1%以上の賃上げ要求方針を決定/金属労協の2014闘争方針

(2013年12月11日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の金属関連の5産別でつくる金属労協(JCM、西原浩一郎議長 約205万人)は9日、都内で協議委員会を開催し、2014春季労使交渉に向けた闘争方針を決めた。方針は、「5産別が強固なスクラムを組み、JC共闘全体で『人への投資』として1%以上の賃上げに取り組む」としている。金属労協が定昇相当以外の賃上げ要求方針を掲げたのは2009年以来となる。

「人への投資」の観点で適正な配分を

方針は、2014闘争に向けた基本的考え方として、「賃金・労働条件の改善による消費の活性化と家計の改善を通じて、デフレ脱却と経済成長を確実なものとしなければならない」と主張。また、「成長成果を賃金・労働条件に適正に配分することが消費を拡大し、それが生産・投資の拡大や企業収益の改善につながり、そのことがさらに所得の向上と雇用の拡大を生み出す」としながら、「『人への投資』の観点に立った賃金・労働条件に対する適正な配分は、働く者のモチベーション向上と能力発揮、優秀な人材の確保に寄与し、そのことがものづくり産業基盤や企業競争力の強化をもたらして、企業の持続的な発展につながるという好循環を生み出す」と述べ、賃金の改善がマクロ経済や働く者のモチベーション、企業の発展に不可欠だとの認識を示した。

こうした考えに立って方針は、2014闘争について、「デフレ脱却と経済成長を確実なものとするため、賃金・労働条件の向上と企業発展の好循環を実現していく」と強調。「このため、5産別が強固なスクラムを組み、JC共闘全体で『人への投資』として1%以上の賃上げに取り組む」と明記した。

「月例賃金の引き上げ最重点、物価上昇分を確実に補う」(西原議長)

協議委員会であいさつした西原議長は「2014年闘争では賃上げ、すなわち月例賃金の引き上げを最重点において取り組む」と強調。また、2013年度の生鮮食品を除く消費者物価上昇率が10月の日本銀行の予測で0.7%、11月の民間調査機関40社平均で0.61%となるなど物価上昇局面に入っているとして、「組合員の暮らしを守る観点で、実質生活水準を維持するためには物価上昇分を確実に補うことが重要だ」と訴えた。さらに、「税・社会保険料負担の増も含めた実質可処分所得への影響にも留意しつつ、生産性にふさわしい生活向上分への反映等を総合的に考慮すべきと考える」と述べた。

また、今回の要求根拠への物価に取り扱いについて、「運動の継続性の観点から過年度物価上昇率とした」と説明しつつも、来年4月の消費税率の引き上げによって「2014年度の物価上昇率は相当大幅な上昇が想定される」として、「実質生活水準確保の考え方、物価の取扱いも含めた要求根拠について、労組の主張を経営側に認識してもらわなければならないし、何としても来春の闘争でしっかり交渉結果を引き出さなければならない」と呼びかけた。

格差是正に向けて積極的な賃上げを

具体的な取り組み項目をみると、賃上げでは、「賃金制度に基づき賃金構造維持分を確保した上で、実質生活を維持し、デフレ脱却と経済成長に資する賃上げに取り組む」とする一方、「産業間・産業内の賃金格差等の解消をめざす組合は、積極的に賃上げに取り組む」とし、今年も格差是正の観点からの賃上げを積極的に求める。金属労協では、2013闘争では386組合が賃金改善分を獲得し(1,006組合が要求)、獲得組合数は年々増加している(2012年=351組合、2011年=333組合)。

また、(1)企業内最低賃金協定の締結拡大と水準引き上げ(2)特定(産業別)最低賃金の機能強化(3)JCミニマム(35歳)の確立――の3つの取り組みからなる「JCミニマム運動」の推進では、企業内最賃について、すべての組合での協定化をめざすとともに、2013年闘争方針で掲げた水準よりも2,000円引き上げた15万6,000円以上をめざして取り組む。企業内最賃の水準も1%分引き上げた形。金属産業で働く者が最低でもクリアすべき賃金水準として設定するJCミニマム(35歳)は、今回も月額21万円に設定して、水準以下で働く者をなくす運動を展開する。一時金は、要求の基本を、「基準内賃金の年間5カ月分以上」とし、最低獲得水準を「年間4カ月分以上」とした。

今回の方針では、非正規労働者への取り組みの優先順位を上げたのも特徴の1つ。非正規労働者の賃上げについても交渉していく方針を示し、「未組織も含めた非正規労働者の賃上げに関する交渉・協議を行う組合は、賃金の底上げの重要性を踏まえて取り組む」と記述した。

集中回答日は3月12日に

闘争日程では、2月18日までに大手を中心とする集計登録組合が要求提出するとし、大手の集中回答日は3月12日に設定した。

闘争方針の討議では、5産別すべてが発言し、電機連合は「電機産業の状況をみると、全体的には業績回復に明るい兆しが見えるものの、依然としてまだら模様であり、先行きは不透明だ。こうした中において、取り巻く情勢を冷静に分析しながら、社会的役割を従来以上に認識し、賃金引き上げ要求に前向きに検討を進めているところだ」と発言。基幹労連は、「AP14は2年サイクル運動の基本年度にあたる。デフレ脱却を確実なものとするために正規、非正規を問わず、すべての働く者の所得・生活水準の低下に歯止めをかけ、経済成長と所得向上を同時に実現することをめざした総合的な労働条件改善の取り組みとなる。賃金改善についても2014年、15年の2年分の要求とし、継続的な賃金上昇によって働く者の実質生活を守る取り組みを展開する」と表明した。

自動車総連は、すでに「すべての単組で賃金改善分に取り組むことを確認した」と表明したうえで、「過年度物価、労働の質、生産性向上と競争力、デフレ脱却、14春闘の意義などの基本課題をみすえながら、産業と企業の実態に即して例年以上に突っ込んだ議論をしている。産別、労連、単組、職場が共通の理解に立った要求構築を通じて、自動車総連としての全体の運動の調和をはかることが重要だ」と述べた。

JAMは、方針原案では、4,500円の賃上げとともに、是正要求分として1,500円以上を掲げており、これらを合わせれば賃金制度維持分(5,500円程度)を含めて10,500円以上の賃上げになると説明したうえで、「社会的波及力の観点から、こうした数字を未組織労働者へのメッセージとして、できる限り、構造維持分を含めた要求額や回答額を開示していくような取り組みを指導してほしい」と要望。全電線は「賃金構造維持分を確保したうえで、実質賃金を確保するため、賃金引き上げを行いたい。賃金制度上の諸課題にも取り組む」と述べた。