デフレの進行に歯止めをかける責任果たす/金属労協の集中回答日

(2013年3月15日 調査・解析部)

[労使]

自動車、電機、鉄鋼など金属関係の産別で構成する金属労協(JCM、200万人)は13日、集中回答日を迎え、幹部が記者会見した。同日12時までに回答のあったすべての組合で賃金構造維持分(定昇)を確保し、1組合で賃金改善分を確保したことを踏まえ、西原浩一郎議長は「デフレの進行に一定の歯止めをかけるという今次闘争の役割を果たすことができた」との見解を示した。

写真・幹部の記者会見のようす

13日12時現在で金属労協に報告のあったすべての組合で賃金構造維持分を確保し、JAM傘下の1組合が賃金改善を獲得したことについて、西原議長は「今後回答を引き出す中堅・小労組の交渉下支えになるものであり、デフレ進行に歯止めをかける観点から、金属労協として一定の社会的な責任を果たすことができた」と述べた。ばらつきが目立った一時金については、「組合が協力・努力を訴えた粘り強い交渉から生まれた結果」、また12組合で、企業内最低賃金の引き上げ回答が得られたことについては、「未組織の底上げに寄与する」と評価した。

今後は3月12日現在、金属労協全体で882組合が格差是正、底上げの観点から賃金改善要求を行っていることを踏まえ、デフレ脱却のためには、労働者への適正配分によって消費を喚起する必要があることから、「中堅・中小の取り組みは非常に重要と認識している。これから本格化する中堅・中小の交渉を共闘全体で支援としていきたい」と述べた。

ちなみに、昨年の闘争では全体で1,107組合が賃金改善を要求し、351組合が何らかの改善分を獲得している。

労働組合のアベノミクスに対する評価

また、西原議長は今季交渉の過程で、2月12日に政府が経営諸団体に報酬引き上げを要請したことについて、「デフレからの脱却に向けた所得環境を改善させるためのメッセージとしてはて理解できる」としつつも、「賃金はじめ労働条件は経済、物価、生産性、産業実態などを踏まえ、労使自治のもとで決定することが基本である。職場からの議論を積み上げ、ミクロ・マクロの諸条件踏まえて要求を策定し、回答を引き出したものである」との基本認識を示した上で、政府に対しては、「雇用が不安定で、所得水準が低い非正規労働者の増加を食い止め、均等・均衡待遇による環境改善を政府の立場からも進め、最低賃金の引き上げによって日本全体の賃金水準の底上げを行うことである」と主張した。

また、産業競争力会議等で検討される規制緩和については、「格差の拡大を繰り返さないよう、労働分野の社会的規制の緩和については、慎重の上にも慎重を期すべきだと考える。安易な規制緩和には断固反対である」とクギを刺した。

また、アベノミクスが及ぼした交渉への影響について答えた有野正治・電機連合委員長は「デフレからの脱却については、今春闘で労使とも掲げたテーマであり、とくに企業内最低賃金の引き上げについては、労使が社会的責任を果たす意味で、交渉材料としては使ったが、それが回答に結びついた実感はない」などと発言。また、相原康伸・自動車総連会長も「報酬のあり方について広く国民的レベルに持ち上げられた意味では、これまでと違う変化であるが、水準の決定について直接、個別の労使交渉に変化をもたらしたとは考えていない。アベノミクスの果実はまだ生み出されていない。労働条件決定について労働組合サイドからは決定打となったとはいえない」との見解を示した。