すべての組合が月例賃金1%以上の賃上げ/連合が闘争方針を決定

(2013年12月6日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は3日、都内で中央委員会を開催し、2014春季生活闘争方針を決めた。すべての組合が月例賃金にこだわり、約2%の定期昇給相当分を確保したうえで、「1%以上」の賃上げを求める。また、格差や配分の歪みの是正を必要とする組合は、「1%を目安」に要求を掲げる。

説得力ある要求を掲げ、粘り強い交渉を/古賀会長

あいさつした古賀会長は2014春季生活闘争について、「ポイントは、すべての組合が月例賃金の引き上げにこだわること、そして正規・非正規、組織・未組織、企業規模を超えて、すべての働く者の底上げ・格差是正をはかるための闘争とすることだ」と指摘。「月例賃金は労働者家計が生計費をまかない、将来設計を考える根幹となるもの。この引き上げにこだわることで社会的相場を形成し、未組織労働者の賃金にも波及させることが、個人消費を確実に回復させ、賃金デフレを起点とする悪循環から脱出するカギを握っている」と述べ、月例賃金の引き上げを重視する必要性を訴えた。

また、「より重要なことは、中小企業で働く仲間や非正規労働者の賃金底上げの実現だ」としたうえで、非正規共闘で時給引き上げ、正規労働者への転換制度の構築、均等・均衡処遇の実現に取り組むことや、中小労組向けの公正な取引関係構築につながる運動などを強化する姿勢を強調。「賃金は、政府の要請や世の中の期待感で上がるような簡単なものではない。組合員やすべての働く者の期待に応え、説得力ある要求を掲げ、粘り強い交渉を展開し、社会的賃金決定メカニズムの歯車を回していかねばならない」と述べ、未組織労働者の賃金水準の底上げも見据えた取り組みの実施をあらためて構成組織に促した。

経済成長と所得向上を同時に推進してデフレからの早期脱却を

方針は、基本的な考え方で「景気回復と物価上昇の局面にあることを踏まえ、経済成長と所得向上を同時に推し進めていかなければ、いわゆる『悪いインフレ』となり、社会が混乱する」と指摘している。

月例賃金の賃上げ要求では、まず賃金カーブ維持分(約2%)を確保して「所得と生活水準の低下に歯止めをかける」。加えて、「1%以上」の賃上げを求めることで「景気回復と物価上昇局面にあることを踏まえて、経済成長と所得向上を同時に推し進め、デフレからの早期脱却をめざす」とともに、1%を目安に「低下した賃金水準の中期的な復元・格差是正、体系のゆがみ等の是正に向けた取り組みを推進する」ことを打ち出している。

個別銘柄の賃金水準を重視する取り組みも継続。「組合員の個別賃金実態を把握して、賃金水準や賃金カーブのゆがみ、格差是正の必要性の有無などの把握に努め、これらを改善する取り組みを強化する」。構成組織は個別銘柄でのふさわしい賃金水準を設定し、その実現をめざす。

なお、賃金制度が未整備の組合は、制度の確率・整備に向けて取り組むほか、連合が1年・1歳間差の社会的水準として示す5,000円を目安に賃金水準の維持をはかる。その際の「具体的な設定については、連合方針を踏まえ、構成組織が決める」こととしている。

一方、企業内最低賃金は、「すべての労働者の処遇改善のため、企業内最低賃金の協定締結の拡大、水準引き上げ、適用労働者の拡大をはかる」。協定締結に際して、「その産業の構成基準を担保するにふさわしい水準」で行うこととし、初任給に関しても社会水準を確保する観点から、18歳高卒初任給の参考目標値として16万5,400円を明記している。

非正規は時給改善分30円を目安に

非正規労働者と中小労働者の労働条件改善は、2014闘争における大きな柱となっている。

非正規労働者については、「非正規共闘」の取り組みを強化することで、パートタイム労働者だけでなく、すべての有期契約労働者の均等・均衡処遇の実現に向けて取り組む。具体的には、正社員化への転換ルールの導入促進をはじめ、昇給ルールの導入・明確化や一時金の支給、無期契約転換後の均等・均衡処遇の確保などを重点項目としている。

