6,000円以上の賃上げに取り組む/金属労協の2015闘争方針

(2014年12月17日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5産別労組で構成し、春闘における相場形成に大きな影響力をもつ金属労協(JCM、相原康伸議長、約203万人)は12日、都内で協議委員会を開催し、2015春闘方針である「2015年闘争の推進」を決定した。昨年に引き続き、全体で賃金引き上げに取り組む方針を掲げ、賃上げ要求基準は6,000円以上と設定した。

「デフレ脱却の第一歩として一定の成果をあげた2014闘争の流れを確かなものに」(相原議長)

協議委員会で挨拶した相原議長(自動車総連会長)は、2015年闘争に向け、「2014年闘争では、金属労協は、デフレ脱却と経済成長を確実なものとするため、賃金労働条件の向上と企業発展の好循環を実現していくための第一歩としてJC共闘全体で『1%以上』と5年ぶりに具体的な要求水準を提起した。その結果、大手の集計登録組合の95%、そして全単組の約6割において賃上げを獲得するなど、デフレ脱却の第一歩として一定の成果をあげることができた。今後はこの流れをより確かなものとしていく必要がある」と述べた。

今回の要求基準の策定にあたっては、 (1) 連合における金属労協の役割と責任を果たし得るものであること (2) 各構成組織が積み上げてきた闘争のこだわりを今次2015闘争において最大限発揮できるものであること (3) 賃金引き上げ、格差改善・底上げに最大限の成果をあげ得るものであること――の3点において構成組織で一枚岩になれたと説明。これらの認識に基づいて、賃上げ要求基準について「『デフレ脱却と経済の好循環を実現し、勤労者の生活を守るための賃上げ』との基本的な考え方に立って、一つ目に経済の好循環を実現するための継続的賃上げ、二つ目には実質生活を守るための賃上げ、三点目は人への投資による企業の持続的な発展を図るための賃上げ、という三本柱から賃上げの必要性とその正当性を整理した」と述べた。

13年ぶりに賃上げ要求基準を「額」で設定し格差改善につなげる

「2015年闘争の推進」は、賃金引き上げの具体的な要求基準を「賃金制度に基づき賃金構造維持分を確保した上で、6,000円以上の賃上げに取り組む」とした。賃金引き上げに取り組む方針を提起するのは2年連続。だが、昨年の方針では、「基本的な考え方」の項で「1%以上の賃上げに取り組む」と述べ、要求基準としては「賃金制度に基づき賃金構造維持分を確保した上で、実質生活を維持し、デフレ脱却と経済成長に資する賃上げに取り組む」とし、賃上げ幅は明記していなかった。金属労協が額で賃上げ要求基準を設定するのは、2002年の方針(1,000円要求)以来13年ぶり。

「6,000円以上」の根拠について、同日、協議委員会の前に行われた会見で浅沼弘一事務局長は、「日本経済や生産性の動向、物価も含む勤労者生活、金属産業の動向などを総合的に勘案するとともに、人への投資に資するという点や産業内や産業間格差の是正に取り組むという面も踏まえ6,000円以上とした」と説明し、「デジタル的に数字を積み上げた訳ではない」と述べた。

また、今回の要求基準を「率」ではなく「額」で示したことについて、相原議長は「%で書くと、賃金水準の高い組織は(引き上げ要求額も)高くなり、低い組織は低くなってしまい、賃金が低い組織が格差改善できず逆に格差が広がってしまう」とし、格差是正の狙いがあることを強調。協議委員会の挨拶でも、「6,000円以上の取り組みを通じ積極的に格差改善と底上げの実現につなげていく」と訴えた。

なお、金属労協の加盟主要組合64組織の賃金データをみると、平均賃金(基準内)は約32万円で、高卒・技能職・男子の実在者モデル賃金(平均)は、35歳で約30万円となっており、実際には連合の2%以上の賃上げ方針と対応した形となっている。

すべての組合で企業内最賃協定の締結を

賃上げ以外の方針をみると、賃金の底上げを図る取り組みである「JCミニマム運動」では、今回も、企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げ、特定(産業別)最低賃金の機能強化、「JCミニマム(35歳)」の確立を柱に掲げた。企業内最低賃金については、協定を締結している組合が全3,272組合中1,644組合で、締結率がまだ50.2%にとどまる状況にあることから、加盟するすべての組合での協定締結をめざす。水準引き上げの基準は、「月額15万6,000円以上の水準、もしくは月額3,000円以上」とした。3,000円以上の引き上げ幅は、賃上げ要求基準の6,000円に相当する2%に対応して設定された。現在、18歳最低賃金協定を締結している組合の月額での協定額平均をみると15万5,736円となっており、全従業員協定では15万4,000円台にとどまっている。

4人世帯の生計費や生活保護水準、課税最低限などの生計費の実態などに基づきJCMが独自に定める賃金のミニマム基準である「JCミニマム(35歳)」は、今回も月額21万円に設定。この水準を下回る労働者が実在する組合は、その要因を確認して是正に取り組む。

一時金については、昨年と同様、要求の基本を「基準内賃金の年間5カ月以上」とし、「年間4カ月分以上を確保すること」を最低獲得水準とした。

闘争日程については、大手組合などが中心となる集計登録組合は2月25日までに要求を提出するとしている。闘争のヤマ場については、連合の拡大戦術委員会との連携のもとに戦術委員会で決定することになっているが、集中回答日については3月18日(水曜日)が確実視されている。

総実労働時間短縮の取り組みも推進

このほか、ワークライフバランスの実現に向けた総実労働時間短縮や仕事と家庭の両立支援の取り組みも展開する。ワークライフバランスの実現には年間総実労働時間1,800時間台の実現が不可欠だとして、所定労働時間や年次有給休暇などの制度面の充実、所定外労働の適正化、年次有給休暇の取得促進などに取り組む。

闘争方針の討議では、加盟5産別が意見表明を行い、「賃上げについては賃金構造維持分を確保の上、実質生活を維持するため賃金引き上げを図るとともに、制度上の諸課題を含め実態に応じた取り組みを行う」(全電線)、「個別年度にあたる今期は賃金の底上げ・底支えに全力に取り組む」(基幹労連)、「2014年に引き続き、デフレ脱却と経済の好循環に向けた社会的役割を果たすとともに、物価上昇局面での生活防衛の役割を果たすことが2015闘争の意義。電機連合も連合、JCMの方針を踏まえ、2014年に続き賃金水準の改善に向けた検討を進めているが、労働界が一枚岩となって全体の波及力を高めることが重要」(電機連合)、「中小の企業業績の現状は、急激な円安による原材料価格の上昇を価格転嫁できず、また生産性向上で吸収することもできず、業績が悪化し、昨年よりも厳しい状況にある組織が多数ある。2015年の個別交渉は大変厳しくなることが予想され、この状況に対して、水準要求の徹底と共闘による相場形成の徹底を図りたい」(JAM)、「2014闘争では賃金改善に全組織で取り組み、6割の単組で改善分を獲得し、経済の転換点で意義ある起点とできた。2015闘争はこの起点をベクトルに変える重要な年。継続して自動車総連全体で賃金水準の引き上げに取り組むとともに、ものづくり産業の一員として、経済の好循環の実現、家計を守る観点、職場のがんばり、産業実態などさまざまな観点で検討を進める」(自動車総連)などの発言があった。

闘争方針「2015年闘争の推進(案)」/金属労協HP新しいウィンドウ