愛知県三河地域で事業展開するスーパーマーケットチェーンの「ドミーユニオン」は、賃金引上げ分3,193円(1.12%)(ベア1,000円+手当改定1,205円+体系是正等988円)+賃金体系維持原資4,752円(1.67%)で、一人平均賃上げは7,945円(2.78%)となっている。また、関西地方で150店舗を展開する「万代ユニオン」は、賃金引上げ分3,074円(1.13%)(ベア1,085円+手当改定29円+体系是正等1,960円)+賃金体系維持原資5,138円(1.89%)の一人平均賃上げで、8,212円(3.02%)を獲得した。

一方、製造産業部門をみると、「全東レ労組連合会」が、賃金引上げ分2,600円(0.90%)+賃金体系維持原資5,826円(2.02%)で、一人平均賃上げ8,426円(2.92%)で妥結。また、「クラレグループ労連」は、賃金引上げ分2,200円(0.73%)+賃金体系維持原資5,400円(1.8%)の一人平均賃上げで7,600円(2.53%)を獲得した。「武全労 武田薬品労組」は、賃金引上げで3.68%(組合員平均)、30歳・高卒12年の個別賃上げで8,700円となっている。なお、いずれも部門到達目標に到達済みの労組である。

総合サービス部門については、釜揚げうどん 「丸亀製麺」等で知られる「トリドール労組」が、賃金引上げ分(ベア)2,441円(1.02%)+賃金体系維持原資5,338円(2.22%)の一人平均賃上げで7,779円(3.24%)で妥結した。

また、ファミリーレストラン・ロイヤルホストや天丼のてんやなど外食産業のほか、リッチモンドホテルなどを全国展開する「ロイヤルグループ労組」も、一人平均賃上げで7,308円(2.9%)を獲得。「ジョリーパスタユニオン」は、一人平均賃上げで8,977円(2.95%)の回答を引き出している。

パート等の引上げで、ジョリーパスタユニオンが42.9円(4.83%)増

UAゼンセンでは、組合員数の約5割をパートタイマー等が占めている。そのため、短時間組合員についても、①正社員と同視すべき者については、正社員組合員と同じ制度、考え方に基づいて賃金の引上げを要求、②正社員と職務の内容が同じ者については、制度に基づく昇給・昇格分に加え、3%を基準に少なくとも2%以上で、正社員組合員との均衡を考慮した賃金の引上げを要求、③正社員と職務の内容が異なる者については、3%を基準に少なくとも2%以上で要求する、との方針を掲げ、2015賃金闘争に臨んでいる。

UAゼンセンの中闘速報によると、契約社員やパートタイマーでも3%を上回る回答や、正社員の賃上げ率を凌ぐ回答がみられる。公表された妥結結果によると、最高水準は「ジョリーパスタユニオン」で、42.9円(4.83%)を獲得。引上げ額もさることながら、引上げ率でも正社員の一人平均賃上げ(2.95%)を大きく上回る結果となっている。

また、「ライフ労組」でも30円(3.22%)と、正社員の平均賃上げ率(2.27%)を上回った。さらに、「セブン&アイ労連 ヨークベニマル労組」では正社員の平均賃上げ率が2.31%に対して25.3円(2.83%)、「ドミーユニオン」でも正社員の平均賃上げ率が2.78%に対し、パートタイマーについては24.2円(2.79%)を引き出している。

「ニトリ労組」では、契約社員について8,017円(3.16%)、パートタイマーについては制度昇給12.9円+賃金引上げ17.6円の計30.5円(3.35%)といずれも3%超えで妥結した。なお、ニトリ労組の正社員組合員の一人平均賃上げ率は3.16%のため、契約社員については正社員と同率、パートタイマーでは正社員を上回る妥結となる。また、すかいらーくグループ労連傘下の「トマトアンドアソシエイツ労組」も、31円(3.6%)の引上げに漕ぎ着けた。

一方、中心的な妥結水準は20円程度(2%台前半~1%台後半)となっている。「カスミユニオン」が22円(2.38%)、「トリドール労組」が20.47円(2.28%)を獲得。「マルエツ労組」は20.39円(2.1%)、「カルビーグループ労組」は20.0円(1.72%)で、「全イズミ労組」は18.5円(2.05%)、「いなげや労組」は17.53円(1.88%)などとなっている。

※22015年度 月例給の引き上げに関するお知らせ/王将フードサービスHP新しいウィンドウ