13年ぶりに賃上げが2%台に/フード連合大会

(2014年9月10日 調査・解析部)

[労使]

食品関連産業で働く労働者を組織するフード連合(約11万人、松谷和重会長)は8日、東京都内で第13回定期大会を開き、今春の賃上げ交渉のまとめを確認した。ここ10年間で低下した賃金水準を回復させるとして、統一要求基準10,000円をかかげて臨んだ賃上げ交渉は、加重平均で額が6,318円、率は2.11%(6月30日現在)と13年ぶりで2%台に乗る結果となった。

「労働分野の規制緩和は労使が構築した諸制度を否定するもの」(松谷会長)

あいさつした松谷会長は、今春の賃上げ交渉について、「食品産業の所定内賃金は製造業23業種中最下位であることを踏まえれば、闘わない理由がなかった。『しっかりと要求していこう』という想いで、総がかり体制をとり、中小労組では全単組の支援活動を行った」と特徴点をあげながら、「月例賃金にこだわり、交渉プロセスを大事にしながら、次につながる結果を残せた」と評価した。また、政府が進めている労働分野の規制緩和に関して、「『世界で一番企業が活動しやすい国を目指す』とする安倍政権の方針は、企業にのみ有利な規制緩和であり、働く者の労働規制の改悪。これは、格差拡大につながるだけでなく、これまで労使が構築してきた諸制度を真っ向から否定するものだ」と批判。「多くの職場で労働基準法が確実に守られていない中にあっては、むしろ規制や罰則を強化すべきだ。働く生活者を犠牲にしてまで行う規制緩和を何とか阻止しなければならない」と訴えた。

賃上げは加重平均で6,318円、2.11%に

今春の賃上げ方針は、低下した賃金水準の回復をめざし、2015年、2016年の賃上げ交渉につなげる「目線をあげるための5桁基準」とし、具体的な要求基準を「10,000円基準」(定期昇給・賃金カーブ維持相当分+ベースアップ・賃金改善等の賃金引き上げ)に設定。中小組合も含め、統一の額基準で取り組むことで、「共闘意識の醸成」や格差是正を狙った。

6月30日の賃上げ集計によれば、賃上げ結果は加重平均で6,318円、2.11%となり、昨年実績を額で1,052円、率で0.31ポイント上回っている。率では13年ぶりの2%台。規模別に見ると、300人以上規模は額で6,685円、率で2.19%、300人未満規模では額で4,247円、率で1.69%となっており、いずれも昨年実績を上回った(それぞれ額で1,165円、382円)。賃金制度があり、定期昇給相当分がわかっている136組合のうちベースアップ・賃金改善を獲得したのは81組合と、昨年の26組合を大きく上回った。

妥結結果についてまとめは、「実質賃金の確保の観点からすれば十分とは言えないまでも、『昨年実績、又は昨年実績以上だった組合』が177組合(89.4%)あったことは大きく評価できる。『ベースアップ・賃金改善分確保の組合』が81組合(59.6%)あったことも『月例賃金』にこだわるという粘り強い交渉を展開した大きな成果だ」と評価している。

年間一時金は加重平均で5.05カ月(92組合)

そのほか、年間一時金については、133組合が加重平均で5.08カ月を要求し、92組合が加重平均5.05カ月の回答を引き出している。非正規労働者については、70組合が処遇改善に取り組み、30組合で何らかの月例賃金の改善を獲得している。