2%以上のベアに加え「1%目安」の水準回復原資を求める/JEC連合の闘争方針

(2015年1月16日 調査・解析部)

[労使]

化学・エネルギー関連産業の労組でつくるJEC連合(11万4,000人、永芳栄始会長)は15日、都内で中央委員会を開き、2015春季生活闘争方針を決めた。賃上げ要求基準では、「2014春季生活闘争に引き続き、すべての組合が昨年を上回る2%以上のベースアップ・賃上げに取り組み、月例賃金の引き上げをめざす」とし、さらに賃金水準の状況に応じて1%を目安に原資を引き出すことで「職場のすべての労働者の格差是正・底上げの取り組みを進める」ことを確認した。

マクロ的な好循環をもたらす手法は、賃上げから消費の流れしかない/永芳会長

あいさつした永芳会長は、2012年12月の政権交代以降の経済環境を振り返り、「金融緩和の影響などで日経平均株価はおよそ2倍の上昇となり、気分的には好景気の様相を呈している。為替相場もドルに対して2年間で1.5倍近く円安に振れたが、期待された輸出増にはつながっておらず、実体経済と株価の動きは乖離した状態にある。さらに直近では、円安による輸出物価の上昇が生活必需品などの価格に影響し、家計の負担増になっている」などと分析したうえで、「ここ数年、春闘時期になると『官製春闘』とも揶揄されるような異例の賃上げ要請が政府よりなされてきた。背景には、日本のマクロ経済政策の根本的な行き詰まりがある」と指摘。春季生活闘争に向けて、「マクロ的な好循環をもたらす手法は、賃上げから消費の流れしかない。賃上げは正々堂々と正面から議論すべきであり、できるテーマ。交渉の場で企業側から発せられる『国際競争力』『企業体力』『成果は一時金で』などの定例的な主張の壁に、後ろめたさや何か無理を言っているのではと萎縮する必要はない」などと説明しながら、「2015春季生活闘争は昨年以上に重要な意味合いを持っている。安心して生活できる社会に向けて力を合わせてがんばろう」と呼びかけた。

定昇のない組合は賃上げ要求基準を「1万円以上」に

賃上げ方針は、「定期昇給・賃金カーブ維持分の確保を前提とし、過年度の消費者物価上昇分を考慮し、「経済の好循環」の実現・デフレ脱却の観点から、すべての労組が取り組むことを重視し2%以上のベースアップ・賃上げを要求する」としている。加えて、配分の歪みを是正し、賃金水準を回復させるために1%を目安として配分を得ることにも取り組む。配分の歪みなど是正に取り組む場合は、(1)賃金カーブの歪みの是正 (2)諸手当の見直し (3)(賃金カットや定昇凍結の復元など)過去の積み残し分の補てん (4)格差是正・均等処遇原資(非正規労働者・雇用延長者の処遇改善)――などの点に着目する。

定期昇給制度がなく賃金カーブ維持分を算出できない労組は、実態調査を踏まえて、定期昇給相当分の要求目安(1歳1年間差)を5,000円として要求を組み立てる。賃上げ要求は1万円以上、賃金水準や格差の状況に応じて配分の歪みなどの是正に取り組む組合は、さらに2,500円をベースアップ分として要求する。

また、一時金については、「生活保障を強める」観点から、ミニマム要求基準を年間4カ月に設定。業績連動方式で固定部分を持つところでは、固定部分の4カ月以上への引き上げに取り組むとしている。

個別交渉におけるQ&Aを作成

JEC連合では、職場内外の賃金格差是正のために、個別賃金を重視した取り組みを進めており、30歳・勤続12年(扶養2人、持家、高卒)と35歳・勤続17年(扶養3人、持家、高卒)の生産技能労働者の所定内賃金について、先行水準、標準水準、最低水準を設定している。標準水準をみると、30歳27万4,000円、35歳31万7,000円となっている。

このほか、正社員登用制度の導入が進み、実態調査では56組合で有期契約労働者の無期契約への転換実績がみられることから、格差是正の取り組みとして、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳の勤続0年の初任賃金を「年齢別最低保障賃金」として、すべての組合で協定化を進める。年齢別最低保障賃金は、20歳:16万3,800円、25歳:18万1,500円、30歳:19万6,100円、35歳:20万7,800円、40歳:21万6,600円としている。

また、JEC連合は「2015春闘でベースアップ・賃上げを得られなければ、組合員の生活が先輩と比較して切り詰めたもの・劣化したものとなるのは明白。今回の結果が組合員の士気にもたらす影響は将来を左右する」として、「個別の交渉における論点(交渉Q&A)」を作成した。賃上げや雇用継続、すべての労働者底上げなどについて、「組合として指摘すべき点や姿勢を整理する観点としてとらえ、交渉に臨んでほしい」としている。

すべての組合で労使の労働時間管理と月1回のチェックを

ワーク・ライフ・バランスの実現に向けては、総労働時間短縮の取り組みを継続する。JEC連合では、連合方針に沿った形で「2012年度までに年間総実労働時間1800時間を実現」することをめざしてきた。しかし、同連合全体の加重平均では、2014年度は1,900時間を超える結果となっている。この結果を踏まえ、(1) 年間総実労働時間2,000時間を上回る組合をなくす (2) 年間総実労働時間1,900時間未満をめざし労働時間管理に取り組む (3)年次有給休暇の一人当たり平均取得日数10日未満の組合および取得日数5日未満の組合員をなくす――ことをめざす。

また、36協定の点検と適正化や出退勤管理などの実態を把握して労働時間管理の徹底を図ることとする。すべての組合で、労使の労働時間管理と月1回のチェックを行う。

さらに、時間外労働の割増率の引き上げも求める。企業規模にかかわらず、すべての組合で、(1)1カ月1時間~45時間までの時間外割増率35% (2)45時間超の時間外割増率50% (3)休日労働割増率50% (4)深夜労働割増率50%――の実現に努める。

要求書は2月20日までに提出。連合・共闘連絡会議の方針に基き、3月第3週(3月16日~20日)を解決に向けた回答ゾーン(第1先行組合回答ゾーン)とし、3月18日を集中回答日とする。これに続く組合は3月23日~27日を回答ゾーン(第2組合回答ゾーン)とし、遅くとも4月内での決着をめざす。