加盟5産別に賃金改善に向けた検討を要請/金属労協の定期大会

(2013年9月4日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5つの産別労組でつくる金属労協(JCM、西原浩一郎議長、約205万人)は3日、都内で定期大会を開催した。挨拶した西原議長(自動車総連)は、経済状況が好転しつつあり、デフレからの脱却の兆しがあるとして、来春闘ですべての加盟産別が、足並みを揃えて賃金改善を行う方向での検討を要請。これを受けた5産別も、要請に沿って前向きに検討する考えを表明した。

「足並みを揃え、積極的な検討を」(西原議長)

西原議長は、来春闘に関する挨拶の冒頭で、「2014闘争においては、加盟産別が足並みを揃え、せいせいと賃金改善を行う方向で積極的な検討を進めていただくことを議長の立場から要請する」と呼びかけた。現下の経済状況について、「全体としては経済・産業状況が好転しつつあり、特に長期にわたるデフレからの脱却の兆しが表れつつある」との認識を示し、「今、デフレ脱却と景気回復を確実なものにするためには、金属労協としてその影響力を自覚し、労働組合として、よりマクロの視点および、社会的役割発揮の観点を重視することが強く求められる」と述べ、来春闘で果たす金属労協の役割の大きさを強調した。

実質所得の確保、生活水準の維持、生産性の反映などを踏まえて

そのうえで、西原議長は、デフレの背景となっている需給ギャップについて触れ、「特に需要サイドの慢性的な弱さが大きく作用していることは明らかであり、消費の活性化に向けた所得環境の改善は喫緊の課題だ」と指摘。さらに、「金属労協はこれまで賃金・労働条件の向上と企業発展の好循環による安定的な成長の実現をめざし、金属産業を支える人への投資の重要性を訴えつつJC共闘を進めてきた。この考え方を基軸にしつつ、我々の主体的意思として、金属産業・企業の人材力を守るために、物価上昇局面に入りつつある今、加えて継続する社会保険料負担の増を踏まえ、実質可処分所得確保に留意し、組合員の実質生活水準の維持を図り、生産性にふさわしい生活向上分への反映を意識し、賃金改善の要求・獲得に向けた積極的な検討を皆さんにお願いしたい」と述べて、各産別に対して、賃金改善に積極的に取り組む方向での2014闘争方針の検討を求めた。

なお、大会で決定された2014年度活動方針は、2014年闘争について、「経済成長、物価動向、可処分所得の動向、雇用、産業動向、企業の生産性や収益、勤労者の生活実態などを十分に精査し、勤労者への適正な配分やデフレ脱却、景気回復への好循環などを含め、議論を尽くした上で、積極的な取り組みを進める」と記載している。

すべての産別が検討に前向きな姿勢を表明

これを受けて5産別は、2014年度活動方針の討議のなかですべての組織が発言し、西原議長の要請に沿って積極的な要求に向けて検討する姿勢を表明。最初に発言した自動車総連は、「リーマンショック以来、組合員が知恵と工夫と努力を積み重ね、それが企業基盤の強化につながり、その成果として企業の業績が回復してきたという職場の実態を直視したミクロの視点と、企業・産業や日本経済の状況、今後日本をどうしていくべきかといった社会的視点を踏まえたマクロの観点の両面から、総合的に判断して積極的な議論をしていきたい」と述べた。

基幹労連は「現状の閉塞的な状況を打開していくためには、所得環境の変化が不可欠で、まさに早急な対応が求められる」と指摘。「今まさにデフレ脱却を果たす千載一隅のチャンスであり、過年度物価をはじめとするマクロの従来根拠だけでなく、消費を活性化させるという政策的視点など、新たな発想をもって月例賃金の改善に向けた検討を進めるべき」と意見提起しながら、「西原議長の要請をしっかり受け止める」と発言を締めくくった。

全電線は「賃金については、魅力ある労働条件の構築が競争力強化の好循環につながり、そのための人への投資として賃金改善を掲げてきたが、2014年闘争では適正な配分やデフレ脱却といった観点からも議論して積極的な議論の展開を望む」と、積極的な検討に賛同する姿勢を示した。

JAMは「個人消費によって内需を拡大させるには、『給与が上がったな』と思えるような月例給与の引き上げが必要で、みんなでやるという雰囲気づくりが重要だ」と強調したうえで、「中小ものづくり産別として、積極的な議論をしていく」と表明した。

電機連合は、「2014年闘争は、マクロの視点を踏まえ、社会的な役割を強く意識した要求立案が求められる。一方、物価の状況により予定される消費税率の引き上げが実施されれば、可処分所得の低下が危惧され、組合員の生活への影響を考慮する必要がある」と指摘。電機産業はグローバル競争で厳しい産業状況にあるものの、「経済動向、物価、産業・企業の状況、組合員の意識、生活実態など、多方面から十分に分析し、西原議長の意向に沿って検討していきたい」と述べた。

金属労協の2014年闘争方針は、12月9日に予定される協議委員会で最終決定される。昨年の方針では、すべての組合で賃金構造維持分を確保することを掲げ、賃金改善については、格差改善等を目的に中堅・中小企業を中心に取り組む内容としていた。金属労協のすべての産別が賃金改善の要求を掲げた場合、「物価上昇分に見合う要求」で足並みを揃えた2009年春闘以来となる。