希望者全員が65歳まで働き続けられる制度を最終承認/NTT労組中央委員会

(2013年2月15日 調査・解析部)

[労使]

NTT東西やドコモ、データなどNTTグループ企業の労組で構成する、NTT労働組合(約17.8万人)は13日、都内で中央委員会を開き、新たな人事処遇制度の枠組みを最終的に承認した。制度は2013年10月1日からスタートする見通しで、これに伴い2001年に導入した「雇用形態選択制度」(50歳定年・再雇用制)は廃止される。2013春季生活闘争では、業績見通しや処遇体系の再構築等を総合的に勘案し、6年連続で月例賃金の改善要求を見送った。一方、年間収入を確保する観点から特別手当に重点を置き、昨年要求水準を基本に、各企業本部で要求する方針等を決定した。

加藤委員長「トータルで充実を図る考え方で結論を導いた」

中央委員会では、実質3年余にわたり、労使間で協議してきた「採用から65歳まで働きがいを持って安心して働き続けられる制度」について、昨夏の定期大会以降の取り組みを総括した。NTT労組はこの間、具体的水準等を盛り込んだ会社提案(昨年8月)を踏まえ、11月6日に臨時中央委員会を開いて要求を決定。財務インパクトの大きさや世代間アンバランスへの配意等を理由に、応じられないとする会社側との間で交渉を重ね、昨年12月7日に妥結・決着を図った。

加藤友康委員長はあいさつの中で、「中央交渉が極めて難航するなか、労使間の膠着状態を打開するため中央本部の重い決断と各企業本部の腹を括った対応等で、『トータルで充実を図る』という基本的な考え方に基づく結論を導き出し得た」などと強調した。

新制度は、若年層、中堅層、ベテラン層、成熟層の4つのワークステージ毎に、働きぶりや専門性、チャレンジ意欲等の向上を引き出すのが狙いで、成果・業績主義を拡大するものとなっている(図参照PDF新ウィンドウが開きます)。賃金項目を、現行の「資格賃金+成果加算+成果手当+地域加算手当」から、「新資格賃金+加給+切替成果手当+手当等」に再編。基本給と役割・職務等に応じた手当に関する原資を圧縮し、成果・業績に応じた手当の原資に充当する。現行の賃金カーブ(イメージ)は、とくに中堅層からベテラン層にかけて大きく修正され、成果・業績に応じた変動幅注1が拡大することになる注2

一方、60歳退職以降の成熟層に対しては、発揮する能力に応じ、年収300万円程度の「標準スキーム」と、年収400万円程度の「ハイレベルスキーム」を用意した(月給制が基本)。今回の制度改定に伴い、従来あった健康要件などの雇用更新基準も見直され、2014年4月から希望者全員が、(1年毎更新ながら)実質的に65歳まで、働き続けられる仕組みが整備される見通しになった。

野田事務局長「悲願の退職・再雇用制度の廃止が最大の成果」

交渉の到達点を総括した野田三七生事務局長は、「今次交渉で積年の悲願だった、いわゆる退職・再雇用制度注3を廃止するとの労使合意に至ったことが最大の成果だ。会社側の将来を見据えた英断を高く評価する」などと強調した。

質疑では、「全組合員の処遇トータルで充実を図り得る決着をみたこと、とりわけ退職・再雇用制度が廃止の結論に至ったことは、粘り強く取り組んだ成果で、次代に向けた環境整備が図られたものと判断している。今後は、同制度の確立にも係わる『新たなステージを目指して』(NTTグループの新中期経営戦略)に対する取り組みを強化することが重要だ」(東日本本部)などとする意見があった。

今後は、新制度への円滑な移行や制度運用、「特別手当制度」の見直し等に向けた取り組みを進めることになる。

春闘は特別手当(一時金)に重点、昨年と同水準を要求

中央委員会ではまた、2013春闘について「東日本大震災からの復興・再生」と「すべての働く仲間の生活改善」に向けた「総合生活改善闘争」と位置づけ、 NTTグループ各社の業績動向等を見極めつつ、 (1) 生活の維持・防衛の観点に立った年間収入の確保 (2) 非正規労働者の処遇改善――を基本に取り組む方針等を決定した。

年間収入の確保については、特別手当(一時金)の要求に重点を置き、「年間臨給方式」(夏冬一括妥結)で、NTTグループの統一モデルである「高卒40歳・一般資格1級」の基準内賃金(地域加算手当は除く)をベースに、「昨年要求水準を基本に各社の事業・経営動向等を見極め、各企業本部で要求化する」とした。同基準に依ると、NTT東日本や西日本など、主要8社のうちNTTドコモとデータを除く6社では年間134万3,000円になる。中央委員会の終了後、中央本部は持株会社、各企業本部は各社に対して「要求書」を提出する。昨年に続きストライキ権の確立を含む闘争体制で、3/13~14を決着のヤマ場に満額回答を目指す。

一方、非正規労働者(約1.5万人を組織化)の処遇改善をめぐっては、「社員化の仕組みづくり」(登用制度の確立と対象業務の拡大等)をはじめ、「慶弔休暇等の制度化・有給化」や「法定内時間外労働(正規労働者と同じ7.5時間超)への割増率適用」「特別手当の制度化と昨年要求水準の支払い」「情報労連最賃協定の維持・拡大」――といった取り組みを盛り込んだ。

次期大会で企業本部・総支部を一部改編へ

中央委員会ではこのほか、「NTT労組運動の強化・発展」に向けた、組織強化検討プロジェクトの中間答申(昨年12月26日策定)を踏まえ、 (1) ファシリティーズ本部、コムウェア本部、持株本部を再編・統合し、新たに「持株グループ本部」(仮称)とする (2) 大阪、京都、兵庫の各総支部を「関西総支部」(仮称)、九州、沖縄の各総支部を「九州総支部」(仮称)に再編・統合する (3) 新たな企業本部・総支部については次期大会で規約改正を目指す (4) 分会機能の充実・強化など継続課題について引き続き検討し、5月に答申をまとめる――方針なども決めた。

脚注

注1)成果・業績は、例えば (1) 営業従事者では年間販売成果に応じた毎月の手当 (2) バックヤード従事者では1年間の累積反映評価に応じた毎月の手当 (3) 新たな事業創出に向けて関連会社に出向する場合の手当――などの形で反映されることになる。

注2)なお、移行時点から2年間は「措置水準」(移行時賃金水準-(新資格賃金+加給+切替成果手当))を維持する経過措置が施される。その後3年かけ、暫定手当が1/4ずつ逓減される。

注3)2001年にNTT東日本・西日本、ファシリティーズ、コムウェアに導入された50歳定年・再雇用制。再雇用後は勤務地の範囲に応じ、賃金が最大30%の減額になる。