トヨタ、日産、ホンダなどが満額の一時金を回答/自動車総連の春闘回答

(2013年3月15日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連の拡大戦術会議登録組合を構成する11の大手自動車メーカー組合への回答は、13日午後3時までですべて出揃った。円高是正による業績回復などの追い風もあり、一時金では、11メーカーのうち、マツダとヤマハ発動機を除く9組合で、満額の回答を受けた。

トヨタでは組合の「5.0カ月+30万円」(年間)の要求に対し、経営側は「200万円+5万円」という表示の満額回答で応えた。トヨタの一時金の満額獲得は3年連続。日産でも、組合は要求した年間5.5カ月の満額を獲得した。額にすると204万1,000円。同社での満額回答は2年ぶりで、昨年実績を0.2カ月上回る。11メーカーのなかで、組合側がもっとも多い月数を要求した本田技研でも、5.9カ月(217万1,000円)の満額回答となり、昨年実績から0.9カ月の上積みとなった。

昨年実績で3.3カ月と4カ月を大きく割り込んだマツダは、組合の5.0カ月の要求に対し、会社側は4.3カ月を回答。三菱自工は4.3カ月の満額獲得となり、昨年実績から0.2カ月上乗せした。このほかのメーカーの回答では、スズキが昨年実績比0.3カ月増の5.3カ月、ダイハツが5.3カ月、富士重工が「5.0カ月+10万円」、いすゞが5.4カ月、日野が「5.0カ月+10万円」(141万7,000円)、ヤマハ発動機が「5.0カ月+6万円」という獲得結果となった。

賃金要求では、今期は11メーカー組合で賃金改善を要求した組合は1つもない。すべての組合が賃金体系維持分を確保した。

写真・相原会長の記者会見のようす

自動車総連の相原康伸会長は同日の記者会見で、昨年よりも一時金の満額獲得組合が増えた今回の回答内容について、「満額獲得だけが評価軸ではないが、昨年実績から相当持ち上がった月数となった。労使がぎりぎりの交渉のなかで導き出した、双方にとって価値ある回答になった」とコメント。さらに「企業の持続的成長のうえでは、職場の安定とそこで働く人の労働条件の維持・向上も果たされないと、企業の成長は一時的なものとなる。政府も円高払拭やデフレ脱却に向けて取り組んでいるなか、組合側がすべてを背負い込むのは難しいが、一定程度の役割は果たせたのではないか。プラスの評価だ」と今次交渉を総括した。

また、この日、自動車総連全体で、昨年実績を約2割上回る569組合(集計対象組合数は1,108組合)が賃金改善分を要求し、半数以上の組合が賃金改善に取り組んでいることが発表された。今期はとくに販売部門で多くの組合が賃金改善に取り組んでいる。販売部門で賃金改善を要求した組合数は、3月9日時点で391組合に達し、昨年の最終の要求組合数(298組合)を13%上回っている。

車体・部品部門や販売部門の交渉はこれから本格化する。相原会長は、車体・部品部門の交渉状況について、「現実では厳しい協議・交渉が行われている。超円高だった為替水準は戻りつつあるが、中小では、円安に向けた動きなどが業績の好転につながっていくのには時間がかかるのではないか」との見方を示した。一方、販売部門については、「販売部門では昨年、職場が相当努力しており、人員を絞り込むなかでも高いパフォーマンスで価値の高い働き方をしている。販売部門は消費の最前線で業界を支えており、労使がいかなる判断をしてどう働く側に配分していくかということは、今後の自動車の販売において重要な結論につながっていくもの」と、交渉結果に期待を込めた。