労使交渉での積極的な賃金引き上げを/UAゼンセンの定期大会

(2013年9月25日 調査・解析部)

[労使]

わが国最大の産別労組であるUAゼンセン(逢見直人会長、約145万人)は18、19の両日、宮城県仙台市で定期大会を開催した。逢見会長は、「経済の好循環となるためには、労使交渉による積極的な賃金引き上げを実現しなければならない」と述べて、物価上昇時には、2014闘争での積極的な賃上げが不可欠との見通しを示した。

「賃上げを伴わなければ悪い物価上昇に」(逢見会長)

挨拶に立った逢見会長は、アベノミクスの評価と課題について、「市場は円安と株高に動き、これにより輸出産業を中心に企業業績が好転した。アベノミクスへの期待が先行して市場が反応したということだと思う」と所見を述べた。そのうえで、「これが持続して、経済が成長し、賃金が上がれば消費も拡大して、経済の好循環となって持続的成長に進むというのがデフレ脱却のシナリオだ。(しかし)物価上昇はガソリン、灯油などの燃料価格、小麦、とうもろこしなどの食料品価格の上昇となって国民生活に影響を及ぼしている。賃金上昇を伴わなければ『悪い物価上昇』に終わってしまう」と危機感を示しながら、「経済の好循環となるためには、労使交渉による積極的な賃金引き上げを実現しなくてはならない」と賃上げの必要性を強く訴えた。

逢見会長はさらに、安倍政権が企業の法人税を打ち出す一方、生活保護水準の引き下げを実施しているとして、「アベノミクスには格差問題を改善しようとするメッセージは伝わってこない」と批判。同政権の雇用政策についても、労働移動支援型の政策への転換に対して「雇用の質をまったく配慮しない政策だ」と言及した。さらに、「アベノミクスは『成長』がすべてを解決すると考えているようだ」と述べたうえで、「私はアベノミクスに対し、是は是としながらも、富の公正な配分と、格差対策の重要性、良質な雇用機会の創出、雇用の流動化政策より安定した雇用環境の整備の必要性を訴えていきたい」と強調した。

2014闘争はマクロの観点からも検討

労働条件闘争については、最終方針は来年1月の中央委員会で提案・決定するが、「2014年度重点活動計画」を提案した松浦昭彦書記長は、「(来年の闘争は)少なくとも、過年度物価でみて物価上昇のなかでの闘いとなる。世間の論調などもどう考えていくか。企業の状況では、すべて(の企業)が良いという訳ではないが、経済を前進させていくには賃上げは必要だということをできるだけ早く意思統一する必要がある。ミクロだけでなくマクロの観点からも要求を策定する必要がある」と、今後の要求策定に向けた基本スタンスを説明した。

大会では、2014年度重点活動計画のほか、2つの産業政策、「流通産業政策」と「医薬・医療機器産業政策」などを確認した。重点活動計画では、組織・運営体制について、3つの部門制に移行したことなどの影響で、結成からまだ1年弱しか経過していない現時点で「まだぎくしゃくしたところはある」(松浦書記長)として、この先の1年間で、運営面での「必要な改善検討・実施を行う」とした。

コジマ電機の労組が仲間入り

大会ではまた、昨年11月のUAゼンセン結成大会以降の組織拡大実績が報告された。2013年9月18日現在での組織情勢は、結成時よりも4万782人多い145万3,456人(うち、短時間組合員74万4,788人)となっている。結成以降に新規加盟した組合数は43組合(部門別内訳は製造=7、流通=13、総合サービス=23)で、組合員数は2万1,345人。主な新規加盟組合としては、製造産業部門の「医薬化粧品労働組合ネットワーク・アステラス労働組合」(2,942人)、流通部門の「コジマ労働組合」(4,886人)、総合サービス部門の「コロワイドグループ労働組合連合会・レインズインターナショナル労働組合」(2,364人、「牛角」などを展開)などがある。アステラス製薬の組合であるアステラス労働組合はJEC連合を脱退して、18日の中央執行委員会でUAゼンセンに新規加盟が承認されたばかり。なお、加盟組合の企業内での組織化では、流通部門の「エディオン労働組合」(2,634人拡大)や総合サービス部門の「ソラストユニオン」(4,103人拡大)などが大きな拡大実績をあげた。