地方公務員給与の回復と1%以上の賃上げ/自治労が春闘方針を決定

(2014年2月5日 調査・解析部)

[労使]

地方自治体の労働組合などでつくる自治労(氏家常雄委員長、83万人)は1月30、31の両日、東京都内で第146回中央委員会を開き、 (1) 地方公務員給与の回復と地方財政の確立、 (2) 人員確保および雇用と年金の接続、 (3) 臨時・非常勤等職員など非正規労働者の処遇改善と組織化の推進、 (4) 地域・民間労働者の底上げと公共サービスの強化――を重点課題とする2014春闘方針を決めた。

給与減額を3月末で確実に終了させる

政府は昨年1月、地方交付税の減額を受け、自治体に対し、国に準じた給与削減を要請した。方針では、この根拠となっている臨時特例法による給与減額を今年3月末で確実に終了させることを強調。昨年11月の総務副大臣通知にある「(今年4月以降の)地方公務員給与に関して減額要請を新たに行うことは予定していない」を受け、継続協議となっている単組は給与削減の阻止、削減が実施されている単組は今年3月での給与削減終了を確実なものとするための確認を行うとしている。

自治労の給与削減に関する調査(昨年12月20日現在)によると、自治体単組1,629組合のうち、「削減なし」で妥結が558組合(33.9%)、「削減あり」で妥結または交渉終結が974組合(59.2%)となっている。削減ありの内訳をみると、「国の要請どおり(平均7.8%)」が25組合(1.5%)、「何らかの緩和措置(削減率の縮減、ボーナス・手当などを除く等)」が944組合(57.4%)、「国の要請以上」が5組合(0.3%)となっている。なお、「独自カットの継続等」で妥結も44組合(2.7%)あった。

ポイント賃金への到達と連合方針に準じ1%以上の賃上げ求める

給与減額措置は終了する見通しとなったものの、景気回復と物価上昇局面にあり、4月から消費税引上げが予定されていることも踏まえ、賃上げにも積極的に取り組む。

自治労によると2006年の給与構造改革により4.8%、さらに各自治体における独自給与カットにより全国平均で1.2%、それぞれ賃金水準が低下している。そのため、2006年以前への水準への回復をめざすとしている。水準回復のため、到達目標(ポイント賃金)として、30歳=24万4,254円、35歳=29万5,608円、40歳=34万8,104円を設定(2011年賃金実態調査における実在者中央値×1.06)。そのうえで、連合の賃上げ方針を踏まえ、到達目標の達成・未達成に関わらず、1%以上の賃上げを要求する。また方針では、自治体に雇用されるすべての労働者と地域公共サービス民間労働者を対象とする自治体最低賃金の確立として、時給970円、月額14万9,800円以上も盛り込んでいる。

交渉日程は、連合のヤマ場を意識し、3月10~14日を対自治体統一交渉ゾーンとし、3月14日に時間内外の職場集会を配置して13日までの決着をめざす。3月27日には総務大臣回答、人事院回答を求めるとしている。

「給与制度の総合的見直し」は阻止

昨年夏に人事院が報告した「給与制度の総合的見直し」では、「地域間配分見直し」「50歳代後半層の水準見直し」などが盛り込まれた。自治労としては、給与制度を不断に見直すこと自体に反対しないとしつつも、「地域間の給与配分のあり方」はとくに、民間賃金の低い県をランダムに抜き出して「官民較差を捻出し、俸給表のさらなる引き下げを狙うものである」と指摘。さらに、「50歳代後半層の水準見直し」では、高位号俸・高齢層では「4~5%程度の引き下げがありうる」とし、反対の姿勢を鮮明にしている。制度見直しに対しては政府との協議を開始するとともに中央行動や署名活動を実施。その流れを地方公務員に波及させない取り組みを強化させるとしている。

逆に政府に対しては、臨時・非常勤職員に手当を支給するための地方自治法改正、パート労働法の趣旨の自治体への適用、任期の定めのない短時間勤務職員制度の実現を求める。具体的には、総務省通知(2009年)などを踏まえ、通勤手当や時間外勤務手当の全額支払い、忌引休暇、病気休暇、子の看護休暇、短期介護休暇、育児休暇などの諸休暇制度の整備をあげている。さらに、任用と任用の「空白期間」を点検し、廃止に向けた取り組みを強化する。

中央委員会のあいさつで氏家委員長は「政府は国公給与削減を終了させる一方で、地域間の配分見直しを柱とする人事院報告(給与制度の総合的見直し)に基づき具体的措置を取りまとめるよう人事院に要請しているが、これは形を変えて、給与削減を人勧制度のもとで実施しようとしているもの」と批判。地方公務員の給与が引き下げられると委託・公契約の民間労働者などにも波及していくことになることから、「給与制度の総合的見直しの阻止に向けて取り組みを強化する」と述べた。

また、臨時・非常勤職員に処遇改善に向け、組織化している自治体の方が、未組織の自治体よりも賃金・労働条件が上回っているとことに触れ、「組織化に取り組む中から、賃金・労働条件の底上げと、雇用継続をめざす」と訴えた。