賃上げ要求額の平均は6,826円/金属労協傘下の主要単組が要求提出終える

[労使]

金属労協では、春闘相場に影響力のある各加盟産別の大手組合を「集計登録組合」と位置付けている。集計登録組合は先行して交渉を展開し、3月の交渉の山場である集中回答日に向けて交渉を追い込む。今次闘争で、金属労協は集計登録組合の要求提出を2月25日までとしており、集中回答日は3月18日に設定している。

今年の登録組合数は53組合。25日現在での賃金に関する要求状況をみると、昨年の闘争において2年分の賃上げを交渉済みの基幹労連傘下組合などを除く35組合が、賃金に関する要求をすでに実施し、35組合すべてが賃上げ要求を行っている。

今期闘争で金属労協は、賃上げの取り組み方針を「賃金構造維持分を確保したうえで、6,000円以上」に設定。これを受けた賃上げ要求額の単純平均は6,826円で、昨年の3,918円を大幅に上回った。

21組合が企業内最低賃金の引き上げを要求

一時金についてみると、登録53組合のうち、31組合が経営側に要求して回答を得る方式であり、20組合が業績連動方式となっている(2組合は両方式のどちらにも当てはまらない)。企業内最低賃金協定に関する取り組みでは、現在、協定を締結できている組合は52組合で、平均額は15万8,060円。今回、21組合が現行水準の引上げを要求している。

金属労協が一枚岩になって6,000円以上の賃上げに取り組む/相原議長

冒頭に挨拶した相原議長(自動車総連会長)は、「2015年はデフレから脱却して、経済好循環に向けた安定的な軌道に乗せていくことができるかどうか、その分岐点に立っているとの認識で、これまで検討を進めてきた。この認識にたって、継続的な賃金引上げ、働く者の実質生活を守ることをベースにしながら、賃金格差の是正と底上げを図ることが重要だということで、産別が足並みを揃えてきた。金属労協が一枚岩となって6,000円以上の賃上げに取り組み、社会的に課せられた責任を果たす重要な位置づけにある」などと述べた。

JC方針に沿った運動を各企業労使に広く波及させる(自動車総連)

会見には、各産別のトップが参加し、それぞれの構成単組の要求状況を説明した。自動車総連会長の立場で相原議長は、「(完成車)メーカーをはじめ、6,000円以上の賃上げを求めており、JC方針に沿った運動展開ができている。これから自動車産業の各企業の労使に広く波及させていく段階になっていく」と説明。また、各グループ労連の要求に対する実際の経営側の反応について、「デフレ脱却や経済好循環を確かなものにしかなければならないとの共通理解は図れた」としながら、「要求水準そのものの高さに対する反応、自らの企業実態と要求との関係、将来にわたっての競争力の確保、雇用を守っていく観点など、企業サイドから見たさまざまな懸念点が明らかになった段階だ」と発言。さらに、「自動車総連はスピード感をもってデフレから脱却することを主眼としており、だからこそ2015闘争の重要性は高い」などと強調した。

実質生活維持と消費喚起に絞った交渉を(電機連合)

電機連合の有野正治委員長は、23日に電機連合と業界団体との第1回の産別労使交渉を終え、まずはマクロ的な観点で集中的に論議したと報告。経営側が主張したことの主なポイントについて、①経済好循環に向け電機産業の貢献の重要性の理解において方向性は一致、②賃上げだけがその唯一の方法ではない、③昨年の結果だけを前提にするのではなく、ゼロベースで検討しなければない、④月例賃金の引上げが消費の拡大につながっているのか検証が必要、⑤デフレの間も賃金体系は維持していきており、物価が上がったからといってすぐに賃上げとの主張にはついていけない――の5点を指摘しながら、「ミクロ論になると労使間のギャップは大きい」と述べ、「昨年以上に労使の社会的責任を求めていくとともに、実質生活を守って、消費を喚起するという点に絞って交渉していきたい」と強調した。

登録組合の賃上げ額が9,000円で出揃う(JAM)

約1,600ある交渉単位組合のうち、その80%が300人未満の組合であるJAMの眞中行雄会長は、「24日が統一要求提出日となっており、要求提出日が先である2組合を除く登録組合の賃上げ額は9,000円で出揃った」と報告。昨年は統一要求提出日に提出できた組合の割合が43%と半数に満たなかったが、今年は6割をめざしているとし、「それにより共闘強化を図りたい」と強調した。

格差是正、賃金底上げに最大限の力点を(基幹労連)

基本的な賃上げについては昨年の闘争で2年分の交渉を終えており、今年は一時金と格差是正に重点的に取り組む基幹労連の工藤智司委員長は、「格差是正、賃金の底上げを重要項目として最大限の力点を置いて活動する」と表明。大手がグループの組合の交渉を支援するとともに、大手組合が親会社にグループへの支援を申し入れることなどにより、全体で格差是正、底上げをしていくと強調した。工藤委員長はまた、基幹労連傘下の大手組合は20日に要求提出を終えており、中堅・中小組合は25日から26日にかけて要求提出すると説明。交渉単位組合は308組織あるが、25日だけで61組合が提出を終えたことも報告した。

統一要求日に中小含め32組合が賃上げを要求/全電線

全電線の海老ヶ瀬豊委員長は、統一要求提出日である24日に34組合が要求提出したと報告。全電線の賃上げ要求基準は35歳銘柄で6,000円以上としているが、中小を含めて、そのうち32組合が賃上げを要求したと述べた。経営側の反応について、海老ヶ瀬委員長は「デフレ脱却に向け、賃上げが必要との労使合意がなされ、社会全体としてそういう流れにあることは承知しているが、政労使合意にある賃上げに最大限努力するとは、あくまでも収益を拡大させている企業についての話であり、電線業界を見渡した場合、減収減益の会社、いまだ構造改革中の会社など厳しい実態にはあるが、今後の交渉において誠心誠意話し合いたい、としている」と紹介した。

質疑応答のなかで、今回の闘争における5産別の連携強化の方策について尋ねられた相原議長は、「横の連携を強化し、足並みを揃えることが重要だ。すでに取り組んでいるが、金属労協では、まず5産別の問題意識をすり合わせし、デフレ脱却、経済好循環に向け、JC全体としての役割を自覚・認識して、賃上げにいかに取り組むべきかを検討し、連合の2%以上の要求をはじめに額に落とし込んだのは金属労協だ。金属労協の総力をあげて取り組みたい」などと抱負を語った。

▽関連ンク:金属労協ホームページ新しいウィンドウ

(調査・解析部)
2015年2月27日

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