2014春闘では月例賃金での引き上げの検討を/連合の定期大会

(2013年10月09日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長、約670万人)は3、4の両日、都内で定期大会を開催した。挨拶した古賀会長は、2014春季生活闘争に向けて、月例賃金での引き上げの積極的な検討を構成組織に求めた。役員改選では、古賀会長が再任され3期目に入り、事務局長には神津里季生・基幹労連委員長が新たに就任した。

写真:連合第13回定期大会

労働分野の規正緩和では政府と対峙

古賀会長は挨拶で、労働分野の規制緩和の動きについて、労働者派遣制度では「(研究会報告のなかで)どのような業務であろうとも働く者を一生涯、使い勝手のいい派遣労働者として固定化させることを可能とする法改正が提言されている」と述べるとともに、「解雇規制や労働時間規制の緩和を国家戦略特区によってエリアごとに認める検討を行うことが明らかにされた」とし、「働く者や生活者を踏み台にした経済成長は、社会の安定と持続可能性を損なうものであり、決して許されるものではない」と強調した。そのうえで、「こうした動きを阻止するには、働く者の声を結集して世論を喚起し、政治と対峙する必要がある」と訴え、4月から全国で実施してきた具体的なキャンペーンの第2弾となる取り組みを、大会を起点にしてスタートさせると述べた。

2014春季生活闘争については、「まずは家計部門の所得の向上を実現し、働く者の消費マインドを改善させることでデフレ経済の悪循環を断ち切らなくてはならない」とし、会場の代議員に対し、「構成組織の皆様には、ぜひとも月例賃金の引き上げに向けた要求について、積極的に検討をお願いする」と呼びかけ、月例賃金での引き上げ検討を求めた。さらに古賀会長は、「政府のアベノミクスといわれる経済運営を展望すると、経済成長と物価の後追いという従来の延長線上の賃金決定では、政府の掲げる成長は実現したが、働く者の暮らしは一段と悪化し、分配の歪みがまずますひどくなるという最悪の状況に陥る恐れがある」と主張。約10年前の「いざなみ景気」で、労働側への分配は下がる一方、企業業績は好調だったことを振り返りながら、「同じ過ちを繰り返すことは許されない。経済の成長と所得の回復を同時に進めなければ、何のための成長かが問われる」と述べ、所得の回復の必要性を強く訴えた。

古賀会長「労働運動のウイングを広げ、運動の社会化を」

今後の連合の労働運動に関しては、「連合は、すべての働く者のための運動を展開してきている。しかし、果たしてそのことは、組合員一人ひとり、職場の隅々にまで理解されてきたのか。そして、連合がすべての働く者のための運動を展開している組織ということが、働く者あるいは社会全体にどれだけ受け入れられているのか。連合は本当に働く者を代表しているのか。という声に的確に応える必要がある」と今後の課題を提起。これまでの運動について、「経済・社会の成熟化の時代に突入し、どうしても企業別組合は『わが企業を』『わが企業が生き残るためには』という内にこもる傾向が強まってきたのは事実だ」と自省しながら、大会以降は「(本部としても)全国の組織はもちろんのこと、働く者各層との対話活動を行い、労働運動のパワーアップに取り組みたい」とし、ナショナルセンターと産別、単組、一般組合員までが共通の認識をもって運動を展開できる態勢を構築していく考えを示した。

非正規労働の問題については、「非正規労働者の雇用や処遇の課題は、同じ職場で働く仲間として決して看過できない問題だ」としたうえで、「同じ職場で懸命に働いている仲間同士として、どのような働き方や処遇であるべきかをともに考えていく必要がある」と言及。また、今後は労働運動のウイングを広げていくとして、「共通の価値や目標を持った個人や諸団体とアライアンスを組んで社会の共感を呼ぶ運動の社会化をはかる」と述べた。

この2年で23万人の組織化実績

これまでの2年間の一般活動報告では、組織拡大実績が報告された。2011年10月~2013年9月までの組織拡大の最終実績をみると、23万7,113人(うちパート等11万9,126人)で、目標とした数字に対する到達率は51.4%だった(パート等は109.3%)。2001年からスタートし、今大会までの組織化方針であった「アクションプラン」全体での13年間の実績でみると、組織拡大実績の総数は156万6,073人。ただ、現在の組合員数が約670万人にまで減少していることから換算すると、同期間で同時に200万人の組合員が失われたことも意味する。

