賃上げを加速・拡大する道筋がついた/連合

(2015年3月20日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は18日、金属や小売、交通などの回答引き出しを踏まえて記者会見を開いた。同日15時半時点で回答を引き出したのは85組合。うち、34組合が単純平均で3,707円の賃金引き上げ分を獲得している。古賀会長は、「長年に渡り一定水準に貼り付いてきた賃金の引き上げを加速・拡大することを求めてきた。その道筋がついた」などと強調した。

写真・2015春闘・連合記者会見

34組合が単純平均3,707円の賃上げ分を獲得

連合の会見時の説明によると、15時半時点で賃上げ回答を引き出したのは85組合で、このうち、賃上げ分を獲得した34組合の回答額は単純平均で3,707円(引き上げ率で約1.2%相当)となった。昨年のヤマ場(3月12日)は、今年より9組合多い43組合が賃上げ分を引き出したが、回答額の単純平均は1,950円だった。今年の引き上げ額は、この段階では昨年の倍近い水準になっている。

底上げ・底支え、格差是正に向けた一定の環境整備ができた(古賀会長)

この内容について古賀会長は、「大半が昨年同様、月例賃金を引き上げており、昨年水準を上回る回答内容。デフレ脱却と新しいサイクルでの経済の好循環のために、昨年の春季生活闘争で実現した、過去、長年に渡り一定水準に貼り付いてきた賃金を引き上げることを加速・拡大することを求めてきた。その道筋がついたものと受け止めている。底上げ・底支え、格差是正に向けた一定の環境整備が先行組合の回答状況でできた」などと説明した。

 また、最終的な定期昇給込みの賃上げ率の見通しについて須田孝・総合労働局長は、「あくまで今の段階での推計」と前置きしたうえで、「2014春季生活闘争の最終集計は2.07%だったが、賃上げ部分が3,700円を超えている状況からすると、3%弱あるいは3%を超える数字になるのではないか」と話した。

NTTグループは2,400円、KDDIは非正規一律で月給4,800円の賃上げ

連合は記者会見終了後、午後18時現在の回答速報(94組合)をHPにアップした。別記事で紹介する自動車、電機などの金属労協と流通サービスを中心とするUAゼンセンに加盟する組合以外の登録組合の主な回答内容(賃金カーブ維持分を除く賃上げ分)を共闘別にみると、インフラ・公益共闘は、NTT東日本やNTT西日本、NTTドコモなどのグループ主要8社の労組が、全社員の単純平均で月額2,400円の賃上げを実施する回答を引き出した。NTTは昨年春闘で7年ぶりに賃上げを実施しており、その額は1,600円だった。

KDDI労組は、正規労働者でNTTグループを上回る平均2,700円の賃上げ回答を得たほか、非正規労働者にも一律で月給を4,800円引き上げる回答を引き出した。

交通関係で集中回答日前の回答引き出し目立つ

一方、今年は交通・運輸共闘でも早期の回答引き出しの動きが目立った。航空連合では、3月12日にJALとJALGSが2,000円、翌13日にはANAが1,000円の賃上げ回答を得た。交通労連も、3月2日に山形交通で1,000円の賃上げ回答が出されたほか、岡山県貨物運送(7日、916円)、近物レックス労組(11日、2,040円)、三八五(13日、500円)、第一貨物(13日、1,248円)、飛騨運輸(14日、1,400円)などの回答が集中回答日より前に示されている。

富士フィルムが3,000円、TOTOは4,000円の賃上げ回答

化学・食品・製造等共闘では、JEC連合の富士フィルムが賃上げ分3,000円、日油が同1,200円、太平洋セメントが組合平均1,150円の回答を引き出した。ゴム連合は、横浜ゴムが賃上げ分1,020円、住友ゴムが同3,212円の回答を得たほか、ブリヂストンも若年層の賃金水準改善分として組合員一人平均2,000円の原資を引き出している。

また、セラミックス連合でも、TOTOが約4,000円、黒崎播磨が500円の賃上げ分を獲得している。

この結果を受けて連合は、「スタート時点において、2015春季生活闘争の意義・目的を果たしうる内容と受け止める。本日までに示された回答内容を、中堅・中小組合はもとより、すべての働く者の賃金引き上げに確実に波及させるために全力を尽くす」などとする神津里季生・事務局長談話を発表した。