賃上げの取り組みについては、非正規共闘の方針から、 (1) 時給が800円に達していない組織は800円をめざし、達している組織は『誰もが時給1,000円』をめざす (2) 単組が取り組む地域ごとの水準については、構成組織は現状を踏まえ、中期的に「県別リビングウェイジ」を上回る水準となるよう指導を強化する (3) 正社員との均等・均衡処遇をめざす観点から、昇給ルールの導入・明確化の取り組みを強化。ルールが確立されている場合は、その昇給分を確保する (4) 物価上昇・景気回復の局面であることや、「底上げ・底支え・格差是正」を進めていくことが必要であることから、時給改善分として30円を目安に時給の引き上げを求めていく――ことを示した。

30円の時給目安は、中小の賃上げ要求目安額5,000円を時給換算して割り出したもの。なお、月給制の非正規労働者の賃金については、正規社員との均等・均衡処遇の観点から改善を求めていく。

中小は9,500円を目安に要求

中小・地場の取り組みは、「賃金の底上げおよび生活の基礎である月例賃金の引き上げにこだわり、賃金カーブ維持分の確保のみならず、賃金引き上げを積極的に求めていく」構え。中小労組を抱える構成組織が参画する「中小共闘」と「これまで以上に力を合わせ、格差是正・底上げの取り組み強化をはかるとともに、大手組合は、グループ・関連企業の闘争を積極的に支援する」と明記して、連合全体で格差是正に取り組む姿勢を強調した。

中小の賃上げ要求は、中小共闘が「景気回復局面、物価上昇局面にあることや、賃金水準の低下や賃金格差、賃金のひずみの是正をはかることをめざし、5,000円の賃金引き上げを目安とする」方針を掲げている。

地域ミニマム運動で集めたデータによると、300人未満規模の月例賃金は、24万9,091円(年齢38.9歳、勤続13.8年)。賃上げ目安の5,000円は、この約25万円の2%が根拠となっている。

また、中小共闘では、賃金制度が未確立だったり、賃金カーブ維持分が算定困難な組合は、賃金カーブ維持相当分を4,500円としている。このため、賃金カーブ維持分の算定が困難な組合は、賃金カーブ維持相当分4,500円プラス賃上げ5,000円で9,500円を目安に要求を組む。

なお、中小共闘が賃金の下支えのために13春闘で初めて設定した「最低到達水準値」については、2014闘争でも同額(30歳19万円、35歳21万円)を示している。

公契約条例の制定拡大の運動や価格転嫁事例の通報も

大手と中小の規模間格差に関して古賀会長は、「中小企業が取引関係のなかで価格転嫁ができず、結果として中小で働く仲間に犠牲を強いるような、いびつな価格競争・取引慣行を是正し、『公正な取引関係』構築に力を尽くすことが求められている」と指摘。「構成組織は、産業労使で公正取引や競争力強化と働く者のモチベーションアップに向けた協議を行うことなどにも取り組んで欲しい」と訴えた。

そのうえで、連合としても「公契約条例の制定拡大に向けた取り組みを公正な取引関係構築につながる運動として展開する」とともに、「明年1月から消費税増税価格転嫁拒否に関する相談窓口、価格転嫁ホットラインを設置する」と述べた。同ホットラインは、消費税増税分を本体価格から値引き要請することや、税抜き価格での交渉を拒否することなどを禁じた「消費税転嫁対策特別措置法」を違反する相談などを受け付けるもの。事業主や労働者、労働組合などの関係者から寄せられた法違反などの事実内容については、「所轄官庁と連携をとりながら、公正取引が遵守される社会づくりの一環として実施していく」ことを表明した。

3月12日を最大のヤマ場に設定

連合は中央委員会終了後、共闘連絡会議の第1回全体代表者会議を開き、当面の闘いの進め方について、「すべての組合が2月中の要求提出、3月内での決着に向けての交渉配置を検討」し、回答ゾーンは、「3月10~14日を第1先行組合回答ゾーン、3月17~21日を第2先行組合回答ゾーン、3月24~28日を中小集中回答ゾーン」とすることなどを確認した。最大のヤマ場は3月12日としている。