「4,000円以上」の賃金引き上げ要求方針を決定/電機連合の中央委員会

(2014年1月29日 調査・解析部)

[労使]

電機連合(有野正治委員長、63万5,000人)は27、28の両日、神奈川県横浜市で中央委員会を開催し、今春闘における賃金の統一要求基準について、「開発・設計者基幹職労働者」(30歳相当)のポイントで、4,000円以上の賃金水準の引き上げを求める方針を決定した。産業別最低賃金では、現行水準から3,000円引き上げ、15万8,000円での協定締結をめざす。

電機連合では、12ある大手メーカー組合の交渉については、電機連合本部と12組合で構成する「中央闘争委員会」を設置。12組合(中闘組合)はスト権を中央闘争委員会に委譲し、要求から交渉スケジュール、回答まで足並み揃えて取り組む統一闘争を行う。

統一闘争における賃金の統一要求基準について、方針は、「開発・設計者基幹職労働者」(30歳相当)の個別ポイント賃金において、「賃金体系の維持(現行個別賃金水準の確保)はかったうえで、賃金水準の改善を行う」とし、具体的な水準改善額を「4,000円以上」と設定した。電機連合が賃金水準の改善を統一要求基準に掲げるのは2009春闘以来、5年ぶり。09春闘では、4,500円の引上げを要求基準としたが、リーマン・ショックの影響が大きく、最終的に改善分は獲得できなかった。

電機連合によると、中闘組合の「開発・設計者基幹職労働者」(30歳相当)の30歳ポイントの賃金水準は、現在、ほぼ30万円~31万円程度となっている。連合や金属労協の方針にある1%の賃金引き上げ分を当てはめると3,000円程度となることから、電機連合ではこの水準を要求の下限として議論を進め、最終的には4,000円以上の引き上げをめざすことを決めた。

「将来不安を払拭し、デフレ脱却を確実にする」(有野委員長)

中央委員会で挨拶した有野委員長は、2014闘争について「今次闘争は生活・雇用・将来に対する不安を払しょくし、デフレ脱却を確実にする取り組みだ」と強調。「人への投資により、社会的責任を果たし、電機産業の持続的役割につながる好循環を生み出し、さらに電機産業で働くすべての労働者への社会的波及効果につながる賃金・労働条件の向上を実現する」と呼びかけた。

また、5年ぶりに「賃金水準の改善を要求」し、その水準について「4,000円以上引き上げ」としたことについて、「これは連合や金属労協の基本方針、電機連合の賃金政策にある賃金決定の3要素である生活実態、業績動向、雇用情勢などを総合的に踏まえ、さらに春闘の果たすべき社会的役割を改めて強く認識したうえで主体的に決定したものだ」と説明。「今次闘争の役割は、要求の実現によって、家計を改善し、個人消費を活性化することにより、デフレからの脱却を図るとともに、民需主導の内外需のバランスのとれた経済成長の好循環を確かなものにすることにある。電機産業はここ数年、厳しい業績実態にあったが、ここにきてようやく業績改善に勢いが見え始めている。今こそデフレマインドから脱し、電機産業が果たすべき社会的役割を認識し、結果を賃金水準の改善という形で出していくことが求められている」と訴えた。

産別最賃3,000円の引き上げも統一要求基準に

賃金ではまた、産業別最低賃金(18歳見合い)の引き上げも統一要求基準に設定した。産業別最低賃金は、各組合におけるミニマムの賃金水準であり、各企業の労使で協定化している。中闘組合では、現行水準は15万5,000円となっているが、今春闘ではこれを3,000円引き上げ、15万8,000円とすることを要求する。3,000円引き上げの根拠について、賃金の要求基準である4,000円引き上げを率に換算すると1.3%程度となる。この1.3%を産業別最低賃金の水準から計算すると2,000円程度となるが、産業別最低賃金については過去2年間続けて1,000円の引き上げを要求してきており(獲得はともに,500円)、特定最低賃金への波及効果もあることから、2,000円にさらに1,000円を加えて3,000円とすることにした。

なお、電機連合では今回、高卒初任給について、統一目標基準として現行から2,000円引上げの15万9,500円以上を掲げている。産業別最低賃金の引き上げ基準を初任給の引き上げ目標よりも高く設定することで、産業別最低賃金の水準を高卒初任給の水準に近づけていくという狙いもある。

一時金の統一要求基準は、「平均で5カ月分を中心とする」とし、4カ月分を「安定的確保要素のうち生計費の固定的支出部分」として「産別ミニマム基準」に設定した。

勤務間インターバルの導入も盛り込む

今年は、2年に一度の労働協約関連項目に取り組む年だが、はじめて、勤務間における休息時間の確保、いわゆる「勤務間インターバル」の導入を求める。まずは、連合方針である11時間をめざし、労使協議の開始を求める。

春闘方針の討議では、明電舎労組、MEMC労組、三菱電機労連、日立グループ連合、高岳製作所労組、パナソニックグループ労連、全富士通労連が意見を述べた。明電舎労組は「今回の要求基準は時間をかけて出した結論であり、この要求の根拠に基づいた水準を掲げて交渉をスタートさせるのが統一闘争の意義だ。企業体力の回復が十分でない当社の場合、統一闘争が交渉の大きな後ろ盾となっている。今回の要求には社会的な役割もあり、本部には各組合の交渉に波及効果のある産別労使交渉をお願いする」などと要望した。三菱電機労連は「経営側は、賃金引き上げを年収ベースでの報酬引き上げというような見解を示し、依然として人件費負担の重いベアには慎重な姿勢を示している。労組の要求の趣旨、ベアの必要性の考えとの相違を危惧するとともに、今後の交渉に影響をきたすものだ。今次交渉ではあらためてベア、月例賃金の水準改善の意義、一時金と性格が異なることを明確としなければならないし、あらためて賃金の社会性、安定性を論議のなかで明確にしていきたい」などと述べた。全富士通労連は「(ベア要求した)5年前は、要求をつくる段階において、単組の思いと、産別、JC、連合の間でこんなに認識のずれがあるのかと思った。結果として、第2回の中闘委員会で「賃金体系の維持」という方針の大転換をして収束した。このときと比較すると、今回は単組と産別と間にずれは少ない。交渉当事者の一員として、結果に結びつけていかなくてはいけないという覚悟だ」などと交渉に向けた抱負を述べた。