この2年間の重点産業・業種への対応での成果としては、関係構成組織と地方連合会で構成する「主要ターミナル関係労組中央協議会」(略称:ターミナル労協)の取り組みのなかで、千葉県の成田地区の活動強化に向けて「成田空港関連労組連絡会」を連合千葉に設置し、具体的な組織化実績をあげたことなどが報告された。一方、この2年間の労働相談からの組織化実績は、地方連合会から明示があるものだけでも46組合、618人にのぼったとの報告があった。

労働運動の「社会的うねり」をつくりだす

今大会スローガンは。「ストップ・ザ・格差社会! すべての働く者の連帯で『安心社会』を切り拓こう!」。大会で決定した「2014~2015年度運動方針」は、2020年までに「働くことを軸とする安心社会」を実現することを大きな目標とする」と明記。向こう2年間は、労働運動のパワーを高めることを最優先に取り組むとしている。

具体的には、「社会的に拡がりのある労働運動をめざす」として、大衆行動などを組織し、「社会的なうねり」をつくりだすとともに、非正規労働者や中小労働者、女性・若年労働者の共感を得られる取り組みを進めるとしている。これらの運動を進める基盤については、「質・量面でパワーアップをはかる」とし、集団的労使関係を再構築させるため、労働協約の拡張適用や従業員代表システムなどの法制面の課題について検討して組織化につなげるとしている。組織化では、2020年までに「1,000万連合」の実現をめざして活動を強化する。本部に、組織化に集中して取り組む「組織化専任チーム」(仮称)を設置する。

統一ベア要求を求める意見も

運動方針の討議では、連合の2014春季生活闘争の方針検討に対して、積極的な内容を期待する声があがった。JR連合は「賃金などの労働条件の底上げに対する組合員の期待は高まっており、職場は労働条件を復元させたいという熱を帯びている。2014年は基本賃金の引き上げをはじめとする労働条件改善に向け、すべての仲間が団結して取り組むべきであり、連合としてこれまで以上に強いメッセージを世の中に発信してほしい」などと要望した。JR総連は「未来からみて2014は節目の春闘となる」とし、「統一ベアを掲げて賃上げ要求できる態勢の構築を望む」と述べ、連合に対して統一ベア要求の方針検討を要望した。一方、官公労系の組合からは、全水道が「(国家公務員と同様に)政府が地方公務員に賃金削減を要請してきたことは労働側の官民分断を意識したものだ。なかには自治体関連の民間が関係がないのに同様の賃金削減が実施されているというケースもあり、地域の疲弊を招いている」などと訴えた。自治労は「地方公務員の給与を引き下げれば、地域経済にも影響し、消費を冷え込ませ、民間賃金にも悪影響を及ぼす危険がある」と意見を述べた。討議では全部で13の構成組織が発言した。

二大政党的体制は堅持

大会ではこのほか、政治方針を10年ぶりに改訂した。憲法について、前方針にあった「憲法改正を俎上に載せることは時期尚早と判断する」との記述を削除。新方針は「われわれは憲法論議を否定するものではない」とし、「とりまく情勢を冷静に見極め、立憲主義や憲法の三大原則の貫徹を期し、国民的な議論の動向にも注意を払いつつ慎重な対応を図っていく」と明記した。政治については、「連合は、与野党が互いに政策で切磋琢磨する政治体制の確立が重要であると考える。そのため、政権交代可能な二大政党的体制をめざす」と記述し、「二大政党的体制」を基本とするスタンスを堅持した。

役員改選では、古賀会長(電機連合)が再任された。3期目に入った会長は初代の山岸章氏以来。会長代行は、氏家常雄・自治労委員長が新たに就任し、女性代表としての代行は岡本直美・NHK労連議長が留任となった。事務局長は交代し、神津里季生・基幹労連委員長が新たに就任した。

新執行部を代表して古賀会長は、「従来の延長戦上ではない運動展開を私たち自身がどう作り出していくかが、与えられた課題であり使命だ。これまでの経験・価値観に決して縛らず、継承するだけでもなく、自らの知恵と意思と行動によって新たな創造へ向けた運動の転換を図っていかねばならない」と述べ、連合が目指すべき社会像『働くことを軸とする安心社会』の実現に全力をあげていく決意を示した。

また、大会後の記者会見では、2014春季生活闘争について、「(物価の動向などの)後追いの要求決定ではないという意味で、『従来型』ではない要求にしないといけないのではないか」とあらためて述べるとともに、「(物価も経済も)今、上がり気味であることは事実。労働条件の基本中の基本である月例賃金にスポットを当てて要求しなければならない」と強調した。